2019年
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『トリックオアトリック!!』
そう言って水津が俺の前へと現れた。
「それを言うならトリックオアトリートだろ」
『知ってるよ』
俺のツッコミにそう言った水津は、既に大量の菓子を抱えていて、許可も取らず人の机の上にその菓子を置いた。
「んだよ、既にそんなに貰ってんならいらねぇだろ」
そう言いつつも、一応用意してた菓子を机から取り出す為にゴソゴソと漁る。
昨日、マックスと水津が2人でコソコソと話をして居るのを目撃し、イタズラを考えてるのを知っていたので、一応用意して置いた。こいつらの考えるイタズラなんてえげつないに決まっている。
手に取った菓子を、ほらよと差し出す。
『ちっがーーーう!!』
そう言って水津はバンッと机を叩いた。
『違うんだよ。私はイタズラがしたいの!!トリックオアトリックって言ったじゃん!?イタズラさせろ!!なんでみんな菓子を持ってんの!!!』
やだやだと机の前にしゃがんで菓子の山に頭を突っ込んでいる水津を見て何言ってんだこいつ、と思う。
「そりゃ、イタズラが嫌だからに決まってんだろ」
『染岡ぁ...』
水津は菓子の山から頭を出して瞳をうるうるとさせて下から俺を見つめる。
その様子にヒクリと口角が引き攣る。こいつ...。こういう事をわざとやる節があるからな。
「菓子やったろ」
そう言えば、やはりただの猫かぶりだったようで水津はチッと舌を打った。
『菓子なんぞいらーーん!!甘いもの苦手じゃ!!女子供が皆甘いもの好きと思うなよ!!』
「いや、それだけ貰っといて何言ってんだよ」
『みんな何気に優しいからそんな甘いもの好きじゃないの知ってて、ビターとか甘くないの用意してくれてるんだもん。そんなんありがとうって貰うじゃん?』
「じゃあ、俺からのも貰って大人しくしとけよ」
俺が用意したのも、そんなに甘くないやつだ。いやまあ別にこいつにやる為だけに買ったわけではないけどな。マックスとか半田とか他の奴らにやる分も一緒のやつだし、個人に食って美味かったやつってだけだ。
『やだやだ、イタズラがしたいんだよー!!』
「いやもうこれが俺への嫌がらせだろ」
『嫌がらせとか酷い...私は純粋にイタズラがしたいだけなのに...』
グズグズと泣き真似を始める水津に、はあ、とため息をつく。
「...ちなみに何する気だよ。昨日マックスとコソコソしてたの知ってんだぞ」
『あー、そうなん?』
泣き真似をやめて、けろっとした態度になる水津は、そうだねぇと昨日の事を思い返すような素振りを見せた。
『マックスが言ってたのは、勝手にゲームのセーブデータ消すとか』
「悪質じゃねーーか!!イタズラの範囲超えてるわ!!」
『うん、さすがにそれは私もゲーマーだからさ、したらシバキ倒すってマックスには言っといた。あとはビリビリペンとか』
「それもまた嫌なやつだな...」
『まあ昨日の今日じゃペンの購入が間に合わないからナシになったけど』
水津は心底残念そうな顔をしているが、こちらとしてはナシで助かる。
『まあ、そんで無難なイタズラといえば擽りだよね〜って話になったかな!』
そう言いながら両手をワキワキとさせる水津に対し椅子を後ろに引いて距離をとる。
「おい、まさか...」
嫌な予感がして立ち上がる。
『擽らせろ!!』
水津が両腕を伸ばしてきたが、机を挟んでいた事により捕まらず助かった。
「ざっけんな!!嫌に決まってんだろ!!」
そう言って、教室の出口目指して全力で走り出す。
『待ちな!!』
逃げる俺に対し水津は腕の力を使って跳び箱のように机を飛び越えて、容赦なく追ってくる。くっそ、この女、運動神経おかしいんだった。
廊下を全力疾走する。サッカーの試合でもねぇのになんでこんな全力で走んなきゃなんねーんだよ。
水津は、はーっはっはっはっーと悪役さながらの笑い声を上げながら追っかけてくる。
『待ちたまえ、染岡!!』
「誰が待つか!!」
階段を駆け下りると、あろう事か水津はその階段の段差を無視して飛び降り、そして容赦なく俺の背を踏みつけた。
「ぐぇっ」
前のめりに床に突っ伏した俺の上に水津が乗っかっている。
「お前...!!危ねぇだろ!!」
『ふーん、そんな口聞いていいのかな〜』
「は、お前っ...」
脇腹に水津の指先が触れる。
「...くっ...て、めぇ...!!」
こしょこしょと指先が動いて俺の脇腹を擽っていく。
「...ふ......ッ......や、め......!!」
『.........』
擽っていた水津の手がピタリと止まる。
「......はあっ...」
飽きたのか水津は、ゆっくりと俺の上から退いた。
「なん、なんだよ......」
肩を息をしながら、床から立ち上がって水津を見ると、偉く真剣な顔をしていた。
「...どうした?」
『いや、随分と色っぽい声だすなぁと』
「はあ!?」
まじまじと何言ってんだこいつ。
相変わらず訳分からん女だ。
『いやぁ、いいものを見せてもらった』
それじゃあ、そう言ってさっさと自分の教室へと帰ろうとする水津の腕を掴む。
「おいコラ、好き勝手やりやがって。こっちはまだすんでねぇぞ」
『えっ?なんのことかな?』
惚ける水津の腕を逃げないように力強く握る。
今この状況で、こいつが菓子は俺の机の上に全部置いてきたのを知っている。
「トリックオアトリート」
そういえば水津は青い顔をした。
『いや、あの、教室にあるの全部あげるよ』
震えた声で言う水津に、いらねぇと返す。
「つうか、お前、俺は菓子やったのに関係なくやっただろうが」
そう言って水津を掴まえている手と反対の手で、こいつの脇腹を擽る。
『ちょっ...ひゃっ、ん、やだっ、私、くすぐったいの、むり...んッ』
ひいひい笑いながら身をよじり目に涙を浮かべ出した水津を見て思わず手を離す。
あー......さっきこいつが言ってた意味が分かった。
『は...っ、も、もういいの...?』
掴んでいた腕も離せば水津は、呼吸を整えながらこちらを見つめた。
「...ああ」
直視することが出来ず顔を反らせば水津は俺を見て、ああ、なるほど、と呟いた。
『染岡、顔真っ赤。何想像したん?』
先程までの様子と打って変わってニヤニヤと笑いだした水津にチッと舌打ちする。
「うるせー」
ムカつくニヤつき顔にデコピンをかました。
イタズラもほどほどに
こいつらこれで付き合ってないとかわけわかんないよな、と一部始終を見ていた半田がひとり呟いていた。