外殻大地編
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なんで起こさなかったんだとガイは怒ったが、声掛けても起きなかったんで…触れてもよかったんですか?と言えば、彼は言葉を詰まらせた。
まあ、最初から起こす気はなかったから1回も声なんてかけてないんだけど。
私とガイの使用人組に続いて、ジェイドとティアの軍人組が起きてきた。
ティアは顔色が良さそうだし怪我の具合も昨日ほど悪くなさそうだ。
ジェイドも、任務内容的にここ数日まともに寝てなかっただろうから、多少の休息にはなっただろう。
これからどうするかの提案をジェイドがし始めると、導師とミュウが順番に起きてきた。
ルーク様が起きたのは、ジェイドの提案が終わったあとだった。
『おはようございます、ルーク様』
「…ああ」
起きたルーク様は、少し気まずそうにティアの方を見た。まあ、怪我が心配なのだろう。
「そろそろ出発するわよ」
ティアがそう声をかける。
「…もう動いて大丈夫なのか?」
「ええ。……心配してくれてありがとう」
ルーク様の言葉にティアがそう応えるのを、微笑ましく見ていれば、ジェイドに声をかけられた。
「火の始末は終わりましたか?」
『はい』
きちんと片付けておかないと火事になる、というのもあるが……、
「では、ルーク。今日からガイを先頭にし、私とリュリとティアでひし形に陣形を取ります。あなたはイオン様と共に中心にいて、もしもの時には身を守ってください」
「え?」
ぽかん、と口を開けるルークを置いてジェイドは歩き出す。
「お前は戦わなくても大丈夫ってことだよ。さあ行こうか」
ガイがそう言ってジェイドの後に続いていく。
ティアも導師も歩き出す中、ルーク様だけ立ち止まったままだ。
私は足元にいるミュウを抱え上げ、彼が歩き出すのを待つ。
「ま、待ってくれ!」
「どうしたんですか?」
導師が振り返って1歩、ルーク様に歩み寄った。
「……俺も、戦う」
ルーク様はみんなから少し目線を逸らしてそう言った。
「人を殺すのが怖いのでしょう」
「…怖くなんかねぇ」
ジェイドに問いただされ、答える声は震えていた。
「無理しない方がいいわ」
「本当だ!そりゃやっぱ、ちっとは怖ぇとかあるけど。戦わなきゃ身を守れないなら戦うしかねぇだろ。俺だけ隠れてなんかいられるか!」
「ご主人様!偉いですの!」
私の腕を抜け出して、ミュウがルーク様に飛びつこうとすれば、その頭をガシッとわしずかみにされ止められていた。
「お前は黙ってろ!とにかくもう決めたんだ。これからは躊躇しないで戦う!」
その言葉に、思わずため息を吐いた。
何故、自らイバラの道を進もうとするのか。
止めるべきだろう。
そう思った矢先、ティアがルーク様に詰め寄った。
「……人を殺すということは、相手の可能性を奪うということよ。それが身を守るためでも」
「……恨みを買う事だってある」
ティアの言うこともガイの言うことも最もだから、同意するように頷いてルーク様を見つめる。
「あなた、それを受けとめることができる?」
ずい、とティアに顔を近づけられて、ルーク様は少し後ろに仰け反った。
「逃げ出さず、言い訳せず、自分の責任を見つめることができる?」
「お前も言ってたろ。好きで殺してるわけじゃねぇって」
そう言ってルークは、ティアを避け、みんなの正面に立つ。
「……決心したんだ。みんなに迷惑はかけられないし、ちゃんと俺も責任を背負う」
「…でも……」
ティアが言い渋るのも分かる。
ルーク様は、我儘だし多少横暴な所もあるけど根は優しい。人を殺して平然としていられるタイプではない。
「いいじゃありませんか。……ルークの決心とやら、見せてもらいましょう」
『ジェイド!?』
驚いて彼を見詰める。
「本人がやるというのです」
『しかし……』
今度はルーク様に視線を戻す。
『ルーク様。護られる事は恥ずべき事ではありません』
そう言って、ルーク様の手を取り両手で包む。
『ジェイドやティア、それに私も仕事柄護衛の経験があります。守護する人が増える事は別に迷惑にはなりませんよ』
「……そりゃお前らはそうかもしんねぇけど……。俺が、嫌なんだ、お前らだけに嫌な事押し付けてるみたいで」
やはり彼は優しすぎる。
「だから、俺も戦う」
こちらを真っ直ぐ見てそう言ったルーク様に、もう一度ため息を吐いた。
これはどう言っても折れる気はなさそうだ。
『……分かりました。でも、やはり無理だと思ったら迷わず私の後ろに隠れてください。いいですね』
「……、ああ」
静かに頷いたのを見て、手を離し先程ルーク様に放り投げられていたミュウを助け起こす。
「……無理するなよ、ルーク」
私と入れ替わりでルーク様に近づいたガイがポンと彼の肩を押して、歩き始めた。
地獄への第1歩
向かうは南に見える街