2020年
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同じイタリアリーグで活動している鬼道から練習後、急に家に寄ってもいいか、と聞かれた。
まあ、時々家で一緒に飲むことがあるから今日もそれかと思い二つ返事で返したら、誕生日祝いにいい酒を手に入れたんだと鬼道は高そうな箱に入った酒を掲げて見せた。
そこでふと、スマホの電源ボタンを押して画面に表示された日にちを確認した。5月24日。俺の誕生日だ。
「忙しくてすっかり忘れてたな」
そう言えば、鬼道に笑われた。
そんな彼と共に選手宿舎として宛てがわれたアパートに帰れば、なぜだか俺の部屋に明かりが灯っている。
泥棒か?とも思ったが、こういった時いち早く気づきそうな鬼道が何も言わずに、さあ入れと言った目で見てくる(っつってもサングラスしてるからわかんねぇけど)から恐らく同じチームの奴らと手を組んでサプライズでも仕掛けてるんだろうと、ドアノブに手を取った。
やっぱり鍵もかかっていなくて、どうやって開けたんだよというツッコミを胸に抱いたままドアを引いて、家の中に足を踏み入れた。
『おかえりなさい!!』
久しぶりに聞く日本語と共に思いっきり何かに体当たりされて、慌ててそれを抱きとめる。
「梅雨!?お前、なんで...?」
日本にいるはずの彼女が、ここにいることに驚き聞き返せば、奥の部屋から廊下に顔を出した男が、ふふ、と笑い声を上げた。
「そんなの決まってるじゃないか。ね、梅雨さん」
「吹雪まで、」
驚いていれば依然として梅雨は俺の腰に抱きついて居て吹雪に、ね〜とニコニコと笑いながら返している。
それから、せーの、と梅雨が掛け声を上げた。
『お誕生日おめでとう染岡』
「お誕生日おめでとう染岡くん」
せーの、と言った割にはバラバラになったその祝いの言葉に、素直にありがとうな、と返す。
「つーか、鬼道知ってたのかよ」
2人の登場に全くと言っていいほど驚いてない鬼道を見れば、彼は口元に弧を描いて嗚呼と頷いた。
「2人を空港まで迎えに行ったのは俺だからな。どうしてもサプライズがしたいと駄々を捏ねられてな」
「あー」
この2人に駄々を捏ねられたら流石の鬼道でも断れないだろうな。
「とりあえず上がろうぜ。ほら、梅雨」
いつまで抱きついてんだよ、と引き剥がそうとすれば、イヤイヤと首を振られた。いや、子供かよ。
と、いうか...随分と酒臭い。
「おい、梅雨酒飲んだか?」
『うん?イタリアのワイン美味しいね〜』
「だいぶ酔ってるな」
鬼道が梅雨を覗き見れば、彼女はヘラヘラと笑いながら酔ってないよと答えている。...酔ってるな。
「吹雪」
じろりと吹雪を睨みつければ、彼はパーティーの準備できてるよ!と言って慌てて廊下に出していた頭を引っ込めた。
「ったく...。結構前から飲んでたな」
呆れながら、剥がれない梅雨を剥がすのは諦めて部屋に連れてはいる。邪魔すると律儀に言って鬼道も後ろから付いてくる。
部屋の中に入れば、勝手に好き勝手に飾り付けられ、テーブルには美味そうな料理がたくさん並んでいる。
「染岡くんはここね!」
と吹雪に言われるがままソファに座らされる。梅雨も一緒に座るか?と思ったが、意外にも彼女はあっさりと抱きついていた手を話して、キッチンの方に向かった。
「染岡くん寂しそうな顔してる」
「うるせぇな」
「ボクが隣に座ってあげようか?」
「要らねぇよ!お前も酔ってんな!?」
ホントにコイツらいつから飲んでんだよ。
『楽しそうだね?』
そう言いながらグラスを2つ持った梅雨がキッチンから戻ってくる。
『はい、鬼道と染岡のね』
そう言ってグラスを渡される。
「料理は水津が作ったのか?」
鬼道の問に梅雨はそうだよ、と頷いた。彼女の手料理は美味いし、誕生日祝いにわざわざ日本からきて、作ってくれたとなると、嬉しい。
『チーズと生ハムは買ってきた物だけどね。久々に日本食も食べたいでしょ?と思って。ジャパニーズおつまみは私作ですよ〜。坊っちゃまのお口には合わないかもしれませんが??』
「そうか。俺は昔から割とお前の作る食事は好きだがな」
煽ったつもりが、ふ、と笑う鬼道にやられて梅雨はぐっ、と呟いてダメージを受けている。
『くそっ、可愛い事言いやがって』
「ボクも梅雨さんの料理好きだよ。ドカ盛で男の料理って感じでいいよね」
『ぶっ飛ばすぞ?』
「なんで!?褒めたのに...梅雨さんボクには当たり強くない?」
「昔からだろ」
「今更じゃないか?」
俺と鬼道がそう言ったら、吹雪はブーと口を尖らせた。
梅雨が吹雪に対して強気に出るのはいつもの事だが、今のは吹雪が余計な事をいったからだと流石の俺でも分かる。梅雨の料理は美味いで止めときゃよかったのに。
梅雨は梅雨で言われたことを気にしてか、そんなに男らしいか?とブツブツ呟いている。
ここで、美味けりゃなんでもいいなんて言ったものなら俺が梅雨にぶん殴られるのも目に見える。
それは分かってはいるが、鬼道が先にさらりといいセリフを言ってのけてしまってハードルが上がっている。そもそも誰かを素直に褒めるなんて俺の柄じゃない。
「...、梅雨『よし!乾杯しようか』
意を決して声を掛けた途端、梅雨がそう言ってグラスを掲げた。
「あ、おう...」
つられてグラスを持ち上げれば、ポンと肩に手を置かれた。
ドンマイと口パクで吹雪が言ってきて、梅雨じゃねーけどぶっ飛ばしてやりたくなった。元はお前が余計な事言うからだぞ。
「ほら、鬼道くんも」
「ああ」
吹雪に急かされ鬼道もグラスを持ち上げる。
「それじゃ、梅雨さん」
『うん。せーの』
『染岡お誕生日おめでとう!』
「染岡くんお誕生日おめでとう!」
「おめでとう」
相変わらずせーのと言ったのに合わない、おめでとうの後カンパーイと梅雨が叫んでグラスのぶつかる音が響いた。
飲んで食って4時間くらいで、梅雨はすっかり酔いつぶれてしまって机の上に伏せる形で寝てしまった。
恐らく俺が帰宅する前から吹雪と飲んでいた様子だったし、豪酒の吹雪のペースで飲んでたらそりゃあ潰れるだろ。
鬼道もちびちび飲んでいるが、練習疲れとあとは財閥の仕事なんかもしてるからその疲れで眠いのか、半分欠伸を噛み締めながらと言った感じだ。
「そろそろお開にするか?」
「ん、そうだな...水津も潰れてしまったしな」
迎えを呼ぶかと鬼道はスマホを弄り出す。
「おい、吹雪。お前らどこにホテル取ってんだ?」
「え?取ってないよ」
梅雨を送ろうと思って聞けば、キョトンとした顔をで吹雪にそう返される。
「は?」
「ボクも梅雨さんもホテル取ってないよ。染岡くん家に泊まろうと思って」
ニコニコと笑う吹雪に、はあ、とため息を吐く。
「客室なんかねーぞ。寝んならお前床で寝ろよ」
そう言えば吹雪は、えー、と非難の声を上げる。
「なら、吹雪はウチに来るか?」
「鬼道くんち?」
そうだなぁ、と呟いて吹雪は潰れた梅雨を見つめて笑った。
「そうだね。2人のお邪魔になりそうだしボクは鬼道くんちにお世話になろうかな」
そう言って吹雪が立ち上がれば、じゃあ帰るかと鬼道も少しふらつきながら立ち上がった。
「大丈夫か?」
「ああ。数分もしたら迎えも来るだろう」
表で待つと、玄関に向かって歩き出す鬼道に慌てて吹雪が自分の荷物を持って駆け寄る。
そんな後ろを着いて行って玄関で見送りをする。
「染岡」
「なんだ?」
「付き合っているとはいえ、同意なくするのはダメだそ」
鬼道の唐突な言葉に思わず、は?と返す。こいつもだいぶ酔ってんな。
「わかってるつーの」
「染岡くん。ボクと梅雨さん、明日イタリア観光して回る予定だから無理させないでね」
「なっ、うるせーな!」
ニタニタ笑ってるこいつは恐らく酔ってないし、なんで勝手に人の彼女と観光する気でいんだよ!クソ腹が立つ。
「いいからとっとと帰れ」
しっし、と手で払えば、2人はハハっと笑ってまた明日な、と鬼道の迎えに来た車に乗って行ってしまった。
「ったく。余計な事言いやがって」
とりあえず梅雨をベッドに寝かせるか、と部屋に戻って酔いつぶれている彼女を抱き上げる。
寝室に運んで、ベッドの上に置いてそっと手を離したら、俺の首の後ろに腕が回されそのままベッドに引っ張られた。
胸元に頭を埋める形になり、ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。
「っ、お前、起きたのか」
『んー、実はお開きにしようかって話ぐらいから起きてた』
「はあ?なんで寝たフリしてんだよ」
『だって、早く2人っきりになりたかったし』
そう言われて、されるがままにしていた状態から梅雨の背に腕を回して抱きしめ返す。
「お前、やっぱ今日はだいぶ酔ってんな」
『酔ってないよ』
「酔ってんだろ」
いつもよりだいぶん甘い。普段の梅雨じゃこんなにベタベタしてこない。
『酔ってないって言ってんじゃん...。染岡のばーか』
「なんだよ」
バカはねぇだろバカは。
『......アホ、鈍感、マヌケ』
「お前さては喧嘩売ってんな?」
『売ってない。...、寂しかっただけ』
そう言って更にぎゅっと抱き締められた。
「お前......」
あんまり可愛いこと言うなよ。
はあ...と思わず大きなため息を吐く。
『今、めんどくさいと思った』
そう言って怒ったように、腕を緩めて梅雨が俺を睨む。
「思ってねぇよ」
『嘘だ』
むくれる梅雨の頭を俺の胸元に引き寄せる。
『大丈夫だと思ってたんだよ。今はスマホもあって連絡取れるし、秋ちゃんなんか一ノ瀬とずっと遠恋してるし。だけど、この間なっちゃんと円堂ん家行ったらいいな、って思っちゃって』
「梅雨...」
『ちょっと寂しくなったから、来ちゃった』
ごめんね、なんて言う梅雨になんで謝んだよ、とその頭を撫でる。
「...お前が来てくれて、めちゃくちゃ嬉しかったけどな」
『そめおか、』
「...俺も、まあ、その、寂しかったしな」
途切れ途切れにそう言えば、梅雨は嬉しそうに俺の名を呼んで抱きついてきた。
「なあ、一緒に住むか?」
『え?』
「...本当はもっとちゃんとした時に言いたかったんだけどな」
一度梅雨を腕から離してベッドから降りる。
『染岡?』
ベットのサイドテーブルの引き出しを引っ張って、小箱を取り出す。
それの蓋を開けて、ベッドの上に起き上がった彼女に向けてキラリと光るリングを差し出した。
Sposiamoci!
君の誕生日なのに私が貰うなんて。そう言って梅雨は笑った。