外殻大地編
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空からの奇襲は予期していなかっただろう。
リグレットと呼ばれた女性が落ちるガイの勢いに吹き飛ばされ、隙が出来た瞬間すぐさまガイは傍に居た少年を抱え、ルーク様達の元に走った。
その背に、リグレットが銃を放つが、ガイは剣の刀身を鞘から半分だけ出し、その狭い面で銃弾を弾いた。
「ガイ様華麗に参上!」
剣を仕舞いそう言うガイにリグレットが気を取られてるうちにジェイドが動いた。
「きゃ、」
「アリエッタ!」
先程までライガに指示をしていた少女をジェイドが拘束した。
「さあ、もう一度武器を捨ててタルタロスの中に戻ってもらいましょうか」
くっ、とリグレットはジェイドを睨む。
「おや〜、怖い怖い。しかし、そこに居るのは危ないですよ?」
「何を言って…、」
上に差した影を見て、リグレットはハッと空を見上げた。
『レインバレット』
空から無数のエネルギー弾がリグレットの元に雨のように降り注ぐ。
「くっ、」
彼女はそれをバックステップで何とか避けた。
「上に狙撃手が控えて居ます。まだ抵抗されますか?」
そう言って、ジェイドは見せつけるようしてアリエッタの喉元に槍の先を寄せた。
「ひゃ、」
致し方ない、と言うようにリグレットはその場に持っていた銃を落とし、そのまま
ルーク様の喉元に剣を向けていた兵士も、剣を下ろし、リグレットの後に続いた。
「さあ、次はあなたです。魔物を連れてタルタロスへ」
「イオン様……、あの……あの………」
「言うことを聞いてください。アリエッタ」
少年がそう言えば、大人しく少女はタルタロスの中にライガを連れて入っていった。
ジェイドがティアに指示を出し、
「しばらくは全ての
「ふぅ……助かった……。ガイ!よく来てくれたな!」
「やー!探したぜ。こんな所にいやがるとはなー。それに探しに来たのは俺だけじ『ちょっと、誰でもいいので受け止めてくださーい!!』
そんな叫び声と共に、足元に影が差して一同が上を見上げる。
「ひいっ!!」
いの一番に悲鳴を上げたガイが避け、その上にドンッと落ちた。
『いったたっ。受け止めてくださいって言ったじゃないですか!!!』
「む、無茶言うな!」
『ガイには言ってませんよ。そこのロン毛に言ってるんです』
「おやぁ、言われてますよルーク」
ジェイドが白々しく話題を振れば、ルークは言い返す所ではなく、驚いたように目を見開いていた。
『ルーク様じゃなくて、ジェイドに言ってるんですよ!!』
「ふむ。誰でもいいと仰っていたので、受け止められるなら、リュリも若い男性の方がいいかと思いまして」
「は?いや待て待て、なんで、城のメイドがここにいんだよ!?しかもお前ら知り合いなのか!?」
そう言ってルークは、ジェイドとリュリを交互に指さした。
「ええ、まあ」
『ジェイドは私の兄の親友なんですよ』
「違います。リュリ、気持ちの悪いことは二度と言わないでくださいね」
ニコニコと笑顔でジェイドが否定する。
それによってルークは意味がわからねぇと眉をひそめた。
『照れなくてもいいのに』
「目の治療と共に頭の治療も一緒にすればよかったですか?今からでも治して差し上げますよ」
『ひえ、ごめんなさい』
謝ってルーク様の後ろに回る。触らぬジェイドに祟なしだ。
「で、なんでお前がここに居るんだよ」
『ナタリア様の命令です』
「……あー」
さすがに付き合い長いからか、彼女がわがまま言ったんだなとどこか察した様子だった。
「けど、メイドがこんな所危ねぇだろ」
『ふふ、相変わらず優しいですね、ルーク様は』
「はあ?意味わかんねぇ。なんで俺が優しいになるんだよ??」
「ルークは優しいですよ」
そう言って少年が話に割って入ってきた。
「イオンまで意味わかんねぇ事言うなよな」
『え、』
思わず少年をじっと見る。
「はじめまして、イオンと言います」
『……、はじめまして』
イオン。この子が導師…。
そう言えば、導師は確か行方不明になってたんじゃなかったのか?どうしてこんな所に…。
「ところでイオン様、アニスはどうしました?」
「敵に奪われた親書を取り返そうとして、魔物に船窓から吹き飛ばされて……」
私たちがタルタロスを追っかけ見失ってた間だろうか?
止まって見ていた最中には窓から人が飛び出すのは見ていない。
「ただ、遺体が見つからないと話しているのを聞いたので、無事でいてくれると……」
「それなら、セントビナーへ向かいましょう。アニスとの合流先です」
「セントビナー?」
「ここから東南にある街ですよ」
イオンが教えればルークは素直に分かったと頷いた。
「そこまで逃げればいいんだな」
「そちらさんの部下は、まだこの陸艦に残ってるんだろ?」
「生き残りがいるとは思えません」
…まあ、私たちが通った道も死体だらけだったしね。
「証人を残しては、ローレライ教団とマルクトの間で紛争になりますから」
「何人、艦に乗ってたんだ?」
「今回の任務は極秘でしたから常時の半数──140名程ですね」
「100人以上が殺されたって事か……」
「行きましょう」
今まで黙っていた話を聞いていたロングヘアーの…確かティアと呼ばれていた女性がそう言った。
「私たちが捕まったらもっと沢山のひとが戦争で亡くなるんだから」
……親書に、極秘任務で、彼らが捕まると戦争が起こる……??なんかとんでもないことに巻き込まれてないか、ルーク様。
兎にも角にも、この場を離れようと歩いて東南に向かう。
街道を進むその途中、導師が膝から崩れ落ちた。
「おい、大丈夫か!」
「イオン様。タルタロスでダアト式譜術を使いましたね」
「ダアト式譜術ってチーグルのところで使ってたアレか?」
「すみません。僕の体はダアト式譜術を使うようにはできていなくて………」
辛そうに、言葉を戸切りながら話す導師の背に、ティアがしゃがんで手を添える。
「ずいぶん時間も経っているし、回復したと思っていたんですけど」
「少し休憩しましょう。このままではイオン様の寿命を縮めかねません」
『寿命……』
ジェイドの言葉を受け、皆その場に腰を下ろし始めた。
「リュリ?」
思うところがあり、突っ立ったままで考えていれば、どうしました?と言うようにジェイドに名を呼ばれた。と、言っても同じようにジェイドも導師の守護の為か立ったままなのだけれど。
『あぁ、その、そんなにお身体が弱いのに何故このようなところに、と思いまして』
「ああ、そうですね。このまま同行されるとなると、ふたりにも説明が必要ですね」
そう言ってジェイドは、これまでの経緯を説明し始めた。
「……戦争を回避する為の使者ってわけか」
話の内容を簡潔にまとめるとガイの言うようになる。
行方不明とされていた導師イオンは、戦争が起きるのを目論む大詠師モースに、軟禁されていた所を、マルクト軍の助けを借りて逃げ出した。
そして、その力添えとなったマルクトは、昨今のキムラスカとの局地的な小競り合いが頻発していて、近いうちに大規模な戦闘になるのではと危惧したマルクト皇帝ピオニー陛下がキムラスカに和平条約締結を提案する親書を送ることを考え、中立の立場にいる導師イオンに使者としての協力を要請した、と。
で、ルーク様に関しては、謎の
「でも、なんだってモースは戦争を起こしたがってるんだ?」
ガイが純粋な疑問をぶつける。
「それはローレライ教団の秘密事項に属します。お話できません」
「なんだよ、ケチくせぇ」
導師の答えにルーク様がいちゃもんを付ける。
『ルーク様、組織と言うのはそういうものなんですよ。それに、そもそも戦争を起こしたがってる人間の考えなんてろくなもんじゃないですよ』
金、地位、名声を欲している。大体そんなところだろう。普通ならば。
「理由はどうあれ戦争は回避すべきです。モースに邪魔はさせません」
ハッキリと言い切るジェイドには強い意思が籠っている。
それだけ今回の事をピオニー陛下が重要視している、ということだろう。
は〜、とガイが嘆息した。
「ルークもえらくややこしい事に巻き込まれたなぁ……」
「ところで、あなた達は……」
導師が控えめに聞いてきてきて、ああ、そうだった、とガイと顔を見合わせる。
「そういや自己紹介がまだたっけな。俺はガイ。ファブレ公爵のところでお世話になってる使用人だ」
よろしくと立ち上がってガイと導師が握手を交わし、ジェイドも近づいて握手した。そして、それを見たティアも彼に近づいた。
『あ、』
待って、と声をかける前にガイは仰々しく後ろに背を反らしながら、その場から飛び退いた。
ガクガクと震えるガイのその様子に彼の近くにいる3人は首を傾げた。
「……何?」
怪訝そうな顔をして、ティアが1歩近づけば、ガイはひっ、と短い悲鳴を上げた。
「ガイは女嫌いなんだ」
「というよりは女性恐怖症のようですね」
「わ、悪い……。キミがどうって訳じゃなくて……、その……」
情けない声で、ティアと距離を取りながらガイが話す。
「私の事は女だと思わなくていいわ」
そう言ってティアが1歩近づけば、ガイは更に飛び退いた。
……ティアのその見た目で、女と思うなは無理があると思うな。
ティアが1歩、また1歩、と近づけば、ガイも1歩、また1歩と下がっていく。
さすがに可哀想だ。
『あの、ティアさん?』
声をかければ、彼女は長い髪を揺らして振り返った。
『彼はふざけている訳ではないのよ?本当に女性が苦手なの』
そう言えばティアはガイの方に視線を戻して、じっと彼を見つめた。ガイは両腕で自身を守るように構えたまままだガクガクと震えている。
それを見てティアはため息を吐いた。
「……わかった。不用意にあなたに近づかないようにする。それでいいわね?」
「すまない……」
ティアが離れて行くと、ふぅ、とガイは一息ついた。
「リュリ、助けてくれてありがとう」
『いいえ。貴女が女性に囲まれて使い物にならなくなるのはよく見てきましたからね』
そう返せば、はは、とガイは困ったように乾いた笑い声を上げた。
「それで…、そんなガイと一緒に来られた貴女は?大佐ともお知り合いのようだし、それにその、メイド服って事は貴方もガイと同じ使用人なのかしら」
ティアが不思議そうにこちらを見つめる。
『そうですね。とは言っても私はルーク様付きの使用人ではなく、キムラスカ・ランバルディア王国のナタリア姫付きの侍女をしております、リュリ・グレイ・ネイスと申します』
スカートの裾を摘んでゆっくりとお辞儀をしてみせる。
「…ネイス……?」
どこかで、と導師が首を傾げる。
「おや、
『それこそ、先程話題に出ていた大詠師モースの紹介ですよ』
2人の会話に、ティアと導師が驚いた顔をした。
「すみません、僕がはじめましてと先程挨拶してしまいましたが、もしかしてお会いした事がありましたか?貴女の名前に聞き覚えがあって……」
『いえ、私が
「…そうですか?それなら良かったです。僕は失礼を働いたのではと……」
『大丈夫ですよ』
やんわりと微笑み返せば、導師はよかったと胸をなでおろした。
「……兄」
ぽつり、とティアが呟いた。
『ああ、そうでした。兄と言えば、ヴァン謡将もルーク様を探しに来ていますよ』
ルーク様が喜ぶだろうとその名を口にすれば、案の定ルーク様は嬉しそうにその名を反復した。
「ヴァン
「ああ、そうだぜ。俺とリュリは陸づたいにケセドニアから。グランツ閣下は海を渡ってカイツールから探してる」
「兄さん……」
ティアが険しい顔をしてまた呟けば、ガイがん?と首を傾げた。あれ、彼は知らなかったのか。私はヴァンからルークと一緒に飛ばされたのは妹だと直接聞いていたが…。
…ん。
「兄さん?兄さんって…?」
『ジェイド、11時の方角から5名確認』
そう言ってスカートの中のショットガンを握れば、ジェイドも早々に何も無い空間から槍を出現させた。
「やれやれ」
2人の様子にティアとガイも察して武器を手に取る。
「なんだ?どうしたんだ…?」
困惑したように座りっぱなしだったルーク様も立ち上がる。
「ゆっくり話している暇はなくなったようですよ」
追尾兵
皆それぞれ武器を構えた。