外殻大地編
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ND2018 レムデーカン・レム・23の日。
『おはようございます。ナタリア殿下』
カーテンを開け日差しを取り込めば、天蓋付きの大きなベットの中に眠る姫が、モゾモゾと動いた。
「……おはようございますわ」
『はい。おはようございます。今日はいい天気ですね。
「…それはよかったですわ」
眠そうな目で身体を起こした彼女の身支度を整えるのが私の仕事の一つだ。
ドレスを着せて、髪を整え、宝飾品を選ぶ。
それらをこなしながら、殿下の今日の予定を伝える。
「分かりました。では、参りましょうか」
身支度を終えた頃には凛とした姿に変わった殿下に付き添い、部屋を出る。
彼女の父であり、この国の王であるインゴベルト陛下と食事を済ませた後、殿下は執務室で仕事を行う。
公共事業、式典や祭事の準備、国政など本来ならば、王妃が行うはずの仕事も、生まれて直ぐに母親を亡くした彼女が担っている。
2年前なんて姫であるにも関わらず、自ら戦争中のケセドニア北部に慰問なされ兵士たちを労った。
書類に目を通し、サラサラとペンでサインを記入する様子を後ろで待機し見守って居れば、何やらザワザワと城内が騒がしく感じた。
「…なんですの?」
ナタリア殿下も気が付かれた用で、ペンを置いた。
『見て参りましょうか?』
「いえ、わたくしも行きますわ」
椅子から立ち上がって、執務室を出る殿下に付いて城内の廊下を歩けば、皆慌ただしくしており、殿下に気がついて慌てて頭を下げる。
「何事ですの?」
「姫様!……それが…」
殿下が声をかけた城内の警備兵が言い淀む。
「なんですの?ハッキリ言いなさい」
殿下にぴしゃり、と言われ兵士は背筋を伸ばした。
「実は……」
兵が口を開けた瞬間、謁見の間の大きくて重たい扉がギィ、と音を立てて開いた。
そして、謁見の間から赤く長い髪を持つ男性と、茶色い髪を高い位置で結んだ男性が出てきた。
「ファブレ公爵に、ヴァン謡将?……今日は謁見の予定はなかったはずですわよね」
そう言ってコチラを見た殿下に、はい、と頷く。
殿下はつかつかと廊下を進み、城を出ようとする2人に、お待ちなさい、と声をかけた。
「これはこれは、ナタリア殿下」
そう言って茶髪の方、ヴァン・グランツが深々と殿下に対し頭を下げた。
「何事ですの」
「それが……。ナタリア殿下、気を確かにお聞きください」
公爵がそう言い、ナタリア殿下は怪訝そうな顔をした。
「…ルークが屋敷に入り込んだ
「なっ……!どういうことですの!?屋敷の兵は、ヴァン、貴方は何をしていたのですか!!」
ナタリア殿下がヒステリックに叫ぶのも致し方ない。私がこの職につく数年前にも、彼女の婚約者であるルーク様が誘拐に遭われ、その結果彼は一切の記憶を無くしてしまった。また、そのようなことになったら、と思うと胸が痛い。
「兵は、入り込んだ暗殺者の譜歌によって眠らされ機能しておりませんでした」
「暗殺者!?」
「はい。ですが、屋敷に現れた
「何故そのように言いきれますの!」
「アレは、私の妹です」
ヴァンの発言に、ナタリア殿下はよろめいた。
『殿下!』
慌てて彼女を支える。
「意味がわかりませんわ。なぜ貴方の妹が貴方の命を狙い、それでルークが……」
「申し訳ございません。妹は何かを勘違いしているようなのです。それにルーク様を巻き込んでしまった事は、私の責任です。故に、私はこれからルーク様の捜索の任に当たります」
「わたくしも!わたくしもルークを探しに行きますわ!!」
『殿下……』
昔、あんなことかあったなら探しに行きたいのも分かるが…、彼女は一国の姫だ。
「なりません」
公爵がぴしゃりと言い切る。
「ルークが飛ばされた方角は、マルクトの領地です。敵国であるマルクトに姫様を向かわせる訳にはいきません」
「そんな…!」
敵国と聞き、殿下がまたよろめき、私の腕に縋るようにし、何とか立っている。
「それ故、大軍を率いて捜索はできない。ルークの捜索はここにいるヴァン謡将とガイに任せます」
敵国であるマルクトに、キムラスカの兵をぞろぞろと連れて行くなど、宣戦布告と思われても致し方ない。
ケセドニア北部の戦いで破れたばかりのキムラスカからすれば、今マルクトと戦になるのは避けたいところだ。
「たった2人ですの!?」
「万が一、ルークが行方不明になり我々が探していることをマルクトに悟られたら、交渉材料として捕まる可能性があります。それを避けるには隠密に捜索する他ない。ヴァン謡将は
へぇ…、公爵の言った通りヴァンは
「そうですね……。それでもまだ、心配なようなら殿下の信用の置ける人物を1人捜索に加えましょう」
「わたくしの信用に置ける人物……」
うーん、と悩みながらナタリア殿下はコチラを見た。
「ああ。リュリならば適任かもしれませんね」
ヴァンの言葉に、ナタリア殿下もファブレ公爵も、えっ、と驚きの表情を見せた。
「何を仰って?彼女はわたくしの侍女ですわよ!?」
「えぇ。ですから今、信用の置ける物として彼女の方を見たのでは?」
「そうですけど…!ですが、見たら分かるでしょう!彼女はメイドなのです!」
「……そうか」
なるほど、と言ったようにファブレ公爵は私の方を見た。
「確か、お前は陛下が大詠師からの紹介で直接、ナタリア姫に付けた侍女だったな」
『はい』
「公爵?それがどうしたと言うのです?」
「よくある話です。侍女が護衛を兼ねているというのは」
驚いたように目を見開いたナタリア殿下が、本当ですの!?とこちらを見てきた。
『機密事項ですのでお答えできません』
「それはほぼ肯定しているようなものですわ……。では前に言っていたローレライ教団に居たからヴァンと知り合いだったというのは」
「過去にリュリが
「とてもそんな風には見えませんわ……。最近は少なくなりましたけど、しょっちゅう壁にぶつかったり、転んだりしてましたもの……」
そう言われて、はは、と乾いた笑い声を上げる。
『殿下の仰られる通り、実際鈍臭いので、そういうのもあって騎士団は向いてないと思い辞めたんです』
「ですが、貴女がきっちり仕事をこなす人間なのは知っていますわ。…ルークの事、頼んでもよろしくて?」
『もちろんです、殿下』
ルーク様がいなくなった日
『と、言いたいところなんですが、まずは陛下に確認をとならければ』
殿下の侍女と言えど、雇い主は陛下だし、ルーク様の捜索に加わるとなれば、そもそもの任である護衛を離れることになるわけだし。