外殻大地編
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カイツールまでの道中で、ジェイドの催促により先程ティアか詠った譜歌について説明があった。
彼女が詠ったのは導師が言うようにユリアの譜歌で、譜と旋律だけでは意味をなさないと言われてきた物で、彼女がそれを詠えるのは意味と象徴を伝え聞いたユリアの子孫であるからだということだった。
しかし、その話の中で不思議だったのは、意味と象徴を正しく理解し、旋律に載せる時に隠された英智の地図を作る、という話をティアからではなくガイから出てきた事だった。
卓上旅行が趣味だとは言っていたが、マルクトの地理にもやけに詳しいし、一子相伝のことまで知ってる。
なんと言うかジェイドが怪しむのも仕方がない気がする。
国境の砦であるカイツールに到着するなり、ルーク様が、あれと声を上げた。
「アニスじゃねぇか?」
私たちが入ってきた砦の門からまっすぐ進んだ先に同じような門かあるのだが、その門番の兵士の傍にやたらと身体をくねくねとさせた小さいツインテールの女の子の姿があった。
「証明書も旅券もなくしちゃったんですぅ。通してください。お願いしますぅ」
「残念ですが、お通しできません」
媚びるような声の少女を門番の兵士はバッサリと断った。
「……ふみゅう〜」
少女は両手をこめかみの当たりに当てながら鳴き声を上げたかと思うと諦めたようにくるりと兵士に背を向け歩き出す。
「……月夜ばかりと思うなよ」
先程までの可愛らしい声とは裏腹にどす黒い声で彼女は呟いた。
「アニス。ルークに聞こえちゃいますよ」
導師がそう声をかければ、少女アニスは驚いたようにこちらを向いた。
「きゃわーん♡アニスの王子様♡」
そう言って彼女は駆け寄ってルークの腰に抱きついた。
「……女ってこえー」
そう言ってガイが縮こまって肩を震わす。
『女性恐怖症に拍車かかかりそうですね』
「はは、否定しないんだな……」
『まあ、女目線でもああいう子は多いですからねぇ』
私の答えに、ははは、と乾いた笑い声をあげ震えているガイとは反対側で、黄色い声を上げて心配していたと抱きついているアニスにルークはこっちも心配していた、とアニスに話しかけている。
「魔物と戦ってタルタロスから墜落したって?」
「そうなんです……。アニス、ちょっと怖かった……」
てへへ、とアニスはしおらしく笑う。
その後ろで導師が両腕を伸ばして見せた。
「そうですよね。ヤローてめーぶっ殺す!って悲鳴あげてましたものね」
導師が彼女のモノマネをしながらそう言うと、アニスは慌ててルーク様から離れて、導師に詰め寄った。
「イオン様は黙ってて下さい!」
怖い顔でそう言ってからくるりとルーク様に向き直って笑顔を向けた。
「ちゃんと親書だけは守りました。ルーク様♡褒めて♡」
「ん、ああ、偉いな」
ルーク様がそう声をかければ、アニスはきゃわん♡と喜んだ。
とりあえず一連の流れで彼女の為人はわかった。
「無事でなりよりです」
「はわー♡大佐も私のこと心配してくれてたんですか?」
「ええ。親書がなくては話になりませんから」
「大佐って意地悪ですぅ……」
からかうようにいうジェイドに、アニスは頬を膨らませた。
「ところで、どうやって検問所を超えますか?私もルークも旅券がありません」
ティアの言葉に、ああ、それならと声をかけようとした時だった。
『!』
「ここで死ぬ奴にそんなものはいらねえよ!」
気づくのが遅かった。門の上から人が降ってきた。
『ルーク様避けて!』
咄嗟に叫んだが、ルーク様は後ろに身を引こうとした所で切り飛ばされて後ろに倒れた。
急いでショットガンを構えるが、ルーク様を切り伏せたその背に私が銃口を向けるより先に、人影が倒れたルーク様と相手の合間に飛び込んできた。
「退け、アッシュ!」
「……ヴァン、どけ!」
剣をぶつけた2人の後ろで倒れたままのルーク様に離れたティアが治癒術をかけてくれた。
「どういうつもりだ。私はおまえにこんな命令をくだした覚えはないを退け!!」
ヴァンがそう叫べば、彼は大人しく剣を引いた。そして、軽々とした身のこなしで、門の壁へ飛んでぴょんぴょんと門の上へ登って逃げて行った。
「
身体を起こし嬉しそうに声を上げたルーク様を見て良かったと息を吐く。深く斬られたようではなかったようだ。
「ルーク。今の避け方は不様だったな」
「ちぇっ。会っていきなりそれかよ……」
「……ヴァン!」
よかったと皆が握っていた武器を収める中、ティアだけが握ったナイフをヴァンに向けた。
「ティア、武器を収めなさい。おまえは誤解をしているのだ」
「誤解……?」
「頭を冷やせ。私の話を落ち着いて聞く気になったら宿までくるがいい」
そう言って立ち去ろうとするヴァンに、ルーク様が声を掛ける。
「ヴァン
「苦労したようだな、ルーク。しかし、よく頑張った。さすがは我が弟子だ」
「へ……へへ!」
嬉しそうにルーク様が笑うのを聞いて、ヴァンは今度こそ立ち去って宿屋へ入って行った。
「ティア。ここはヴァンの話を聞きましょう」
優しく導師が諭す。
「分かり合える機会を無視して戦うのは愚かなことだと僕は思いますよ」
「そうだよ。いちいち武器抜いておっかねー女だな」
「イオン様のお心のままに」
ティアはルークの言葉を無視して、イオンの方へ頭を垂れた。
「じゃあヴァン謡将を追っかけるか」
ガイの言葉で皆が動き始める中、私はルーク様の傍に寄った。
『ルーク様。ああいうのはよくないですよ。ティアにはティアの事情があるのですよ』
実の兄にわざわざ武器を向けるなんて、深い理由がないとできないはずだ。
「なんだよ事情って」
ルーク様がティアを見るが彼女は答えず宿の方へ歩いていく。
『簡単に話せるような事なら、あのように武器を向けたりしないと思いますよ』
「なんだよそれ、意味わかんねーつーの!」
「ガキだねぇ、おまえは」
やれやれとガイがルークに寄って肩を叩く。
「はあ!?」
『そうですねぇ……。義兄ですが、私にも兄がいます。兄が間違った事をしているのなら、私もティアと同じように武器を取ると思います。ルーク様に取ってガイは兄貴分でしょう?もし、ガイが間違った事を、人が沢山死ぬような事をしようとしていたら、どうしますか?』
「な、なんだよそれ。ガイはそんな事しねーよ!ヴァン
『もしも、の話ですよ』
「そんなの絶対ありえねーつーの!!」
そう叫んでぷりぷりと怒ったようにルーク様は、宿屋へ先に向かったみんなの後を追っていく。
『随分と信頼されていますね』
同じように残されたガイに声をかければ、彼はカラッと笑った。
「オレは嬉しいが……、キミが伝えたかったことは伝わらなかったな」
残念ですと頷いて、私達も後を追うのだった。
盲信
これほど怖いものはないというのに。
