外殻大地編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
アニスとやらからの手紙に書かれていたポイントβに向かうには、オラクルの奴らが街の前で警備しているし、何よりイオンが疲れているということで今日は宿に泊まり、明日出発することになった。
「じゃあ、宿に行くか」
『あ、私は少しアイテムなどの買い物をして行きますので先に向かってください』
「1人で大丈夫ですか?」
ジェイドがリュリに聞けば、彼女は困ったように笑った。
『子供じゃないんですから平気ですよ』
そう、ルークじゃあるまいし。
しかし、ジェイドはじっと彼女を見つめたあと、ガイ、と俺の名を呼んだ。
「リュリ1人では迷子になりかねませんから、ついて行ってください」
『なりませんよ!』
む、と頬を膨らませるリュリを見て、今日は色んな顔が見れるな、と思う。
さっきも珍しくルークに対して怒っていたしな。
「そんな心配するなんて、旦那にとっちゃ妹みたいなもんなんだな」
「ふむ。まあ、そういうことにしておきましょうか」
「ま、流石にリュリは迷子にはならないだろうけど、荷物持ちは必要だろうからついて行くよ」
『…わかりました。では、お願いします』
ぺこり、とリュリは頭を下げる。
「じゃあルーク達は先に休んでてくれ」
「ああ」
あ〜疲れた、と言ってルークが宿の方に向かって歩き出すのを見てティアとイオンが慌ててついて行く。
「では道具袋預けておきますね」
「ああ」
ジェイドから袋を受け取って俺たちも、宿屋と反対に歩き出す。
「ジェイドとは幼なじみなんだっけ?」
『兄がですね。私は養女なので、ネイス家に引き取られた時には兄もジェイドも、もう軍で働いていたので……』
ああ、そう言えばマルクトの領事が養女がどうとか、そんな事言ってたな。
「なるほどな。まあ、友人の妹ってなるとあれだけ気にかけるのもわかるけど、それにしても過保護だよな」
『ですよねぇ。全く、子供じゃないんですからっ!?……いっ、!!!』
話しながら隣…いや少し離れた横側を歩いていたリュリが、石畳に躓き、コケた。
そう言えばそうだった。彼女、ファブレ家にナタリア姫に同行して来た時も、よく壁にぶつかったり、段差につまづいたりしてコケてたな……。これはジェイドが心配するもの無理ないのでは?
「あー……大丈夫かい?」
『……はい』
恥ずかしそうな様子で返事をしたリュリは、急いで立ち上がって、パンパンとスカートを払った。
「手を借せれば、良かったんだけどな」
『迷子にはなりませんよ!……たぶん』
「ははっ!コケるけどな〜」
『もう!今のはこの石畳が飛び出てるのが悪いです!』
「そうだな〜」
『なんか今日のガイはいじわるですね』
むっ、とリュリは頬を膨らませる。
一緒に旅にでてから本当に色んな1面を知る。
『ジェイドみたいで嫌いです』
そう言ってリュリは大股で歩きだす。
「急ぐとまたコケるぞ」
『も〜!!!』
ずっとむくれた様子だったリュリと買い出しを終えて道具屋を出る。
『それじゃあ、宿に行きましょうか』
「あっ、ちょっと待ってくれ」
そう言えばリュリは首を傾げた。
『何か買い忘れがありましたか?』
「いやそうじゃないんだ。ただちょっと寄り道して行かないか?」
『寄り道、ですか?』
「ああ。君に見せたいものがあってね」
そう言えば、リュリは少し悩む素振りを見せた後、いいですよ、と頷いた。
「じゃあこっちだ」
着いてきてと彼女に声をかけて俺は街の奥に向かう。
『これは確か……ソイルの木でしたか?』
「ああ。ここ登ってくれ」
街の奥にある大木の上に広い足場があり、その上から吊り下げられた木の梯子を先に登っていく。
「落ちないよう気をつけてな」
続いて登ってくるリュリに声を掛けながら1番上まで登りきる。
『よいしょ、っと』
ハシゴを登りきったリュリも足場の上に立った。
「どうだ?いい景色だろ?」
ちょうど日も暮れてきて、夕陽に街が照らされていて絶景である。
『え、あぁ………そうですね』
不思議な間を置いて頷いたリュリを見て、あれ?と首を傾げる。
あまり反応良くなかったな。高いところ苦手…って訳じゃないよな。一緒にタルタロスの上まで登ってたし。
『それにしても大きな木ですね』
街の景色は興味ないのかくるりと背を向けたリュリは、聳え立つソイルの木に近寄って、その手で触れた。
植物の方が好きだったか。
「樹齢2000年って話だぜ」
『2000年ですか……ユリアと7人の弟子の生きた時代からあるのですね』
「そう考えると凄いよな」
『はい。この木はここで我々の先祖を見守ってきたのでしょうね』
ほう、とした様子でリュリは木を見上げている。
『この木にとってはこんな世界でもこれだけ根を張るほど価値がある世界だったってことですよね』
「へ?」
『えっ、あっ。なんか変なこと言ってしまいましたね』
本人も考えて放った言葉ではなかったようで慌てた様子である。
「なんかこういう神秘的なものを見ると感慨深くなるよな」
『……ええ、本当に』
そう言ってリュリは、木に触れていた手を離した。
『ありがとうございます。ガイ』
「ん?何がだい?」
『ここに連れてきたのは、私がずっと怒ってたからですよね?』
「あー」
バレてたか。
「いや、ずっと怒ってるのはまあ、俺がからかったせいだからアレだけど……。まあ、君にしては珍しくルークに対して怒りを顕にしてたからさ。直ぐに帰るのは顔合わせずらいんじゃないかなと思ってな」
まあ、多分ルークの方は怒らせた事をもう忘れてそうだが。
『…あれはどうしても許せなかったんです。だって、殿下は本当にルーク様のこと心配しているんですよ。それなのに、ウザイだなんて』
「あー、そうだな……。あれは俺がちょっと面白がってルークをからかったのも悪かったな」
『そうですね。今日のガイはちょっといじわるですから』
「あはは……。悪かったな。後でルークにもちゃんと言い聞かせとくよ」
そう言えばリュリは、うん、と頷いた。
『そうしてください。ルーク様があれでは殿下が浮かばれません』
「ああ。……君は本当にナタリア姫の事が好きだね」
『無論ですよ。敵国出身の、しかもこんな鈍臭い私でも侍女として傍に置いてくれるのなんてナタリア殿下くらいですよ?』
鈍臭いって自分でも分かってるんだな……。
まあ、ルークもだがナタリアも人を出身で判断したりはしないよなぁ。2人とも分け隔てなく横暴……って本人らに言ったらクビが飛ぶな。
『それに殿下は常に民のことを思ってらっしゃる、心優しい方ですよ。この間も一緒に城下の様子を見に行きましたけど、ああやって定期的に民の言葉を聞いて。国を良くしようとお若いながら努力を惜しまない方です。好きにならない方がおかしいです』
そう言ってるリュリは今日1番の笑顔だった。
人、木石に非ず
彼女の気を晴らすには、景色よりもナタリアの話が1番だったか。