外殻大地編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「橋が流されたって割に大した川じゃねぇな」
私の手を引いてじゃぶじゃぶと水の中を歩いて進むルーク様はポツリと呟いた。
「もうだいぶ水が引いたんだろう」
ガイの言う通りだろう。渡っている川の水嵩は深い所でも脛の中腹にも満たないくらいだ。
「雨が振った後は川の水が茶色に濁って大変だろ?」
「……だろって言われても困るな」
『見た事の無いものは分からないですよね』
私も見えないから今の足元にある水がどのような状態か分からなかった。ガイの言葉のおかげで、濁っていないと言うことが分かったくらいだ。
「……とと、そうだったな。とにかく、川に限らず水をナメてたら大変な事になる」
ガイの言葉にブンブンと縦に首を振る。
「おまえ、それをよく言うよな。海は怖いとかさ」
「確かに、海は怖いそうね」
『ん?』
「……そうね……とは、また随分不思議な言い回しですね」
ティアの言葉に引っ掛かりを覚えたらジェイドが代わりに聞いてくれた。
「ダアトのあるパダミヤ大陸には海水浴のできる場所もかなりあるはずですが」
「……え、ええ。まあ……」
ティアはどこか困ったような、焦ったような声色だ。
「ま、それはともかく、ガイはバチカルの生まれなのですか?」
「いや?まあ、海は好きだけどね。海難救助隊の資格も持ってるよ」
「へーっ、おまえ何でも出来んな」
「その俺が言うんだ。とにかく、海とか、自然をナメるなよ」
ルーク様はジェイドの問をガイがさりげなく躱したた事に気づいて居ないようで、素直に感心していた。
ジェイドはニコニコと笑っているようだが、明らかにガイに探りを入れている。軍人の
『そうですよ、ルーク様』
「何で俺に言うんだよ」
『だって、今、私の命がかかってますからね』
がっしりとルーク様の手を握りしめる。
「わーってるよ。それに何かあってもガイが何とかしてくれんだろ?海難救助隊の資格があるつってたし」
「おいおい、ルーク。それが油断なんだつっーの」
『そうですね。それに、ガイは女性恐怖症ですよ?』
ガイに助けてもらうのは無理じゃないかな、と考える。
「いや、流石に人命は……」
ガイは青い顔をしてそこまで言って口元を覆った。
人命を優先出来ると言いたいところだろうが、実際その場に出くわしてみなければ、女性への恐怖が勝るかどうかも彼自身も分からない事だろう。
『そうですね、触れれなくともロープとかでガイなら器用に助けてくれるかもしれませんね』
「え、あ、ああ……そうだな。できる手は尽くすよ」
『その時はよろしくお願いしますしますね』
「いや、その時がないように気をつけて欲しいって話だったと思うんだが?」
そうでしたね、と笑って歩みを進める。
ルーク様が手を貸して下さってるのもあるが、皆が話してくれる事で気が紛れて水の中だがいつもより安心して進めれる気がした。
「あー、びしょびしょだぜ……ったく」
長い川幅の端にようやくたどり着き、陸地に上がったルーク様はズボンの裾をつまむように掴んで水気を絞った。
「そういいなさんな。少しでも早く帰りたいんだろ?」
「そりゃそうだけど………」
そう言って再び歩き出そうとした時だった。
大きな物を感知した。
『皆!上から何か来ます!』
そう叫べば、ジェイドがいの一番に何も無い所から槍を召喚し構え導師を自分の後ろに隠した。
自分も武器に手をかけた所で、上から大きなモノが降ってきた。
落ちてきた四足の大型の獣は咆哮をあげる。
「……ライガ!」
ライガの生息地はこの辺ではない。つまりこのライガは私たちを狙って連れて来られたものだろう。そして魔物を意図して連れて来れる者は……
『アリエッタちゃん……』
名を呼んで、後ろの気配に振り返る。
「なんで……!」
ピンクの長髪の幼い姿をした少女。
彼女はツギハギで作られたぬいぐるみを腕にギュッと抱いている。
そんな彼女は酷く驚いた顔をした。
「幼獣のアリエッタ!?見つかったか……!」
「なんで、リュリがその人たちといるの!!」
泣きそうな声でアリエッタがそう叫び、知り合いなのか、とみんなの視線が私に向けられる。
そうか、昨日、私は上から彼女を見ていたけれど、彼女はタルタロスに閉じ込められたからルーク様たちと合流した私をみていないのか。
『なんでと言われても、お仕事だからよ。アリエッタちゃんだってそうでしょ?』
そう言ってアリエッタにショットガンを向ける。
昨日、セントビナーで私とガイが買い物をしている間にルーク様達が六神将を見たと言っていたから彼女もその任についているはずだ。
「待って下さい、リュリ!」
ジェイドの後ろから飛び出した導師が私の銃口の前へでた。
「アリエッタ!見逃して下さい。あなたならわかってくれますよね?戦争を起こしていけないって」
「イオン様の言うこと………アリエッタは聞いてあげたい……です……。でもその人たち、アリエッタの敵!」
『どういうこと………?』
意味が分からないとアリエッタを見れば彼女は私の仲間たちを強く睨んでいるのが分かる。
「アリエッタ、彼らは悪い人ではないんです」
導師の言葉にアリエッタは、ぬいぐるみに顔を埋めた。
「ううん……悪い人です」
ああ、とひとつ思い出す。
そういえば導師イオンって誘拐騒動になってたはず。
『待って、アリエッタ。彼らはイオン様をさらってる訳じゃないのよ?ちゃんと依頼をうけて同行してもらっていて─』
「悪い人だもん!」
言葉を遮るようにアリエッタが叫ぶ。
「だってアリエッタのママを………殺したもん!」
『え……?』
まさか、と仲間たちを振り返る。
「何言ってんだ?俺たちがいつそんなこと……」
ルーク様は困惑したようすだった。
そりゃあそうだ昨日まで人を殺すことを躊躇っていたのだから女性を殺したのなら覚えているだろうが、このようすでは彼にそんな記憶はないのだろう。
だが、彼女が言っているのは人間の話ではないのだ。
「アリエッタのママはお家を燃やされてチーグルの森に住み着いたの。ママは仔供たちを………アリエッタの弟と妹たちを守ろうとしてただけなのに………」
「まさかライガの女王のこと?でも彼女、人間でしょう?」
ティアは酷く戸惑ったようすでそう呟いた。
『ええ。アリエッタは人間です。そして世の中、親子の繋がりが産んでくれた人達だけとは限らないんですよ。彼女の場合はそれがだいぶ特殊なんですけど……』
「ええ。彼女はホド戦争で両親を失って魔物に育てられたんです。魔物と会話できる力を買われて
「じゃあ、俺たちが殺したライガが……」
どうやらライガクイーンを殺した記憶はあるらしい。
そうでなければ良かったのに。
「それがアリエッタのママ……!アリエッタはあなたたちを許さないから!地の果てまで追いかけて………殺しますっ!」
アリエッタがそう宣言しぬいぐるみを掲げる。
やっぱり戦いは避けられないか、そう思った時だった。
地震
突如、揺れだした大地に皆悲鳴を上げるのだった。
