2020年
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冬休みに入って2日目の12月25日。
正体バレバレのサンタが部屋に置いていったプレゼントを朝に開け、その中に入っていた欲しかったゲームを一日中やってれば、竜吾!とキッチンに居るお袋から呼び出された。
ケーキ受け取りに行ってきて、とクリスマスのご馳走を作るのに忙しそうなお袋が女物の財布を押し付けて来て、有無も言わさず家から出された。
寒いし、ケーキ屋までそこそこ距離あるし、最悪だ、と思いながらダウンジャケットのポケットに財布と共に手を突っ込んで歩き出す。
クリスマスにケーキがないのも嫌だしな、と自分に言い聞かせながら、しんとした空気の中を商店街の方に向かって歩いていく。
商店街のアーケードをくぐって、目的のケーキ屋までもう少しと言うところで、向かい側から歩いてきた奴と目が会った。
「あ、」
『おっ、染岡じゃーん!』
やっほー、と言いながら近づいてきた同じクラスの水津に思わずラッキーと心の中で拳を握る。
まさか冬休みの最中、想い人に会えるとは思っていなかった。
学生服とは違う水津を見るのは初めてだ。私服姿もかわいい。...本人には言えないが。
『お出かけ?』
「あー、ケーキの引き取り」
『じゃあ私と同じお使いか!』
そう言ってニパッと笑った水津は、片手に持っていた白い箱を掲げて見せた。
「水津ん家もここのケーキ屋なのか」
『うん。ここ甘さ控えめで美味しいよね』
ニコニコと笑う水津にそうだなと頷きながら、この後なんて続ければいいんだ、と頭をフル回転させるが、何も思いつかない。
『それじゃあ、』
立ち去ろうとする水津に、思わず、あっ、と声を漏らせば、水津は首を傾げて振り返った。
『どうかし、た...?』
そう言いながら水津が、急に顔を空に向けるので、つられて上を向く。
薄暗い空から白いものがヒラヒラと舞い降りてきた。
『雪だ』
タイミングよく降り出した雪に、水津がそっと手を伸ばす。
その姿が神秘的で、思わず、綺麗だと呟けば、水津はこちらを振り向いた。
『そうね。綺麗』
「...ああ」
水津の事だとは言えるわけがないので、雪の事だと思っている水津に合わせて頷く。
『淡雪だから積りはしないかな』
そう言って水津は伸ばしていた手を引っ込めた。
『でも寒くなるだろうから早く帰った方がいいかも』
「あー...そうだな」
残念に思いながら頷く。
仕方ない、俺が寒いのが嫌なように水津だってそうだろうし。
『それじゃあ、』
先程と同じように別れを告げようとする水津は、あっ、と呟いてコートのポケットに手を突っ込んだ。
『染岡。手出して』
なんだと首を傾げながらも、ポケットから手を取り出して水津に向けた。
『クリスマスプレゼントにしてはしょぼすぎるけど』
そう言ってコートから手を出した水津は、温かいものを俺の手のひらに乗せた。
「カイロ?」
『うん。使いかけで悪いけどね。ないよりは温かいよ』
「これ貰ったら、お前が寒くないか?」
『お腹と背中に貼るカイロ貼ってるから大丈夫!』
「いや、貼りすぎだろ!」
思わずツッコミを入れれば、水津はケタケタと笑った後、じゃあねと言って歩み出した。
おー、と言ってその後ろ姿を見送っていれば水津はいい笑顔で振り返って言った。
メリークリスマス!
ケーキを受け取って、水津に貰ったカイロで暖を取りながら家に帰った。戻るなりお袋にカイロ見てニヤニヤして気持ち悪いと言われた。うるせぇな!!