オルブス・カラグリア
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『あつ〜、冷えた酒飲みた〜い』
ジリジリと焼けるような暑さにそう言いながら、赤い岩肌を登り進んでいく。
「それに、んなもん、ココにはねぇぞ。日々の食事もままならないんだからな」
この赤毛の青年、ガナルに連れられて、彼ら抵抗組織《紅の鴉》のアジトであるジオーネ廃坑道の外に出ている。
ジルファに先ずはこの国の現状を知ってくれと言われ、見に来たわけだが、如何せん暑い。
『この干ばつじゃ、植物は成らないもんなぁ……』
干上がったこの土地で農作物を育てるのは難しいだろうし、なにより彼らは奴隷という立場。なんとか出来た食料も根こそぎレナに持っていかれるのだろう。
「だからまあ、アンタが来て良かったことは、飲み水の確保ができるようになったことだな」
『そりゃ良かった』
水は命の源だ。
私は別に優れた術士ではないが、水の民だからか海属性の術だけは得意と言える。
だから、普段は泥水を濾過して啜っているという彼らに寝床を貰った礼にと、水を与えたら喜ばれた。
特に、あの銀髪の女性。ティルザ。彼女は紅の鴉の医務担当らしく、綺麗な水が手に入る事を凄く喜んでいた。
「てか、暑いんなら自分で水出せるんだからそれ飲めばいいだろ」
『いや、水じゃなくて酒が飲みたいんだよねぇ』
そう言えば、ガナルに白い目を向けられた。
「アンタ、最初に会った時も酒臭かったもんな」
『酔ってなきゃやってられんこともあるんよ』
「んな事言っても、ココには無いからな」
『はああ〜。お酒が恋しい…』
一緒にこの世界に来たカバンの中のスキットルに少しばかり蒸留酒が残ってはいるが、これが最後だとしたら勿体なくて飲めない。
それに、アルコール度数高い酒だし、飲んだらあと余計に暑そうだというのもある。
「着いたぜ。ここがウルベゼクだ」
渓谷を長い間歩いて到着したのは、小さな村のようだった。
「ここは居住区で、めったに来ないが……たまにレナの装甲兵が巡回に来るからそんときは見つからないよう気をつけろよ」
了解、と返事をして彼の後に続いて居住区を進む。
この暑い中、干上がった畑を耕している人がいるし、居住区用の大きなため水の前に桶を持った子供たちがいる。
『ガナルちょっと待って』
「…どうした?」
彼が足を止めたのを見て、子供たちの方へ向かう。
『こんにちは〜』
そう挨拶をして子供たちの目線に合わせるようにしゃがむ。
「…!」
見知らぬ人に驚いたのか、子供たちは目を見開いた。
「あー、大丈夫だ。そいつはレナじゃねぇよ」
そう言ってガナルも子供たちに近づく。
「本当に…?」
見上げてきた子供たちに、うん、と頷く。
『まあ、ダナでもないけど』
そう言えば、子供たちは後ずさった。
「アンタなぁ。人がせっかく……」
『えー、だって嘘はいけないよ。それに子供ってのは案外よく見ているものだから、騙したところですぐにバレるよ』
「それは、まあ……そうかもしれないけど……」
間違っちゃいないが、納得がいかないと、口先をモゴモゴさせるガナルをおいて、再度子供たちの方に視線を移す。
『驚かせてごめんね。聞きたいことがあるんだけどいいかな?』
そう言えば、子供たちは恐る恐る頷いた。
『ありがとう。君の持ってるそのお水は、畑に撒くお水?それとも飲み水?』
「……の、飲む水」
「…、ぼくのは畑の水やりに使うよ」
「わたしのもみんなで飲むの」
『そっか』
この子たちの持っている桶の中身は茶色く濁っている。茶色く濁った溜水から汲んでいるからそりゃあそうだろって話なんだけど。
これが飲み水か……。
『濾過はするの?』
「ろか?」
あー、子供には難しかったか。
『透明な水になるように濾す事だよ』
「えっ、と……」
「この水が透明になんのか!?」
子供たちは困惑し、ガナルは驚いている。
そうか、彼らは奴隷という身分。そういう知識を知らないのか。
『濾過すればなるよ、まあ凄く時間が掛かるんだけど。で、この水はそのまま飲むの?』
「ああ。
『なるほどね。分かったありがとう』
目の前の子供の頭に手を置いて、ひと撫でする。
『あっ、そうだ』
ひとつ思い出してカバンを漁り、5cmくらいのサイズの小瓶を取り出す。
『君たち、手を出して』
「…?」
「手??」
『お話してくれたお礼。どうぞ』
恐る恐ると出されたその手ひとつひとつに色とりどりの小さな星のかけらを3粒ずつ乗せる。
「わあ……」
「キレイ!」
初めて子供たちの顔が輝いた。
『それはね金平糖ってお菓子だよ。よかったら食べてね』
「おかし?」
「食べものなの…?」
あー、この環境化じゃお菓子なんてないよなぁ。
『うん。お砂糖で出来てるから甘いよ』
そう言って自分も1粒口の中に放り込む。
「お前っ、砂糖って高級品だぞ!?」
『ここじゃ、そうだろうねぇ』
じっ、と自分の手のひらの上の小さな粒を見つめていた子供たちの中の1人が、私の真似して1粒口の中に入れた。
「わ〜〜」
不安そうだった顔が急に、ぱあ、と明るくなった。
『ふふ、甘くて美味しいでしょ』
子供はこくこく、と静かに首を縦にした。
そして今度はその子を真似して他の子も食べてみて、同じように顔を綻ばせた。
『残ってるのも、レナに見つからないように早く食べるんだよ。じゃあ、お水運び頑張ってね』
よしよし、と一人一人の頭を撫でてから立ち上がる。
『さあ、行こうか』
「お、おう……」
バイバイと子供たちに手を振って、こっちだ、と歩き出すガナルに続く。
ガナルはチラチラと何か話したそうにこちらを伺っている。
『ガナルも金平糖食べたかったの?』
「いや、まあそれも気になるけど、そうじゃなくて。拠点でしたように綺麗な水を与えてやるつもりなのかと思ってたから……」
それも考えなくはなかった。
『そりゃあ綺麗な水を出してあげるのは簡単だけど、その綺麗な水を稀に巡回に来るっていうレナに見つかったらどうせ奪われるし、何よりそんな事した私たちの足がつくでしょうよ』
「なるほど……。じゃあなんで子供たちに水のこと聞いたんだ?」
『ジルファがこの国の現状を見てこいって言ってたでしょ?』
ああ、とガナルは頷く。
『それは単に状態把握をしてこの国の危機感を感じてもらいたいだけじゃなくて、私の持ちうる知識で、現状を打破する策を考えて欲しいってことだと思うんだよね。そして
「……あれ、そういう意味だったのか」
へぇーと関心したように言うガナルに、はあ、とひとつため息を吐いた。
中々に骨が折れそう
領将を倒すのも、水や荒地の問題解決も、そして学力向上も。