外殻大地編
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早朝ケセドニアを出発して、徒歩で街道を魔物を倒しながら進んでローテルローに到着した頃には、私たちより後から出発したであろう荷馬車が何台か止まっていた。
橋の前にマルクトの軍人さんが立って旅券の確認をしているようだ。
1番後ろに並んで待って、自分たちの番で、旅券を見せた。
「…キムラスカから?」
怪訝そうな顔をしたマルクト兵に、はい、と頷く。まあ、敵国の人間が何しに行くんだって思うよなぁ。
「何をしに」
『主人の命でエンゲーブまでお使いです』
「お使いぃ?」
じろーっと、私とガイを上から下まで見下ろす。
「確かに使用人みたいだが、……一般人が歩いてエンゲーブまでか?」
「おいおい、兵士さんよ。野暮なことしてんじゃないよ」
怪しいと言わんばかりに見てくる兵士にそう答えていれば、後ろからおじさんが割り込んできた。
『あら、』
「よう、アンタたちだろ。領事館に渡し船を出すように掛け合ってくれたの。助かったぜ」
そう言ったのは昨日、荷台に乗せてくれた荷馬車のおじさんだった。
「領事館に掛け合ったって……。確か、上から、薄水色髪の貴族のお嬢様とそのお供の金髪の男性だと聞いてるが…、」
そう言って兵士は、私とガイの髪色を見て、あっと呟いた。
「確かに一致するが…。いや、しかし、メイド服を着ているではないか!」
『あー…これは……』
「馬鹿だなアンタ」
そうおじさんが言って、兵士はなんだと!?と怒りを顕にする。
「若い男女が2人でキムラスカからマルクトに辻馬車も使わないで行くなんて、どう考えたって、愛の逃避行だろう!」
「『はい!?』」
思わず驚いて、ガイと言葉が重なる。
「見たところ、お嬢様がメイドに扮して屋敷から2人で逃げてきたってところだろ」
なっ!とおじさんが笑顔でそう言う。
「え、いや……」
『私達は、そういうのでは…』
「いい、いい。隠さなくったって!俺にゃあ分かる!」
いや、何も分かってないんですけど。
参ったな、どうする?と言いたげな視線をガイが送ってきた。
いや、どうしようか。おじさんの話に乗っかった方がいいのかな。
「そう言うわけだ兵士さん。早く通してやんな!」
「お嬢様と使用人の駆け落ちだって?くっ、俺はそういうのに弱いんだ!!」
ええっ。嘘でしょ。
「マルクトはいい所だ。お前さんらを受け入れてくれる所があるはずだ!お前、彼女の事幸せにするんだぞ!」
そう言って兵士は私達に旅券を返し、渡し船への道を開けた。
あっけらかんとしている私とガイの肩をおじさんがポンと叩いた。
「幸せにな!」
あははは……と2人して乾いた笑い声をあげ、とりあえずおじさんにお礼を言って渡し船に向かった。
渡し船は、ローテルロー橋から少し離れ川辺りから出発した。
爆発された橋の先からだと船の高さ的に接岸出来ないからだ。
渡し船は、馬車が乗れるくらいだから結構大きいからやっぱりマルクト軍の物資運搬用のものなのだろう。
「リュリ顔色が悪いが、大丈夫かい?」
『え、ええ……』
「船酔いか?」
そう聞かれて首を振る。
『いえ。…私、船、苦手なんです』
「あ…、泳げないって言ってたな」
昨日聞いた事を思い出したガイの言葉に、はい、と頷く。
『子供の頃に、船の上から落ちて溺れて、実はそれ以来、水は苦手です』
「そうだったのか。けど、ケセドニアまでの船路では、平気そうに見えたけど」
『あれは、ヴァンが海のそばに行く時はエスコートしてくれてたので。それにほとんど室内に篭ってましたから』
「あー……ヴァン、か」
確かに、とガイは船に乗り込む時も降りる時もヴァンがリュリの手を引いてるのを見た事を思い出した。
「悪いな」
急に謝ったガイに、はい?と首を傾げる。
「いや、俺は、手を引いてあげられないからさ」
『ああ。それはしょうがないですよ。私が海が怖いように、ガイも女性が怖いのですから。無理なものは無理だと分かります』
「そうだけど、分かるからこそ、な。手を引いてあげれればと思うんだよ。君に怖い思いをさせたくないからね」
『…なるほど。城のメイド達がガイにキャーキャー言ってた意味がわかりました』
ガイは、へ?と首を傾げる。
『ガイはタラシですね』
「え、いや、そんなつもりはないんだが?」
なるほど。
天然タラシ
罪作りな男ですね。