過去編
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初めて彼女にあったのは、ND2014。
ルークが誘拐されたショックから、言葉は疎か、歩くことすらできなくなった、その翌年の事である。
ルークの婚約者である、ナタリア姫がアポイントメントもなしに唐突にファブレ邸にやって来るのはいつもの事だったが、その日はいつも彼女に着いてくる侍女とは別のメイドを連れてきていた。
不思議に思っていれば、ナタリア姫の方から、以前の侍女は結婚しお産のため暇を与え、新たな侍女を迎えたのだと説明を下さった。
リュリ・グレイ・ネイス。
俺より2つ歳が上という彼女は、血色の悪い白い肌に、薄水色の髪を持つ。全体的に色素が薄いが、彼女の眼は、血のように赤く印象的だった。
その眼の印象を誤魔化すかのように大きいラウンドメガネを掛けており、やはり、メガネを掛けるくらいだから目が悪いようで、時々壁にぶつかったり、つまづいてコケたりしている。よく転ぶからか、彼女に与えられたメイド服はバチカル城のメイド達の着ている赤い膝丈の物ではなく、黒いロング丈のメイド服だ。
転んで汚れてもいいようにと、スカートの中が見えないようにという配慮だろう。
しょっちゅう、壁にぶつかっているせいか、鈍臭いと思われがちな彼女だが、仕事はできるようで、随分とナタリア姫が気に入りファブレ邸に来る時はいつも連れてくるようになった。
関わることが多くなり分かった事だが、ナタリア姫に対する彼女はまるで俺の姉上のようだった。優しく、そして時に厳しく。
ただ、ルークに対してはめちゃくちゃに甘い。
ナタリア姫が、貴族の何たるかを婚約者として幼子のようなルークに厳しく求める中、リュリはナタリアを諭す。
それ故、自分に意地悪を言う(と思っている)ナタリア姫から、守ってくれる存在としてリュリにルークが懐くのは早かった。
「ルーク!貴方はまた、授業をサボったと聞きましたわよ!!」
「うるせーっつーの!」
あれから更に1年経って、ルークはだいぶ言葉も覚えたし、一通りのことは自分で出来るようになった。
「なんですの、その言葉遣いは!」
相変わらずナタリア姫は、ルークの様子を見に来ては彼の態度に怒りを顕にする。そして、次に怒られるのは教育係の俺だ。
「ガイ!」
ほら来た。
ナタリア姫の後に控えるリュリが苦笑いを浮かべてこちらを見ている。
「貴方という人が付いていながら、ルークがこのような言葉遣いになるとは、どういうことですの!?」
「いやぁ……、俺もきちんとした言葉遣いを教えているはずなんですが……」
本当にルークには、教えてないのだが、全くどこで覚えてくるんだ?
『まあまあ、殿下少し落ち着いてください。男の子というのは、乱暴な言葉遣いに憧れる時があるのですよ』
「…、そうなんですの?」
じろり、と疑うようにナタリア姫がこちらを見てくる。
リュリの出してくれた、助け舟に乗るように、そうです!と頷く。
『物語とかに出てくる登場人物とか、そういうものに憧れているのではないでしょうか?』
ね?とリュリが諭せばナタリア姫は、渋々、そういうこともありますわね、と頷いた。
『ところで、ルーク様はお勉強がお嫌いなのですか?』
「なんだよ!リュリまで説教かよ!!」
キレるルークに、いいえ、とリュリは首を振った。
『ただ、嫌いなのか、と聞いているだけですよ?どうですか?』
「好きなやつなんかいねーだろ!あんなの全然楽しくねーし!!」
ふん、と鼻を鳴らすルークに、リュリは、あら、と言って頬に手を当てた。
『私はお勉強好きですよ?知識を得るという事は世界を知ることですからね』
「まあ!素敵な考え方ですわね!」
両手を合わせ、ニコニコと笑うナタリア姫に、彼女は、ありがとうございますと一礼した。
「…世界っつったって、どうせオレは屋敷からすら出してもらえねーし」
リュリは、そうですねぇと頭をひねりならがらルークを見た。
『でも、出して貰えないからこそ、知識を沢山付けてみるのはいいと思いますよ?外には出られなくとも、ルーク様の世界を自身で想像し、その中では自由に動けるんですよ』
「ああ、卓上旅行とかも意外と楽しいよな」
そう言えばリュリは、ですよねと頷いて笑った。
「想像なんかで出かけられたって意味ねぇっつーの!!」
『そう、ですか……』
しゅん、としたリュリに、言い過ぎたと思ったのかルークはバツの悪そうな顔をした。
『私は見えない間の、みんなの顔を想像するの、楽しかったんですけど……』
リュリはボソボソと何か言って、聞き取れず皆、ん?と首を傾げる。
『あ、いえ。まあ考え方は人それぞれですしね。それよりも、ルーク様がお勉強したくないとなると困りましたね』
「結局そこに戻るのかよ」
げぇ、と舌を出すルークを、なんですかそれは!とナタリア姫が叱る。
『もしかして、1人で授業を受けるから楽しくないのでは?皆で勉強会するのはどうでしょうか?』
「はあ?勉強会?」
「皆って、ここにいる俺たちでって事かい?」
『はい。私、子供の頃は歳が上のお兄さんお姉さんが周りに多くて、彼らに物事を教えてもらって、それが楽しかったんですよね。ルーク様の現在の環境が当時の私に近いですから、どうかなと思ったんですが…』
へぇ、お姉さんっぽいから妹か弟でもいるのかと思っていたから意外だな。
しかし、まあ確かに、ここに居る3人ともルークよりも年上だ。
「わたくしは構いませんわよ。それでルークが王族としての品性を取り戻してくださるなら」
「俺も構わないけど。どうですルーク様?」
「はあ?口煩いのが3人に増えて勉強なんか嫌に決まってんだろ」
「まあ!せっかくリュリが貴方の為に案を出したと言うのに!アレも嫌コレも嫌と、なんなんですの!」
「だあー!うるせぇ!うるせぇ!!」
ただを捏ね始めたルークと怒り心頭のナタリア姫の様子に、やれやれと重い腰を動かそうとしたら、リュリの方が先に動いた。
『致し方ありません、ナタリア殿下。相手が嫌な事を強要するのはよくありませんから、勉強会は諦めましょう』
「しかし…!」
「はっ、そうだぜ。無理強いすんなよな!」
ケッとナタリア姫を邪険に扱うルークを、コラコラと止めに入る。
「リュリ!貴女はいつもルークに甘すぎですわ!」
『そんな事はないと思いますが…』
「そんな事ありますわ!」
『そうでしょうか?まあ、とりあえず今回の件は他の策を思いつきましたので、こちらが折れてもいいかなぁと思った次第です』
「他の策とは?」
ナタリア姫の問に、リュリはふふっと笑ったあと口元に人差し指を置いた。
『秘密です』
そう言うリュリを見てナタリア姫は、大きくため息を吐く。
「致し方ありませんわ。貴女が言うならそれが最善策なのでしょう。ルーク!今回はわたくしの方が折れてさしあげますわ。ですが、次にまた、授業をサボったなどと聞こえたらどうなる事か覚えていらしてね!」
そう言ったナタリア姫はリュリ、と彼女を手早く呼んだ。これは帰る事を示す合図だ。
「では、また来ますわ。ご機嫌よう」
ドレスの裾を持ち上げたナタリア姫は一礼して、ルークに背を向け部屋を出ていく。
リュリもルークに向けて深々とお辞儀した後、ナタリア姫を追うように部屋を出ていった。
「もう来んなっつーの」
閉じていく扉に向けて小声でそんな事を言うルークの口を慌てて手で塞ぐ。
扉が完全に閉まって、少ししてから手を離す。
「危ねー」
「っ、なにすんだよガイ!」
ホッと息をつけば、ポカポカとルークに殴られる。
「いや、お前なー!あんな事言って聞こえたらどうすんだよ」
「知らねぇよ!」
「知らないってお前なぁ…」
こっちの身にもなれってんだ。
リュリが来てから、ストッパーが増えたと言えど、あのお姫様さんがお転婆なのは変わらないし、ルークも年々態度がなぁ…。
ちょっと前のルークなら、リュリの提案なら、うんと頷いていただろうに。イヤイヤ期か?
「あんまり邪険にするなよ?婚約者なんだし。それと、ナタリア様を止めるリュリも大変なんだからな?」
「……、わーったよ」
少し考えた後、そう言ったルークに、よし、と頷く。
なんだかんだ、リュリを引き合いに出されると弱いんだよなルークは。
使用人Gの意見
彼女のおかげで、主人公が扱いやすくなって助かる。
ルークが誘拐されたショックから、言葉は疎か、歩くことすらできなくなった、その翌年の事である。
ルークの婚約者である、ナタリア姫がアポイントメントもなしに唐突にファブレ邸にやって来るのはいつもの事だったが、その日はいつも彼女に着いてくる侍女とは別のメイドを連れてきていた。
不思議に思っていれば、ナタリア姫の方から、以前の侍女は結婚しお産のため暇を与え、新たな侍女を迎えたのだと説明を下さった。
リュリ・グレイ・ネイス。
俺より2つ歳が上という彼女は、血色の悪い白い肌に、薄水色の髪を持つ。全体的に色素が薄いが、彼女の眼は、血のように赤く印象的だった。
その眼の印象を誤魔化すかのように大きいラウンドメガネを掛けており、やはり、メガネを掛けるくらいだから目が悪いようで、時々壁にぶつかったり、つまづいてコケたりしている。よく転ぶからか、彼女に与えられたメイド服はバチカル城のメイド達の着ている赤い膝丈の物ではなく、黒いロング丈のメイド服だ。
転んで汚れてもいいようにと、スカートの中が見えないようにという配慮だろう。
しょっちゅう、壁にぶつかっているせいか、鈍臭いと思われがちな彼女だが、仕事はできるようで、随分とナタリア姫が気に入りファブレ邸に来る時はいつも連れてくるようになった。
関わることが多くなり分かった事だが、ナタリア姫に対する彼女はまるで俺の姉上のようだった。優しく、そして時に厳しく。
ただ、ルークに対してはめちゃくちゃに甘い。
ナタリア姫が、貴族の何たるかを婚約者として幼子のようなルークに厳しく求める中、リュリはナタリアを諭す。
それ故、自分に意地悪を言う(と思っている)ナタリア姫から、守ってくれる存在としてリュリにルークが懐くのは早かった。
「ルーク!貴方はまた、授業をサボったと聞きましたわよ!!」
「うるせーっつーの!」
あれから更に1年経って、ルークはだいぶ言葉も覚えたし、一通りのことは自分で出来るようになった。
「なんですの、その言葉遣いは!」
相変わらずナタリア姫は、ルークの様子を見に来ては彼の態度に怒りを顕にする。そして、次に怒られるのは教育係の俺だ。
「ガイ!」
ほら来た。
ナタリア姫の後に控えるリュリが苦笑いを浮かべてこちらを見ている。
「貴方という人が付いていながら、ルークがこのような言葉遣いになるとは、どういうことですの!?」
「いやぁ……、俺もきちんとした言葉遣いを教えているはずなんですが……」
本当にルークには、教えてないのだが、全くどこで覚えてくるんだ?
『まあまあ、殿下少し落ち着いてください。男の子というのは、乱暴な言葉遣いに憧れる時があるのですよ』
「…、そうなんですの?」
じろり、と疑うようにナタリア姫がこちらを見てくる。
リュリの出してくれた、助け舟に乗るように、そうです!と頷く。
『物語とかに出てくる登場人物とか、そういうものに憧れているのではないでしょうか?』
ね?とリュリが諭せばナタリア姫は、渋々、そういうこともありますわね、と頷いた。
『ところで、ルーク様はお勉強がお嫌いなのですか?』
「なんだよ!リュリまで説教かよ!!」
キレるルークに、いいえ、とリュリは首を振った。
『ただ、嫌いなのか、と聞いているだけですよ?どうですか?』
「好きなやつなんかいねーだろ!あんなの全然楽しくねーし!!」
ふん、と鼻を鳴らすルークに、リュリは、あら、と言って頬に手を当てた。
『私はお勉強好きですよ?知識を得るという事は世界を知ることですからね』
「まあ!素敵な考え方ですわね!」
両手を合わせ、ニコニコと笑うナタリア姫に、彼女は、ありがとうございますと一礼した。
「…世界っつったって、どうせオレは屋敷からすら出してもらえねーし」
リュリは、そうですねぇと頭をひねりならがらルークを見た。
『でも、出して貰えないからこそ、知識を沢山付けてみるのはいいと思いますよ?外には出られなくとも、ルーク様の世界を自身で想像し、その中では自由に動けるんですよ』
「ああ、卓上旅行とかも意外と楽しいよな」
そう言えばリュリは、ですよねと頷いて笑った。
「想像なんかで出かけられたって意味ねぇっつーの!!」
『そう、ですか……』
しゅん、としたリュリに、言い過ぎたと思ったのかルークはバツの悪そうな顔をした。
『私は見えない間の、みんなの顔を想像するの、楽しかったんですけど……』
リュリはボソボソと何か言って、聞き取れず皆、ん?と首を傾げる。
『あ、いえ。まあ考え方は人それぞれですしね。それよりも、ルーク様がお勉強したくないとなると困りましたね』
「結局そこに戻るのかよ」
げぇ、と舌を出すルークを、なんですかそれは!とナタリア姫が叱る。
『もしかして、1人で授業を受けるから楽しくないのでは?皆で勉強会するのはどうでしょうか?』
「はあ?勉強会?」
「皆って、ここにいる俺たちでって事かい?」
『はい。私、子供の頃は歳が上のお兄さんお姉さんが周りに多くて、彼らに物事を教えてもらって、それが楽しかったんですよね。ルーク様の現在の環境が当時の私に近いですから、どうかなと思ったんですが…』
へぇ、お姉さんっぽいから妹か弟でもいるのかと思っていたから意外だな。
しかし、まあ確かに、ここに居る3人ともルークよりも年上だ。
「わたくしは構いませんわよ。それでルークが王族としての品性を取り戻してくださるなら」
「俺も構わないけど。どうですルーク様?」
「はあ?口煩いのが3人に増えて勉強なんか嫌に決まってんだろ」
「まあ!せっかくリュリが貴方の為に案を出したと言うのに!アレも嫌コレも嫌と、なんなんですの!」
「だあー!うるせぇ!うるせぇ!!」
ただを捏ね始めたルークと怒り心頭のナタリア姫の様子に、やれやれと重い腰を動かそうとしたら、リュリの方が先に動いた。
『致し方ありません、ナタリア殿下。相手が嫌な事を強要するのはよくありませんから、勉強会は諦めましょう』
「しかし…!」
「はっ、そうだぜ。無理強いすんなよな!」
ケッとナタリア姫を邪険に扱うルークを、コラコラと止めに入る。
「リュリ!貴女はいつもルークに甘すぎですわ!」
『そんな事はないと思いますが…』
「そんな事ありますわ!」
『そうでしょうか?まあ、とりあえず今回の件は他の策を思いつきましたので、こちらが折れてもいいかなぁと思った次第です』
「他の策とは?」
ナタリア姫の問に、リュリはふふっと笑ったあと口元に人差し指を置いた。
『秘密です』
そう言うリュリを見てナタリア姫は、大きくため息を吐く。
「致し方ありませんわ。貴女が言うならそれが最善策なのでしょう。ルーク!今回はわたくしの方が折れてさしあげますわ。ですが、次にまた、授業をサボったなどと聞こえたらどうなる事か覚えていらしてね!」
そう言ったナタリア姫はリュリ、と彼女を手早く呼んだ。これは帰る事を示す合図だ。
「では、また来ますわ。ご機嫌よう」
ドレスの裾を持ち上げたナタリア姫は一礼して、ルークに背を向け部屋を出ていく。
リュリもルークに向けて深々とお辞儀した後、ナタリア姫を追うように部屋を出ていった。
「もう来んなっつーの」
閉じていく扉に向けて小声でそんな事を言うルークの口を慌てて手で塞ぐ。
扉が完全に閉まって、少ししてから手を離す。
「危ねー」
「っ、なにすんだよガイ!」
ホッと息をつけば、ポカポカとルークに殴られる。
「いや、お前なー!あんな事言って聞こえたらどうすんだよ」
「知らねぇよ!」
「知らないってお前なぁ…」
こっちの身にもなれってんだ。
リュリが来てから、ストッパーが増えたと言えど、あのお姫様さんがお転婆なのは変わらないし、ルークも年々態度がなぁ…。
ちょっと前のルークなら、リュリの提案なら、うんと頷いていただろうに。イヤイヤ期か?
「あんまり邪険にするなよ?婚約者なんだし。それと、ナタリア様を止めるリュリも大変なんだからな?」
「……、わーったよ」
少し考えた後、そう言ったルークに、よし、と頷く。
なんだかんだ、リュリを引き合いに出されると弱いんだよなルークは。
使用人Gの意見
彼女のおかげで、主人公が扱いやすくなって助かる。