外殻大地編
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城砦都市セントビナー、その入口の門の前に兵士が立っている。しかもその兵は
「なんで
「タルタロスから1番近い街はこのセントビナーだからな。休息に立ち寄ると思ったんだろ」
ルーク様の問にガイが答えると、おや、とジェイドが含みを持ったように呟いた。
「ガイはキムラスカ人の割にマルクトに土地勘があるようですね」
「卓上旅行が趣味なんだ」
そう、静かな声でガイは返す。
「これはこれは、そうでしたか」
何気ない会話のように聞こえるが……、ジェイドは恐らく彼の素性を探っている。
確かにただの使用人にしては腕が立つし……、なにより食事だとか、そういった時の立ち振る舞いの美しさは貴族のそれに近い気がする。王族のナタリア殿下の傍に仕えている私から見て、そう見えるのだ。
彼も私と同じで何かしらあるのだろう。
「大佐、あれを」
ティアが言ったのは、荷馬車だった。
門の前で止まり許可を貰っている。
「後からもう1台まいります」
そう言って荷馬車はすんなりと街の中へ入っていく。
「なるほど、これは使えますね」
「もう1台を待ち伏せて、乗せてもらうんだな」
『話が通じる方だといいですね』
「とにかく、エンゲーブへの街道を少し遡ってみましょう」
導師の言葉にそうですね、とティアが頷き、行きましょうと皆、来た道を戻っていく中、ルーク様だけ、身を潜めたままだった。
「俺を置いて話を進めるなっ!」
「…子供ね」
呆れたとティアが肩を窄めた。
街道を進んで行けば、直ぐに反対側から来る荷馬車が見えた。
「その馬車止まれ!」
『ルーク様!危ないですよ!』
止めるまもなくルーク様は、荷馬車の目の前に飛び出した。
荷馬車は何とか止まってくれて、馬の綱を握る操縦者の元へ近寄る。
「カーティス大佐じゃないですか!」
こちらが、すみませんと声をかけるよりも前に、向こうの馬車に乗っていた年配の女性が声を上げた。
『ジェイドの知り合いですか?』
そう彼を見れば、ええ、と頷く。
「それと、確か……ルークだったかい、旅の人」
おや、どうやらルーク様とも知り合いのようだ。
「おばさん。わりぃけど馬車に匿ってくれねぇか?」
「セントビナーに入りたいのですが、導師イオンを狙う不逞の輩が街の入口を見張っているのです。御協力いただけませんか?」
ルークの後にすかさずそう言ったガイを見て、上手いなぁと素直に関心する。
導師イオン、の名を出されたら
「おやおや。こんなことが起こるとは、生誕祭の預言にも詠まれなかったけどねぇ」
「お願いします」
「いいさ。泥棒騒ぎで迷惑をかけたからね」
泥棒騒ぎ?なんの事だろうと首を傾げてる間に、お乗りよ、と話が進み、荷台に乗せてもらうことになった。
全員が乗って荷馬車が発進する。
荷物が乗ってる後ろに乗せて貰ってるので狭いのは仕方ないのだが、もう並ぶ順番考えれなかったのだろうか……。
私とティアに挟まれてガイがひぃ、と震えている。
「エンゲーブの者です。先に馬車が着いてると思いますが……」
「話は聞いている。入れ」
「ありがとうございます」
ローズさんという彼女のおかげですんなりと中に入れ、兵の居ないところで馬車から降りる。
「じゃあ私たちはここで」
「お世話になりました」
「ありがとうございます」
『本当に助かりました』
導師とティアに続き、ローズさんにお礼を告げれば、彼女はいやいや、と手を振った。
「気にしないでくださいよ。それよりお気をつけて」
そう言ってローズさんはその場を離れていった。
「で、アニスはここにいるんだな」
ルーク様が確認するようにジェイドを見る。
「マルクト軍の
「嫌なことを言う奴だな」
ルーク様の素直な感想に、本当にそう、と頷いておく。
まあ、ジェイドが付け加えたのも仕方ない。タルタロスから落とされたらしいし、その後の追尾を巻けたかもわからないし。
「じゃあ、行こうか」
「
「わかってるよ。いちいちうるせぇなぁ」
ティアの忠告にウザったそうに返事するルーク様を見てガイが、なんだ?と声を上げた。
「尻に敷かれてるな、ルーク。ナタリア姫が妬くぞ」
ガイがからかうようにそう言えば、ティアがじろり、と彼を睨んだ。そして、ガイに近寄りその腕をギュッと抱きしめた。
「……うわっ!!」
悲鳴を上げてガイはティアから逃げようとするががっちりとホールドされている。
「くだらないことを言うのはやめて」
「わ、わかったから俺に触るなぁっ!」
涙目になりながらガイが叫び、仕方ないわねというようにティアはその手を離せば、ガイはそのまま地面に倒れ込み身体をガタガタ震わせている。
『……大丈夫ですか?』
自業自得だとは思うが、一応心配なので、上から覗き込むように声をかけてみる。
「だ、大丈夫だから、リュリもこれ以上近づかないでくれっ!」
『あ。そうですね、すみません』
そう言って少し後ろに下がる。
さらに追い打ちをかけるところだった。気をつけないと。
「この旅でガイの女性恐怖症も克服できるかもしれませんね」
なんて、導師が呑気に言うが、逆にもっと酷くなりそうな気もする。
「そろそろ行こうぜ」
この下りに飽きたと言うようにルーク様がそう言えば、そうですね、とジェイドが先行して歩いていく。
その後ろを導師とティアが続いて行く。
『ガイ。早く起き上がらないと、置いていかれますよ』
「あ、ああ。わかってる。わかってる」
ダメージが余程大きかったのか、まだ若干声を震わせながら、ガイはゆっくりと立ち上がった。
「……ふぅ…。もう、大丈夫だ。待たせて悪かったな」
『いえ。行きましょうか』
そう言ってレンガの道を歩く。
この街に入ってからずっと目につく大きな建物の方に向かう。
私とガイがたどり着く頃には、ジェイドが門番に取次をしていた。
「ご苦労さまです。マクガヴァン将軍は来客中ですので中でお待ちください」
そう言われて、ジェイドを先頭にして中に入る。
中でお待ちくださいと言われたがジェイドはずんずんと奥に進んでいき、基地内の一室に入った。
「ですから父上。
「黙らんか!奴らの介入によってホド戦争がどれほど悲惨な戦争になったか、お前も知っとろうが!」
部屋に入るなり長い白髪を後ろで結ったマルクト軍服を来た男と立派な髭の老人がそう言い合いをしていた。
「お取り込み中、失礼します」
突然声をかけられて2人とも驚いたような顔をしていた。
「
「おお!ジェイド坊やか!」
男性の方は、何故ここにと言うような反応をし、老人の方は喜びの表情を見せた。
「ご無沙汰しておりますマクガヴァン元帥」
「わしはもう退役したんじゃ。そんな風に呼んでくれるな。お前さんこそ、そろそろ昇進を受け入れたらどうかね。本当ならその若さで大将にまでなっているだろうに」
「どうでしょう。大佐で充分身に余ると思っていますが」
そんなやり取りをしている後ろで、ルーク様がチラリとこちらを見た。
「ジェイドって偉かったのか?」
「そうみたいだな」
ああ、そうか。自己紹介の時、
『ジェイドは現在は大佐なので、地位的には……えっーと、元帥が1番上の総司令官でそこから大将、中将、少将ときて4番目の地位ですね』
「で、本来昇進受けていたら大将にまでなってるって、……とんでもないな」
まあそれだけの実力があるって事なんだけど、ジェイド自身は上に上がることを目的としていないようだ。
「そうだ。お前さんは陛下の幼なじみだったな。陛下に頼んで
「彼らの狙いは私たちです。私たちが街を離れれば、彼らも立ち去るでしょう」
「どういう事じゃ?」
「陛下の勅命ですので詳しいことはお話できないのですよ。すみません」
「んんッ」
マクガヴァン将軍が、わざとらしく喉を鳴らす。
「カーティス大佐。御用向きは?」
「ああ、失礼。
ジェイドの言葉に、将軍は顔を顰めた。
「あれですか。……失礼ながら念のため開封して中を確認させてもらいました」
「結構ですよ。見られて困ることは書いてないはずですから」
ジェイドがそう言えば、マクガヴァン将軍はデスクから1枚の手紙を取り出してジェイドの方に歩み寄り手渡した。
受け取った手紙を読んでいたジェイドは急にその紙をルーク様の方に向けた。
「半分はあなた宛のようです。どうぞ」
ぱしっと、ルーク様はその手紙を掴み取る。
「アニスからの手紙だろ?イオンならともかく、なんで俺宛なんだよ」
そう言いながらもルーク様は受け取った手紙を口に出して読み出した。
「親愛なるジェイド大佐へ♡すっごく怖い思い思いをしたけどなんとかたどり着きました☆例の大事なものはちゃんと持っていま〜す。褒めて褒めて♪」
なるほど、
「もうすぐ
それでいいのか
「……目が滑る……」
瞳を中央に寄せるルーク様をガイが肘で小突く。
「おいおい、ルークさんよ。モテモテじゃなねぇか。でも程々にしとけよ。お前にはナタリア姫って婚約者がいるんだからな」
「冗談じゃねぇや、あんなウザイ女……」
『ルーク様?』
「あ、やべっ……リュリがいたんだった……!」
慌てて出すがもう遅い。
『ルーク様が浮気をしていると、殿下には報告させていただきますね』
ニッコリと笑った私にルーク様は待て待て!と叫ぶが、待つわけがない。
浮気男は断罪すべし
なにより、あれだけルーク様の心配をなされていた殿下をウザイと言ったことも許せなかった。