2021年
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秋ちゃんに一緒に行かない?と誘われた花火大会。無論二つ返事でいいよ、と返して今日に至る。
秋ちゃんが浴衣で行くと言っていたので合わせて私も浴衣を用意した。
紺色の生地にピンクの花や手毬柄があしらわれている。
髪も結いて簪で止め、履きなれない下駄を履いて、財布とスマホを入れた巾着袋を持って家を出た。
集合場所に向かえば秋ちゃんが既に待っていた。
『ごめん!待たせた?』
「ううん。私も今来たところよ」
そう言って笑う秋ちゃんは、花緑青の生地に百合の花が描かれた浴衣を身にまとっていた。洋紅色の帯が浴衣の鮮やかな色と彼女の愛らしさを引き立てていた。
『天使か……?』
私なんかが、こんな美少女と2人っきりで出かけていいのかしら?世の男どもに後ろから刺されそう。
「えっと…梅雨ちゃん…?」
秋ちゃんが困惑した様子で見つめてきた。いかんいかん。今日は秋ちゃんをエスコートするんだからしっかりしろ。
『いや、うん。秋ちゃん浴衣凄い似合ってるよ』
「ありがとう。梅雨ちゃんも凄く綺麗よ!」
ふんわりと笑ってそう言う彼女は、まさに女神だった。
河川敷から見えるんだよ、と秋ちゃんに教えて貰って向かえば既に人でごった返していた。
屋台も出てるし、とりあえず何か食べたりする?と秋ちゃんと相談していると後ろから声をかけられた。
「ねぇねぇ、君たち2人だけ?」
そう言って来たのは、チャラそうな高校生くらいの男子2人だった。
「俺らも2人なんだけど、良かったら一緒に花火みない?」
なるほど、これが俗に言うナンパと言うやつか。初めてあった。秋ちゃん程の美少女を連れているとこういうことがあるのか。
『いえ、結構です。行こう、秋ちゃん』
そう言って彼女の手を取れば、待った待ったと反対の手を掴まれた。
『ちょっと…!離して!』
いきなり触んな!キモイんだけど。
「女の子2人だけじゃ危ないし、俺らと行こうよ」
ね?と笑いつつ男はがっちりと右手で腕を掴み左手で今度は私の肩に手を置いた。
「梅雨ちゃん……」
どうしよう、と秋ちゃんが震えた様子でこちらを見ている。
『知らない人に着いて行ってはいけないと言われてますので』
「えー、真面目なんだね。秋ちゃんと梅雨ちゃんって呼んでたよね〜?俺ら、カスヤとクズオってんだけど、これでもう知り合いだよね」
『はあ?』
頭湧いてんのか??
こうなったらしょうがない。悪目立ちするが、大声で悲鳴でもあげるか……。
そう思った矢先だった。
「おい」
後ろからドスの効いた声が聞こえた。
顔を後ろに向けたら見知った顔だった。
「何してんだアンタら」
『染岡!』
「豪炎寺くん!」
たまたま2人も花火を見に来たのだろうか、同じサッカー部の2人がそこにはいた。
「うちのマネージャーたちになんか用かよ」
恐ろしい顔で睨みを利かす染岡と静かに眉を釣り上げている豪炎寺に、チャラ男2人はチッ舌打ちした。
「んだよ、彼氏持ちかよ」
「それならそうと早く言えっつーの」
そう言って、チャラ男は掴んでいた手を離して、とっぱらがして逃げていく。
悪態ついて逃げるのもだが、中学生に睨まれて逃げるってダサすぎる。
「2人とも助けてくれてありがとう」
「いや、困っていたようだったからな」
そう豪炎寺は何食わぬ顔で答える。クソイケメンかよ。
『本当に助かったよ。もう少しでアイツらの頭をボールにして蹴り飛ばしてやるところだった』
「梅雨ちゃん……」
秋ちゃんは呆れているが、実際サッカーボール持ってたら必殺シュートの一つや二つお見舞いしてたと思う。
暴行事件になんなくてよかったよね。
「お前ら2人だけで来たのか?」
染岡の質問にうん、と答えると染岡は少し考えるような仕草を取った。
「あー、なあ。俺たち今から円堂達と合流すんだけどよ。お前らも来るか?」
「え?」
「ああ。女子2人だけだとさっきみたいに変な奴に絡まれるかもしれないしな」
『いいの?』
「おう」
染岡が返事をくれ、豪炎寺も静かに頷く。
正直かなり有難い。さっきみたいなの絡まれた面倒だし。それに、だ。円堂と合流するのは秋ちゃん嬉しいだろう。彼女は絶賛片思い中だからね。
『混ぜてもらおうよ、秋ちゃん』
「そうだね。そっちの方が安心だし」
「じゃあ決まりだな。円堂達が場所取りしてて、俺らは食いもんの調達に来たからお前らもなんかほしいもんあったら今のうちに買っとけよ」
『はーい。2人はみんなの分買って行くの?』
「ああ。みんなでシェアしようと言うことになってな。とりあえず焼きそばと、たこ焼きを2パックずつと、焼き鳥に、後はかき氷と……」
『結構あるわね。買い物私達も手伝いましょうか』
「そうだね。あ、焼きそばの屋台、あそこに出てるよ。買ってこようか?2パックだったよね」
「ああ。だが、女子1人だとさっきみたいな事があるだろう。俺も行く。染岡と水津はあっちでたこ焼き買ってきてくれ」
そう言って豪炎寺は、焼きそばの屋台と反対側の屋台を指さす。
「買い終わったらまたここに戻ってきてくれ」
『うん分かった。行こうか染岡』
「え、お、おう」
二手に別れて歩き出す。
人混みを掻き分けてたこ焼きの屋台に向かいつつ、なにか話題をと話を振る。
『染岡たちは私服で来たんだね』
「ああ。お前も木野も浴衣着てきたんだな」
『うん。秋ちゃんが着るって言ってたからせっかくだし揃えようかなと思ってね』
そう答えれば、染岡はへぇーと呟いた後じっとこちらを見た。
『?』
どうしたんだろう、と首を傾げたが、染岡は顔を背けた。
「その、に、似合ってる……」
顔は背けているが耳が真っ赤なのが丸見えだ。
まさか、染岡がそういう事を言うとは思っていなかったし、彼が意味もなくそういう事を女子に言うタイプでないことを知っているから、そこまで鈍くない私はつられて顔を赤くする。
『そ、そっか。ありがとう……』
「お、おう……」
そのぎこちない雰囲気のままたこ焼きを購入して、秋ちゃんと豪炎寺と合流した。
「ん?…2人とも顔が赤いが大丈夫か?」
「あ、本当。2人とも真っ赤ね」
「っ、」
『え、あーうん。人混みに当てられたかな』
「そうか。夜とはいえまだ暑いし人が多いと余計に蒸すしな」
そうそう、と適当に豪炎寺に相槌を打ち、ちらりと横目で染岡を見れば、目が合った気がして思わず顔を背ける。
『と、とりあえず、他の物も買っていこうか!急がないと打ち上げ始まっちゃうし』
何となく気恥しいから、急かすようにそう言って歩き出せば、ああそうだな、と豪炎寺が頷いて隣に並んだ。
その後ろで、秋ちゃんがなるほどねと呟いて、染岡に小声で何か話しかけていたが気づかなかった。
脈アリだと思うよ
なんて言われたからか。花火の音が煩いから周りに聞こえないと思ったのか。花火が上がってる最中に告白された。
周りに聞かれて恥ずかしかったんですけど。
返事?それは……まあ、ね?