2021年
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「ええやん、ええやん!みんな似合っとるよ!」
ニコニコ笑顔でそう言った白兎屋なえの前には、フォーマルな衣装に身を包んだ男の子達が居た。
「ね、梅雨さん!」
『そうだね』
テンションの高いなえちゃんの隣に並んで、うんうんと頷けば、男の子たちの中の1人が照れたように顔を逸らした。
今日は、王帝月ノ宮中の野坂、西蔭を連れて都内のスタジオでのCM撮影に来ていた。普段から月ノ宮のスポンサーである月光エレクトロニクスのCM撮影にサッカー部が駆り出される事が多いが、今回は違う。
なえちゃんが居ることで大体の察しはつくであろう。そう、今回はなんと、しろうさぎ本舗からオファーを頂いたホワイトデーCMの撮影である。
無論、しろうさぎ本舗がスポンサーをしている白恋中からも、吹雪兄弟と染岡が来ている。
「つーか、今更だけどホワイトデーにまんじゅうって」
親指と人差し指の間に挟んだしろうさぎまんじゅうをムニムニと潰しながアツヤがボヤく。
「なんでも売らな、商売やもん。それに梅雨さんのSNS見てピピンときてん!」
「お前、SNSやってんのか?」
同じ元雷門だった染岡に聞かれ、うん、と頷く。
御堂院のジジイ捕まってからは、インターネットも自由になったからね!
「って事は、今回の僕らへのオファーも梅雨さん繋がりかな?」
「せや!なんや、しろうさぎまんじゅう最近よう売れるな〜って思ってたら、梅雨さんのイナスタグラムで、うちのしろうさぎまんじゅう食べる野坂悠馬と西蔭政也の写真がバズったらしくてな〜」
なえちゃんの言葉に、は?と西蔭が眉間に皺を寄せた。
『前に許可取ったでしょ?上げていい?って』
「あぁ、野坂さんが即答でいいと仰った……」
西蔭に有無も言わさず、「いいですよ。ね、西蔭?」と野坂が言ってたのを思い出す。あれ拒否権ないようなもんだよなぁ。
『まあ、とにかくその画像に写ってる野坂が食べてるものが食べたいと言うオタク心理から、しろうさぎまんじゅうが飛ぶように売れたらしく、今回ホワイトデーの贈り物として売り出すために、2人を起用したいって事で連絡もらってね』
「で、また野坂さんが即答で、いいと仰ったんですね」
何も聞かされず今日ここに連れて来られた西蔭は、はあ、とため息をついた。
「そういう訳で今日は撮影よろしゅうな〜」
撮影のトップバッターは吹雪。あ、士郎のほうね。
『こなれてんねぇ』
「なー」
「流石アニキ」
流石は雪原のプリンス。持ってるものがまんじゅうでも絵になるな。
『染岡次でしょ?大丈夫?』
「あー、大丈夫なわけねぇだろ。こういうのマジで慣れねぇわ」
そう言って左隣に並んだ染岡はシャツの襟と首の間に指を入れて空気を取り込んだ。
「染岡さんそういうの着てっとマジでヤクザみてぇだなー」
「あ?喧嘩売ってんのか」
アツヤを睨みつけた染岡に、その顔はヤクザだよ、と思わずツッコミそうになるのを我慢して、どうどう落ち着けと二の腕を叩く。
そうこうしていれば、撮影を終えた吹雪が戻ってきた。
「次、染岡くんだよ」
「お、おう」
緊張した面持ちで、頷き歩み出そうとした染岡に、あっ、と声を掛ける。
『染岡、ちょっとこっち向いて』
「あ?なんだ、よ……ッ!?」
振り返った染岡の真ん前に立ち彼の首に手を伸ばす。
「おまっ、近ッ......!」
『タイが歪んでる』
さっき、襟元引っ張ったせいでリボンタイが歪んでしまっていたので、綺麗になおす。
『よし、おっけー』
「お、おぉ……」
耳まで顔を真っ赤にした染岡は、ぎこちない動きで歩いて撮影に向かった。
「染岡くん顔を真っ赤だったね」
クスクスと吹雪が笑いながら染岡と入れ替わりで私の横に並んだ。
『ヨレてたから直してあげたんだけど、撮影前に、は良くなかったかも』
「染岡さんには刺激が強すぎたな」
ケケケ、とアツヤが悪い顔して笑う。
その横で更になえが、ふーん、なるほどねと楽しそうに笑っていた。
「西蔭、ちょっとネクタイぐちゃぐちゃにしなよ」
「はい?」
右隣で行われる、訳の分からない会話に思わず視線をやる。
『野坂、よくわかんないいじめはダメだよ。西蔭が可哀想でしょ?』
「よくわからなくなくても、いじめはダメですよ。そもそもいじめてません」
ホントに?と真横の西蔭を見上げる。
「あ、はい」
『で、なんで野坂は訳わかんないこと言ってたの?』
「西蔭も梅雨さんにネクタイ直して貰いたいかなと思って」
「はい?」
西蔭も思わず首を傾げているが、本当に何を言ってるんだ野坂は。
「羨ましそうに見てたからね。だからアドバイスしてあげようと思って」
「え、いや、別に羨ましい、とかでは無く」
「じゃあ、なんでじっと見てたの?」
「その……距離が近いな、と思いまして」
『そんな近かった?』
染岡はそもそも照れ屋だしと思って、あんまり気にしてなかったが、そんな近かったのか…?野坂、西蔭は宛になんないからと吹雪の方を向いて訊ねる。
「うん。近かったよ。こんな感じ」
そう言って、吹雪が1歩身を寄せて顔を近づけて来た。
と、思ったら後ろに身体を引かれ吹雪と距離を取らされた。
『西蔭?』
引っ張った、真後ろの人物へ首を回して見上げる。
「…、その、近かったので」
『まあ、確かに近かったね。あれなら、確かに女子に免疫ない染岡じゃ顔真っ赤になっても仕方ないね』
「……そうですね」
こく、と静かに頷く西蔭を、なえちゃんがじっと見つめる。
「……まさかアンタも…!」
なえちゃんの口から出た言葉に、首を傾げれば、言われた西蔭もまた首を傾げている。
「西蔭は無自覚だよ」
「嘘やろ!?」
「嘘だろ!?」
野坂の発言に、なえちゃんとアツヤが驚きの反応をしている。
「自覚あるだけ染岡くんの方がチャンスあるんじゃない?」
「えっ、そっちは自覚あるん!?」
「いや、西蔭も無自覚だけど行動力はあるから」
吹雪の言葉に驚くなえちゃんと、対抗する野坂を見て、何となく話の意味が分かった気がする。
『あの、私そこまで鈍感ではないので本人の前でやめてくれ』
「いやそこは鈍感であれよ!!」
アツヤからのツッコミに、ごめん、と返す。鈍感主人公が鉄板なのは分かってるけどさぁ…。
「なんの話してんだ?」
「染岡くん!」
うお、びっくりした。
「撮影終わるの早かったね」
「あー…いや、時間置いて録りなおし。次、西蔭な」
それを聞いて、ブハハハと馬鹿笑いしている。
『まあ、苦手そうだよねこういうの』
「うるせぇな!!アツヤもいつまで笑ってんだよ!!クソっ…」
「いってきます」
ずっと笑ってるアツヤの頭を染岡がシバくのと反対側で、西蔭はぺこりと野坂に頭を下げて撮影に向かう。
『西蔭も苦手そー』
西蔭は顔面良いから黙ってるだけで、絵にはなるだろうけど、これはCMでセリフ言わないといけないからなぁ。
「苦手だろうね」
「いや、こんな小っ恥ずかしいセリフ、さらりと言える方がおかしいだろ」
「そう?」
さっさと撮影を終わらせてしまった吹雪が首を傾げている。
「アニキは普段から似たような事言ってるからな」
「え、そんな事ないと思うけど」
「染岡さん、セリフ言えんでリテイク食らったん?」
「…悪いかよ」
「ううん!……むしろええやん。ほんなら向こうで、練習していきや!梅雨さんと!」
企むような笑みでなえちゃんが言えば、染岡は、は?と口を大きくあけ、ボンッと顔から火が出るかのように真っ赤に染め上げた。
「相手がおる方が、練習になるやろ?」
「いや、だからって、水津は…!」
反応分かりやすすぎて、可愛いわね。
「相手がいる方がいいんなら、今撮影してる西蔭の方じゃない?やっぱり彼も苦戦してるようだし」
野坂の視線の先には、グリーンバックの前に立つ表情の硬い西蔭の姿。
「いや、向こうはセリフは言えとるやんけ!」
どう聞いても、棒読みだけどね。
「いや、商品を売るためにはCMにもリアリティを出す必要があるだろう?練習なら白兎屋さんが付き合ってあげればいい」
「ウッ…一理あるけど…!いや、ここは譲られへん!」
『なんでそこがバチってんの…???』
思わずボヤけば、アツヤもわかんねぇと同調してくれた。
「じゃあ、こうしようよ」
そう言って吹雪が人差し指を立てた。
「水津さんに選んでもらおう。染岡くんと練習するか、西蔭くんを手伝うか」
『はい!?』
ここで私に決めさせるの…?
(分岐です。お好きな方選択して下さい)
① 染岡と練習する
② 西蔭を手伝う