第1章
夢小説設定
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アイグレッテでひと仕事終え、次の仕事の目的地であるハイデルベルクへ向かうためアイグレッテ港からスノーフリア行きの定期連絡船に乗り込んだ。
『風が気持ちいいな』
せっかくの船旅だ。船室に篭っていては勿体ないと甲板に出た。
手摺に寄ってぼんやりと海を眺める。
「そこの海鳴りを聴く麗しいお嬢さん。宜しければこの私と、その音を聴きながら愛の語らいなどいかがでしょう」
後ろからそう声をかけられて、小さく溜息を吐く。
ナンパか。景色は1人で楽しみたいのだけれど。さっさと断って、しつこいようならこの場を離れよう。
『申し訳ないが愛を語りたいのならば1人でやってく、れ……』
振り返りながらそう言って、声をかけてきた主を見て思わず言葉が途切れた。
向こうも向こうで驚いた顔をしていた。
そりゃあそうだ。まさかナンパした相手が同じ孤児院で育った兄弟であり幼なじみだとは思わなかったのだろう。
「……プリムラ」
『ロニ……』
互いに互いの名を呼んで、次の言葉をどちらとも放つことなく固まった。
「あー、えっーと、」
バツが悪そうに頭の後ろに手を置いてロニが何か話そうとした。その時だった。
何かにぶつかるような大きな音と共に船が大きく揺れた。
『わっ!』
「あぶねぇ!」
そう叫んだロニに腕を捕まれ、彼の腕の中に引き寄せられた。そのおかげで海に放り出されることなく助かった。
『あ、ありがとう』
「おお。怪我ねぇか?」
『ええ、貴方のおかげで大丈夫よ』
「主だぁっ!デビルズ・リーフの主だぁッ!」
船首の方から叫び声がした。
それと共にロニの頭が後ろから勢いよく叩かれた。
『え?』
「いってぇ!?何すんだ!」
叩かれた事に怒ったロニが振り返るのに、その腕からやっと解放された。
「貴様はどさくさに紛れて他人に抱きついてるんだ」
背の高いロニの後ろからひょっこりと顔を出すように見れば、黒ずくめで何かのモンスターの頭蓋骨のような物を被った10代くらいの男の子がいた。
「他人じゃねーよ!同じ孤児院の幼なじみだし、海に落ちそうになったの助けただけだ!!」
ロニと彼のお互いの口ぶりから知り合いのようだ。
だけど、この子何処かで……?
じっー、と少年の仮面で隠れた顔を見つめていれば、彼はなんだ?と言うように怪訝そうに眉をひそめアメジストのような瞳をこちらに向けた。
『あの、どこかでお会いした事がありますか?』
そう言えば、彼の眉間にシワが寄った。
「僕はお前と会ったことなどないが。デュナミス孤児院で育つと、誰かしらにナンパするようになるのか?」
『えっ、ナンパじゃないです!ロニなんかと一緒にしないでください!』
「おいこら、プリムラ!なんかとはなんだよ、なんかとは!」
横からロニがギャンギャンと吠えるが、さして気にしてない様子で、そんなことより、と仮面の少年は続けた。
「主が出たのなら、いち早くカイルとリアラと合流した方がいいだろう」
彼のその言葉に目を見開く。
『カイルも一緒なの!?』
カイルは私とロニの育った孤児院の現経営者の実の息子で、私達に取っては年の離れた弟のような子だ。
「ああ!そうだ!カイルーー!!」
そう叫んで、彼は見張り台の方へと走っていく。
『ちょっと!ちゃんと説明なさいって…もう。昔っからカイルの事となるとほっとけないんだから……』
「とりあえずお前も着いてこい。僕ではあのバカの面倒は見きれん」
そう言って仮面の少年はロニの後を追って行く。船首の方で、主が出たと叫んでいたのが本当なら危ないし着いていくしかない。
彼らを追って、見張り台の元まで行けば、上の高台によく知った金髪の少年カイルと茶髪でピンクの可愛らしいワンピースを身にまとった美少女が2人でいた。
「おい、おふたりさん!そんな所でイチャついてる場合じゃねぇぞ!」
下からロニがそう叫べば、カイルはそんなつもりじゃと女の子に言いながらズリズリと後ろに後退りして、狭い見張り台の上から足を滑らせ落っこちた。
「おい、馬鹿!」
「うわああああああ!」
『スナイプエア!』
剣を抜いて飛び上がって、カイルを抱きとめ、そのまま急降下する。
『危なかった……』
「えっ、えっ!?プリムラ姉さん!?」
ふう、と一息着いて彼を床に下ろすと、目を見開かれた。
「なんでいるの!?」
『それはこっちが聞きたいわ。よくルーティ姉さんが許してくれたわね』
「そうか、お前のその技……」
ぽつり、と仮面の少年が呟いたのが聞こえて、え?と振り返った。
『技ですか?カイルの母親で、私と一緒の孤児院で育ったルーティ姉さんに習ったんです』
今でこそ彼女が孤児院を切り盛りしているが、元々彼女も孤児で、私と一緒にクレスタの町の孤児院で育った。
「…そうか」
仮面の少年はそう言って黙った。…技の話が聞きたかったのではないのだろうか?
「カイル!大丈夫!?」
カンカンと音を立てて、鉄製の梯子を女の子が降りてきた。
「ああ!姉さんのおかげで何ともないよ!」
「姉さん?」
キョトンとした様子で、女の子がこちらを見つめてきた。
『はじめまして、プリムラ・デュナミスよ。カイルとロニと同じ孤児院出身なの』
「ああ、それで姉さんって…。私はリアラ。今カイルたちと一緒に旅をしていて……」
「おいおい、2人とも呑気に自己紹介してる場合じゃねぇよ!何があったのか確かめに行くのが先だ」
舳先へ行ってみようぜ、とロニが駆けていく。
そうだった、とみな彼に続いて走った。
慌ただしい再会
結局、仮面の少年の名前を聞きそびれた。