外殻大地編
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「地震か……!」
突然の激しい揺れに皆、倒れまいと踏ん張るので精一杯だ。
『……なに、これ』
目には見えないが、今まで感知した事のない何かが地面から吹き出していた。
ぐい、と首根っこをジェイドに捕まれ後ろに下がらされた。
「おい、この蒸気みたいなものは……」
「瘴気だわ……!」
ガイのその問に答えたのはティアだった。
「いけません!瘴気は猛毒です!」
導師の言葉を聞いて、後ろに引っ張ってくれたジェイドに心から感謝する。見えない故に触れていただろう。
「きゃっ」
突如、アリエッタが悲鳴をあげて倒れた。
彼女の足元から瘴気が吹き出ていて、それを喰らって倒れてしまったのだろう。
そして、今まで牽制をしていたライガがアリエッタが倒れた事で怒って飛び出したが、吹き出した瘴気に当たってライガもグッタリと地に倒れた。
「吸い込んだら死んじまうのか!?」
目の前で倒れたライガを見てルークがそう叫ぶ。
「長時間大量に吸わなければ大丈夫。とにかくここを逃げ……」
ティアはそこで言葉を止めてしまう。
地震で緩んだ地盤がズレて四方を囲むように瘴気が吹き出して居た。
「どうするんだ!逃げらんねぇぞ!」
倒れそうになったイオンをルーク様が慌てて支えてもう一度叫んだ。
呼吸を止めて突っ切るにしても、どこまで続いているのか分からないし、この瘴気のせいで周りの
そんなことを考えている端で、ティアが杖を握った。
「…………っ」
息を吸った彼女は、歌を歌い始めた。
クロア リュオ ズェ トゥエ リュオ レィ──と。
「譜歌を歌ってどうするつもりですか」
「待ってください、ジェイド。この譜歌は……──ユリアの譜歌です!」
導師がそう言ったこの歌を私は聞いた事があった。
「ネゥ リュオ ズェ──」
ティアが歌い終われば譜陣が浮かび上がって、我々の周りを
そして、壁が光を放ち消えると共に辺りから吹き出していた瘴気が無くなった。
「瘴気が消えた……!?」
「瘴気が持つ固定振動数と同じ震度を与えたの」
『ありがとう、ティア』
おかげで周りの
「一時的な防御壁よ。長くは持たないわ」
「噂には聞いたことがあります。ユリアが残したと伝えられる七つの譜歌……しかしあれは暗号が複雑で読み取れた者がいなかったと…………」
「詮索は後だ。ここから逃げないと」
考え込むジェイドをガイが急かす。
「─そうですね」
そう言ってジェイドは消えていた槍を出して、瘴気に当たって気を失ったアリエッタの元へ歩いて行った。
「や、やめろ!なんでそいつを殺そうとするんだ!」
慌ててルーク様がジェイドに静止するよう声をかける。
「活かして置けばまた命を狙われます」
「だとしても、気を失って無抵抗の奴を殺すなんて……」
「……本当に、甘いのね」
背を向けて呟くティアをルーク様はキッと睨みつけた。
「うるせぇ!冷血女!だいたいこいつ、リュリの知り合いなんだろ!」
いいのかよ!とルーク様は今度は私の方を向いた。
『……そう、ですね』
友としてアリエッタには生きていてもらいたい。
だけど、この先を考えると……ライガクイーンの仇となるルーク様達をアリエッタはまた殺しに来るだろう。そうしてまた争うよりも今ここで、彼女が苦しまないうちに殺してしまう方が……
「─ジェイド。見逃して下さい」
悩む私の傍で導師が口を開いた。
「アリエッタは元々僕次の
導師からの命令とも取れるお願いに、やれやれとジェイドは槍を消した。
「……まあいいでしょう」
「瘴気が復活しても当たらない場所に運ぶくらいはいいだろう?」
『ガイ……』
「ここで見逃す以上文句を言う筋合いではないですね」
『ありがとう』
ガイとジェイドの優しさに感謝して、私は急いでアリエッタの元に駆け寄って彼女を抱き抱える。
5年の合間に大きくなったものだ。
「1人で大丈夫ですか」
導師が傍に駆け寄って来る。
『はい、何とか。……良さそうな場所は…………』
「あちらはどうでしょうか」
そう言って導師が岩陰になっている場所に先導するのについて行く。
地震によって出来た地面の亀裂とも離れているし、大丈夫そうかな、とそっとしゃがんでアリエッタを地面に降ろす。それに何故か導師も同じようにしゃがんできた。
「リュリ、後で話したいことがあります」
他の皆には聞こえないような、小さな声でそう言って導師は先に立ち上がった。
「そろそろ……限界だわ」
「行きましょう」
ティアの言葉に導師は私へと手を差し出した。
それを掴んで立ち上がる。
『ごめんね、アリエッタ』
また置いていくことを許してね
さあ、追いつかれる前にカイツールへ急ごう。
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