2019年
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「梅雨さん!かき氷やろう!!」
『うわ近』
元気いっぱい、外のお日様に負けないほどの輝かしい笑顔で、いきなり目の前に現れた明日人がそう言った。
この夏の暑さにやられ、ソファにでろーんと寝っ転がって居たので、明日人の顔の近さにビビる。
『ちょっと起きるから離れて』
「はーい」
よっこいしょと起き上がると、明日人の他に、その後ろに氷浦も居て、その腕にペンギンの形をしたかき氷機が納まっていた。
『で、かき氷だっけ...?』
太陽サンサン、夏真っ盛り。
冷たくて美味しいかき氷は最高じゃないか。
『やろう!』
「やったぁー!!」
可愛らしく喜んだ明日人と氷浦を連れて、合宿所のキッチンへ向かう。
『しかし、偉く可愛いかき氷機だね』
「うちの祖母が送って来てくれたんです!」
尋ねると氷浦はニッコニコの笑顔でそう言った。
『あー氷浦、おばあちゃんっ子って言ってたもんね』
「そうです」
大事そうに抱えている所を見ると、よっぽどおばあちゃんが好きなんだなぁ。
キッチンについて、調理台にそのかき氷機を置く。
『氷浦、コンセント差しとい...ってコレ手動か?』
「グルグル手で回す奴ですね」
よく見ればペンギンの頭にハンドルが付いていた。
最近のは割と電動化されているものが多いので、珍しいな。
しかし、ボタン長押しするだけでできるやつに慣れているので、些かめんどくさいな。暑いし極力頑張りたくない。
『...回すのは明日人に頑張ってもらおうかな』
「任せて!!」
笑顔でサムズアップしてくれたので、期待して任せることにしよう。
冷凍ストッカーから氷を取り出して...。
氷は飲み物に入れる用にも勿論の事、アイシングにも使うので合宿所では大量に作ってあるので多少取っても困らないだろう。
「あといるのはお皿とスプーンですかね」
『そうね』
食器棚から氷浦が深皿とスプーンを持ってくる。
これで準備万端...、じゃないな。
『ねぇ、シロップは?』
「あ!」
忘れてた!と明日人が叫ぶ。
「そうか、俺もすっかり忘れてました」
氷浦もか。
それでよくかき氷しようと言ってこれたな?ほんとにかいた氷じゃないか。
とりあえず氷を冷凍ストッカーに戻す。
『2人とも買い物行くよ』
「「はーい」」
財布を取って、近所のスーパーに出かけた。
30分後スーパーから帰ってきた、明日人が持つエコバッグはパンパンだった。
購入したものは、少量サイズのシロップのいちご、メロン、レモン、ブルーハワイの4つ。それと練乳。
それからりんごとブドウ、缶詰の黄桃とさくらんぼ、パウチのミカン。
大量の果物購入は、明日人が田舎では食べられないインスタ映えスイーツが食べてみたいと言ったのが発端だった。
それなら、やろうぜ!と後輩に甘々な梅雨は自腹を切って購入した。あとは自分が食べたかったというのもある。
今度こそ冷凍ストッカーから取り出した氷をペンギンの頭に入れて、ハンドルをセットする。
それから大きくくり抜かれたペンギンの胴体に深皿をセットする。
『よし、明日人ゴー!』
「はいっ!うぉおおおおお!!」
明日人はハンドルを掴んでグルグルと力強く回していく。
ゴリゴリと氷は削れてお皿に白い山を作っていった。
その横で、りんごをナイフでカットして兎さんを作っていく。
『氷浦〜、缶詰開けといて』
「わかりました」
氷浦はまず、さくらんぼの缶詰を手に取って上についていたプルタブを引っ張って開けた。
その後、黄桃の缶詰を手に取って、上に向けたり下に向けたりしている。
『なにしてんの?』
「いや、これ開けるとこなくて」
『いや、缶切り使うんだよ。ちょっと待ってて』
ナイフを1度鞘にしまって、流し台の引き出しを開ける。
『あったあった。はいコレつかって』
引き出しの中にあった三徳缶切りを手に取り、氷浦に手渡すと彼はそれをまじまじと見て首を傾げた。
「これ、どうやって使うんですか?」
『嘘やろ...。これがジェネレーションギャップか...』
そうか、今の子はこのプルタブ式の缶詰しか知らんのか...。
「ジェネレーションギャップって、水津先輩1学年しか違いませんよ」
『ははは...』
うるせー!!こちとら精神年齢はアラウンドサーティーなんだよ!!
『とりあえず、貸してみ。コレはね、この部分を缶の縁に引っ掛けて、ここが刃になってるでしょ?これを刺して、奥に手前にってギコギコ引いて使うの』
「へぇ。初めてみました」
感心したような氷浦の声に、悲しくなって、無言で缶を開ける。
『はい、出来たよ』
「凄いですね。水津先輩は物知りだなぁ」
『うるさいそれ以上何も言うな』
ジェネレーションギャップに殺される。
「ええー?」
なんかよく分からないけど理不尽じゃないか?と氷浦は不満の声を漏らした。
「水津さん!氷浦!!とりあえず2人の分出来たよ」
そう言って明日人は目の前にどん、どん、と氷の山を2つ置いた。
『おお、早いね』
「後1つだな」
「うん!溶けるから2人は先にトッピングしてていいよ!!」
「いや、俺が代わるから明日人はトッピングしろよ。ずっと回して疲れただろ?」
「いいの!?じゃあ、交代しよ!!」
氷浦と明日人は立ち位置を入れ替えて、作業を代わる。
『おつかれ。まずは...明日人はシロップどれかける?』
「えー、どうしよう〜」
赤黄緑青と4つ並んだシロップをじぃと見つめて明日人は悩む。
「梅雨さんはどれにしますか?」
『私は、そうね...王道のいちごにしようかな』
「いちごかぁ...!ん〜、どうしよう。全部かけてみたいんだよなぁ」
『じゃあ、全部かけてみる?』
そう聞けば、明日人はシロップを見つめていた顔をバッと上げた。
「え、いいのかな?昔、家でやろうとしたら母ちゃんに怒られたけど」
まあ普通の親なら食べ物で遊ぶなって怒るわな。けど、ここには叱る大人ははいない。
え?さっきアラサーとか言ってた?知らないなー?私は今、中3だし??
『いいんじゃない?どうなるかやってみたいんでしょ?』
「うん!じゃあ、全部がけにする!!」
『いちごだけ先にかけさせてね』
そう言って先にシロップのボトルを取れば、どうぞー!と元気に返事をくれた。
「じゃあ俺は他のから...」
私は自分の氷の山に、いちごシロップをかけていく。
白い山が赤く染まっていく。その上から練乳をグルグルとかけていく。
まあ、本来はこれで完成だ。
「それはそれでもう美味しそうですね」
そう言って、自分の分の氷の山を持って、氷浦がやってきた。
「うわ、明日人、お前...それはやばいな」
全部がけの明日人の氷を見て、氷浦が目を見開く。
「氷浦もやる?」
「いや、俺はブルーハワイでいいや」
そう言ってブルーハワイのシロップを取る氷浦の横で、明日人の氷の山見てみた。
『意外と綺麗に出来たね』
上から全部バーッとかけるのではなく4面にかけてあるので、色も混ざってなくて綺麗だ。
「えへへ、虹みたいになった!」
『そうね。じゃあ、あとはフルーツで飾り付けね』
「はーい」
各々、好きなフルーツを取って、かき氷の上に乗せていく。
『でーきた!』
「俺も!」
「俺も出来た」
それぞれのフルーツかき氷が完成して、食堂に移動する。
『それじゃあ、』
「「『いただきます!』」」
スプーンで掬って口に運ぶ。
『ん〜、美味しい〜!』
「あっ、キーンってきた」
あいたたた、と明日人が頭を押さえる。
「一気に駆け込むからだぞ」
やれやれと氷浦が呆れて明日人を見ると、明日人まだうー...と頭を押さえている。
「けど美味い!」
「え、その全部がけでか?」
「うん普通に美味しいよ」
『だろうね。シロップって全部同じ味らしいもんね』
えっ!と明日人と氷浦がこちらを見てきた。
「そうなの!?」
『うん。香料と色が違うだけで味は一緒らしいよ?目閉じて鼻つまんで食べたらどれか分からんらしい』
「へぇ、水津先輩はおばあちゃんみたいですね」
真剣な顔で言う氷浦に、は?と思わず聞き返す。
「あ、いえ、おばあちゃんの知恵袋みたいに知識があるって意味で...」
『ああ、そう。てっきり、君もかき氷機で削られたいのかと思ったよ』
あははは、と笑えば、氷浦が、ひっ、と声を上げた。
「せ、先輩目が笑ってないです」
本気で思ったからね。
「ねぇねぇ!梅雨さん見て!」
つんつんと明日人が肩をつついてきて、振り返って見ると明日人はべぇーと舌を出していた。
『どうしたの?』
「ほれらにいろひはってる?」
『はい??何て?』
「これ、なに色になってる?って言ってますね」
流石名探偵氷浦。明日人がうんうんと頭を振っている。
『えー、溝鼠色?』
「溝鼠って...」
「全部の色が混じるとそうなるんだ!すごいね!!」
キラッキラの笑顔で明日人が楽しそうに笑っていた。
作って食べて、かき氷で学ぶ夏。