2019年
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「はぁ...」
目の前の状況に大きなため息を吐く。
涼みに来た、という理由でわざわざ北海道までやって来て、俺の家に何故かいる水津梅雨は、ダボTに短パンという格好で、俺のベッドの上でゴロゴロと漫画を読んでいた。
なんというか、そのいろいろ見えて、困る。
「お前なぁ」
『んー?』
「その格好でゴロゴロするなよ、はしたねぇぞ」
そう声をかければ、水津はコチラを見て、あ~と唸ってしばらく考える素振りを見せた。
『分かったよ、そめお母さん』
そう言って水津は起き上がってベッド縁に腰掛けた。
「誰がお母さんだ、誰が」
全くコイツは...!!人の気も知らねぇで。
『しっかし、せっかく北海道まで涼みに来たけどそこまで涼しくないねぇ』
「そりゃ、そうだろ夏だぞ。だいたいお前は連絡もなしにいきなり来やがって」
ドアチャイムが鳴って、ドアを開けた先にこいつがいたのには心底びっくりした。
「急に来るから何もねぇぞ」
『そう言いつつ麦茶を入れてくれる君はいいお嫁さんになるよ』
「ならねぇよ!」
なるなら婿だろ。
そう心で思いつつ、テーブルに二人分の麦茶の入ったグラスを置く。
「あー、あとこれもあったな」
白兎屋に押し付けられたしろうさぎ本舗の菓子。
包装紙を破って、箱を開け、これもテーブルの上に置く。
『あー!弾む美味しさぴょんぴょんひょん!のやつだ~!!』
「おー流石に有名菓子だし知ってんだな」
『んー?うちの野坂がそう言って食べてた』
そう言って水津はピンクのうさぎを手に取って、頭からかぶりといった。
「お前んとこの、後輩そんな感じなのか...?もっとスカしたやつだと思ってた」
試合してるビデオを見たことあるが、そういう風には見えなかったけどな。
『後輩と言えば白恋もさ~、雷門との試合見たけど、白兎屋さんの起用めっちゃびっくりしたなぁ』
「あー、あれな。俺はお前が、王帝月ノ宮に行ってマネージャーじゃなく強化選手になってるの見た時のが驚いたけどな」
他校の情報収集に白恋中の皆とビデオを漁ってる時に見つけて、本当に驚愕した。
『あーね、響木監督と鬼道以外には言ってなかったからね』
「ホント重要な事はいっつも鬼道にだけだな」
鬼道と連絡とった時に、なんだ知らなかったのか?とまで言われたしな。
『おっ、ヤキモチか~??』
「ばっ、か!!違ぇよ!!」
「え~違わないよ。染岡くん、あの後2、3日機嫌悪かったじゃないか」
「ハア!?......は?」
『ん...?』
急な第三者の声に、俺も水津も1度お互いが顔を見合わせて、それから声の方へ向いた。
「士郎!!お前いつの間に!!」
そこにはビニール袋を片手に吊るした吹雪士郎が立っていた。
「オレも居るんですけど」
ニコニコと笑っている士郎の後ろに彼の弟であるアツヤがむすっとした顔で立っていた。
『おー、吹雪くん、お邪魔してます』
「水津さんいらっしゃい。何も無い所だけどゆっくりしていってね」
「いや、ここ俺の家だぞ」
なんで、吹雪の家みたいな顔してんだコイツ。
いつの間にしらっと部屋に入ってきてるし。
「つーか染岡サン、鍵かけてないの不用心じゃね?」
いや、女子が部屋に来てんのに鍵かけんのは逆にやべぇだろ。
そもそもインターホンすら鳴らさないで入ってきた奴らに言われたくねぇ。
『あ、そうだ。吹雪くんの送ってくれた地図のおかげで道中迷わないでこれたよ』
「そう?それはよかった」
「お前かぁあああ!!」
なんで水津は教えてもない俺ん家にいきなりこれたのかと思ったが、そうかこいつのせいか。
「つうか、お前らいつ連絡先交換したんだよ」
『白恋と雷門の試合の後だよ。ほら、染岡と会ったじゃん?その前に吹雪兄弟に君の居場所教えて貰ってその時に』
ねー、と士郎が相槌を打つ。
「というか、さっきの話に戻すけど、染岡くんってば、あの後機嫌悪くてさ、それなら水津さんの連絡先知ってるんだから、電話して直接聞いてみたら?って言ったのに結局連絡しなかったんだよ?」
「ああ。染岡サン、女子に電話なんて出来るわけねーだろ!って言ってたな」
そう言ってアツヤがケラケラと笑う。
「なっ!?お前ら...!!」
知られたくなかった事をバラされて思わず顔がかっーと熱くなる。
ちらりと、水津を見れば彼女はふふふ、と小さく笑っていた。
あー、クソッ。笑ってんのは可愛いけど、傷付く。
『染岡は硬派だねぇ』
「うっせーな」
「女の子にそういう言葉はダメだよ」
照れ隠しに言った言葉を士郎にダメだしされる。
「おい、アニキ。話盛り上がるのはいいけど、それ渡さなくていいのか?」
「あ、」
アツヤの言葉に、忘れてたと士郎が手を叩く。
「そうだった、これお土産」
はいどうぞ、と士郎が腕にぶら下げてたビニール袋を渡してきた。
袋から中に入っていた箱を取り出す。
アソートのアイスキャンデーの箱だった。
『わー!アイスキャンデー!!』
「みんなで食べよう。まだそんな溶けてないと思うから」
「暑いしちょうどいいな。サンキューな」
「ふふ、礼ならアツヤに言って。アイス食いてぇアイス買っていこうぜってうるさかったんだから」
「はあ?アニキだって、この暑さじゃアイス食べないと死ぬっつってただろ!!」
「わかったわかった。お前ら2人とも食べたかったんだな。ほら、早く選ばねぇと溶けちまうぞ」
どうどう、とアツヤを抑えて、アイスキャンデーの箱を開けると水津が、おぉー、と声をあげた。
「なんだよ」
『いやぁ、強化委員を経て、豪炎寺に突っかかってたあの染岡が、人を宥める立場になったんだなぁと、お姉さんは感心している』
「あ?喧嘩売ってんのか?」
『あっ、そんなに変わってないっすね~』
水津はスッーと息を吐いて、誤魔化すようにアイスキャンデーの箱を指さした。
『皆どの味がいい?』
「僕はバニラがいいな」
士郎がすぐさま答えたので、俺もパッケージに描かれたものを見た。
「「いちご」」
俺の声とアツヤの声が重なった。
「はあ!?染岡サンはいちごって柄じゃねーだろ」
「あ??お前も喧嘩売ってんのか?いちごうめぇだろうがよ」
『はいはい、いちご美味しいもんね~。2本あるから1本ずつね』
はいどうぞ、と水津が俺とアツヤそれぞれにいちご味のアイスキャンデーを手渡した。
それから吹雪にもバニラのアイスキャンデーを渡していた。
「水津さんはどれにする?」
『んー、私はソーダかな』
「わ、いいね。ソーダも美味しいよね」
水津が自分の分を取ったのを確認して、箱を手に取る。
「んじゃ、後は溶けるから冷凍庫に入れてくるな」
「うん、よろしくね」
冷凍庫にアイスキャンデーを閉まって、直ぐに戻れば3人は、ビリビリと袋を破り終えた所だった。
「うっわ、やっぱちょっと溶けてんな」
『ホント、ちょっと垂れてきてんね、...っと』
耳に髪をかける動作をして、それから、ちろり、と水津の赤い舌が、下からアイスキャンデーを舐め上げる。
「...っ!」
なんか、見てはいけないものを見てしまった気分になって、そっと目をそらすとアツヤと目があった。
あー、アツヤも水津から目をそらしたんだな。
「染岡くん。染岡くんも早く食べないと、溶けちゃうよ」
ものすごくニコニコと笑っている士郎にそう言われ、慌てて自分の分を開けてアイスキャンデーに噛み付いた。
「水津さんはアイス舐める派なんだね」
『んんー、その時の気分による派だよ。今はめっちゃ垂れて来てたから』
そう言って水津は、アイスキャンデーの先端を咥えた。
「ふーん、えっちだね」
士郎の言葉に、水津は、は?と零しアイスキャンデーを口元から離した。
「士郎!!」
「アニキ!!」
何言ってんだコイツ。
アツヤが士郎の肩を力強く掴んで揺さぶる。
「アニキ頭熱で沸いてんの!?」
「えー、アツヤも染岡くんも思ったでしょう?2人とも水津さんから目を逸らしてたし」
突然の飛び火に、ゴホゴホとむせる。
水津の目がジッと俺たち3人を見据えた。
「はっ、いや、俺は違う...!」
アツヤがそう言って顔を真っ赤にし、キョロキョロと目を動かす。
『ふぅん』
そう言って水津は、また垂れてきたアイスキャンデーを舌で舐めとった。
思わず3人ともそれをじっと見てしまった。
それを見た水津はニヤリと口角を上げた。
『マセガキ』
そう言って、ガブリと、アイスキャンデーの頭を噛みちぎった。
思わず、3人共同じ所を押さえて、ゾッとした夏のひとときを過ごした。