フットボールフロンティア編
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「馬鹿な...こんな馬鹿な...!」
モニターの前に立ち尽くし呆然と呟く影山を見て、私を拘束していた黒服の男はそっと拘束を解き、ポケットから取り出した携帯を開いて確認した後、影山のそばに歩み寄った。
「終わったな、影山」
そう言って、鬼瓦刑事はサングラスと帽子を取り変装を解いて見せた。
「鬼瓦...!」
私がわざわざ秋ちゃん達が危険を犯して助けに来てくれたのに、こちらに戻ったのはこの為だ。
私を捕まえたフリをして鬼瓦刑事をこの部屋に入れさせ、神のアクアがドーピングでありそれを使用しているという言質を影山から取るためである。
「神のアクアを調べさせて貰った。人間の身体を変える成分が見つかった」
鬼瓦さんが採取した神のアクアから解析班が急ピッチで調べてくれたんだろうな。
「今度は逃れられないぞ」
そう言って鬼瓦刑事は懐から手錠を取り出した。
「フッ」
見せつけられた手錠を見てニヤリと笑う影山に、縄につけと鬼瓦刑事は手錠をはめた。
「貴様の策略にしてやられた、と言うわけか」
手錠を掛けられながらこちらを見てそう言う影山に、いいえと首を振る。
『私が何もしなくても結末は変わらなかったと思いますよ』
私が要らぬお節介を焼かなくても、マネージャー達は世宇子中のドーピングに気がついたし、鬼瓦刑事もここに侵入して証拠を押さえてた。
「そうか」
そう言って影山またフッと笑った。
「嬢ちゃんの説教は、また後だ。アイツらの元に行ってお祝いしてやれ。さ、行くぞ」
そう言って鬼瓦刑事が歩き出せば、影山は大人しく着いて行った。
私も部屋を出て、黒服たちの居なくなった廊下を抜けてグラウンドに出た。
さっきまで薄暗い部屋に居たから、吹き抜けの天井から陽の差すグラウンドはやけに眩しかった。
眩しさに慣れてきたところで、グラウンドの芝を踏みつけて歩き出す。
喜びを分かちあっているみんなを邪魔しないように、そっと進んで未だ地に膝をつけているアフロディの元に向かった。
「...」
そっと前から覗き込めば、影が差した事により気がついたのか、アフロディはゆっくりと顔をあげて見せた。
「フッ、嘲笑いに来たのかい」
『違うわよ』
そう言ってしゃがんでアフロディの目線に合わせる。
『アフロディ、体調は大丈夫?吐き気とか頭痛とか。あんなものが副作用も無しに使えるとは思えないんだけど』
そう言えばアフロディはぽかんと口を開けた。くそっ、アホ面してても美少年は美少年だな。
神のアクアの副作用に関しては、ゲームでは街中に撒かれた神のアクアのせいで、街のみんながおかしくなるというのがあったし、何かあるかもしれない。
『とにかく具合が悪い者がいたら言いなさい。刑事さんに頼んで医療班呼んでもらってるからすぐに診てもらうこと!』
そう言って、立ち上がってアフロディを見下ろす。依然彼は呆けているが、今私が何か言える訳でもないしな。悪い大人に騙されてたんだよ、とは言えない。彼らは帝国学園の子達とは違って影山の悪事を知ってて影山に付いてたんだし。
さて、と踵を返そうとした時だった。
とん、と頭の上にチョップされて、なんだ!と振り返る。
「お前はこんな奴らの事まで心配すんのかよ」
後ろに居たのは染岡で片腕はぐるぐると包帯で固定されている。
『染岡...』
「他人の心配をする前に、お前は先に言う事があるんじゃないか」
そう言って染岡の後ろから鬼道が現れてゴーグル越しにこちらを睨みつけている。その身体はやはりボロボロである。
『...うん。影山は捕まったよ。鬼瓦刑事が連行して行った』
「そうか。...いや、そうじゃない!」
分かってるよと鬼道の言葉に頷いて、喜びを分かちあっている皆の元に向かう。
「水津!」
「水津さん!」
「梅雨ちゃん!」
「水津先輩!」
みんなが私に気づいて集まってくれる。秋ちゃんたちマネージャーが裏切った訳では無いと説明してくれてたのであろう。無事でよかった、なんてみんな声をかけてくれる。
『みんな優勝おめでとう。それから、ごめん』
そう言って頭を下げる。
『みんなが怪我をしないようにと思ってみんなに酷いこと言って潜入したのに、なんの意味もなくて...結局みんなこんなにボロボロにしてしまって...本当にごめんなさい』
そう言えば後ろから染岡がでっかい声で、はあ、とため息を吐いた。
「そういう事じゃない」
え?と振り返って見れば鬼道も怒っている。
「お前は...!俺達には散々無茶をするなと言っておきながら、自分が1番無茶をしてどうする!」
『え、あ!そっち!?いやそれを言われるとぐうの音も出ない。反省してます』
「本当か」
『...はい』
もっと上手くやれたんじゃないかって反省してる、とか言ったらもっと怒られそうだから黙っておこう。
「水津」
そう円堂に呼ばれて振り返る。もしかして円堂も怒ってらっしゃる...?
『円堂...、その...』
「意味無いことなんてないぞ!」
そう言って円堂はニカッと笑った。
え?と首を傾げれば、そうだな、と風丸が円堂の肩を持つ。
「お前の受け身の特訓のおかげで後半戦えるまでみんな耐えられたんだ」
風丸の言葉に、ああ、と豪炎寺が頷く。
『でもみんなボロボロで...』
少林寺、松野、栗松、目金、染岡を見れば彼らは特に腕や足に痛々しい程包帯を巻いている。
「確かに怪我は負ったけど、キミのお陰でみんな致命傷にならずにすんだんだよ」
そう言って一ノ瀬に肩を叩かれた。
「それに梅雨ちゃんが、ドーピングを発見してそれをすり替えてくれたお陰で後半世宇子とは本当の力で戦えたからな」
ニカッと土門が笑ってみせる。
そのすり替えのせいで、前半戦中に潰そうとした世宇子中のラフプレーが多くなりみんなをここまでボコボコにしたのに...。
「無意味だなんて言うなよな。俺達のため、だったんだろ」
な?と半田が聞いてきて、ゆっくりと頷く。
「じゃあこの件はこれで終わり。これ以上無しな!」
にっ、と円堂が笑ってそう言えば、みんながそうだな、と頷く。
「全く、そしたら俺は嬢ちゃんを叱れねぇな」
そう言って輪の中に鬼瓦刑事が入ってくる。
「刑事さん!」
「おう。優勝おめでとう。ところで医療班が到着したから全員まとめて診てもらえ。今からインタビューなのにそんなボロボロじゃカッコつかないだろ」
鬼瓦刑事が笑いながらそう言えば、男の子達は口々にインタビュー!と呟いた。
『そうだね。ヒーローインタビューなら映像や写真に取られるだろうし。しっかり治療してもらいなさい』
「ああ。行こうぜ、みんな!」
円堂の言葉にみんなはおお!と返事をしてグラウンドから出ていく。
みんなの後ろを着いて歩き出せば、嬢ちゃん、と鬼瓦刑事に呼び止められる。
「嬢ちゃん、アンタは一体何者だ?」
振り返って鬼瓦刑事の顔を見れば真剣そのものだった。まあ、あの部屋での影山との一連のやり取りを見てたわけだし、普通に何だこの餓鬼とは思うよねぇ。
『私は...』
何者か、か...。別の世界から来た異邦人?
いや、私はただの、
イナズマイレブンのファンです!
そう言って笑えば、鬼瓦さんはキョトンとした顔をこちらに向けたあと、そうか!と笑っていた。