フットボールフロンティア編
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世宇子中の9番デメテルのダッシュストームにより吹き飛ばされた少林寺、風丸、壁山がグラウンドに叩きつけられた。
円堂が倒れた彼らの名を叫ぶ中、デメテルはゴールにシュートを打った。
「リフレクトバスター!」
「ゴッドハンド!!」
無数の小島のように、浮かび上がった地面にボールを反射させたそのシュートは円堂のゴッドハンドを破り、再び雷門ゴールを割った。
ボールと共にゴールに倒れた円堂もだが、先程の攻撃を受け倒れたままの3人を心配するように、同じDFの土門や栗松が駆け寄って声をかけている。
「大丈夫か?」
「はい、何とか。肩から落ちろって言われてたので」
ゆっくりと少林寺が起き上がり、その横で風丸も身体を起こす。
「誰かさんが受け身にうるさかったおかげ、だな」
そう言いながら立ち上がり、風丸がベンチの方を見れば土門もつられてそちらに顔を向けた。
「梅雨ちゃん、か」
「最後の練習の時、いつも以上に受け身の練習に力を入れてただろ?これを危惧してたのかもな」
「裏切るってのに、わざわざか。梅雨ちゃんは心配性だねぇ。でもまあ、気をつけるに越したことはないないな」
ああ、と頷いた風丸はフィールドの方に視線を戻した。
「みんな受け身はしっかり取れよ。頭からは落ちるな!いいな!」
風丸がそう声高らかに言えば、皆ははい!とかおう!とかそれぞれ頷いた。
その様子を見て何やらお互いに顔を見合わせたマネージャー3人は、控えの選手達にここをお願いと伝えて、ベンチから居なくなってしまった。
困惑する控え選手たちを置いて、試合はふたたび雷門のキックオフで始まる。
しかし、またもボールをデルメルに取られ、彼は雷門陣内へとズンズンと突き進んできた。
「ダッシュストーム!」
そのドリブル技により止めに入ろうとした松野、土門、栗松が吹き飛ばされて、そうして繋がれたパスはヘラが受け取り彼は器用にも踵でシュートを打った。
「ディバインアロー!」
その技に円堂は爆熱パンチで立ち向かうが、3度ゴールを割られてしまった。
「マックス!栗松!平気か!?」
立ち上がりながら、土門が問えば、ハイでやんす...と弱々しい声で栗松が返す。
「ボクも何とか」
フラフラと立ち上がった松野は土門と共に栗松の傍に行き彼を立ち上がらせた。
「まだ、やれるか?」
「大丈夫でヤンス」
「ああ」
2人は大きく頷いてポジションに戻る。受け身の意識が高まってるおかげか、皆吹き飛ばされてもなんとか致命傷は避けられたようだった。
またも雷門ボールでキックオフだが、その際に染岡は豪炎寺、と小さく彼の名を呼んだ。
「どうした?」
「無理に突っ込むなよ」
その言葉に豪炎寺はパチリ、と目を開いて驚いていた。
どちらかと言えば無闇矢鱈に敵陣に突っ込んで行くのは普段から染岡の方なのにその彼がそう言うのかと。
「何か策があるのか?」
豪炎寺がそう聞けば、染岡はいや、と首を降って、キックオフのボールをちょんと蹴って豪炎寺に渡した。
染岡は首を降っていたが、普段イケイケのガン攻め思考の染岡がわざわざそう言うからには策はないにしろ、何かあるのだろう。先程、鬼道と話していた事もあるしな。そう思った豪炎寺は一ノ瀬にバックパスして世宇子中陣へと駆け上がった。
「豪炎寺!」
一ノ瀬からボールが戻ってくるのに、世宇子中のMF8番のアテナが割り込んで来た。
本来なら競ってでもボールを取るべきなのだろうが、先程の染岡の言葉もあるので無理にぶつかりに行くのを辞めれば、アテナの足先によってパスはカットされ転がったボールはアフロディの元に行った。
そのボールをアフロディは何故かラインの外に蹴り出して、試合を止めた。
雷門イレブン達が唐突の事に困惑している中、世宇子イレブン達は全員、悠々とベンチに集まりだした。
そしてグラウンドへと運ばれてきたグラスに入った水をそれぞれが飲んでいく。
実況が余裕の水分補給か!?なんて言ってる中、雷門側のベンチにマネージャー3人が戻ってきた。
「どこいってたんだよ、試合中なのに!?」
半田がそう言えば、ごめんねと秋が謝った。
「大事な用があったのよ」
ツンケンとした様子で夏未はそう言って、反対のベンチに集まる世宇子イレブンを見た。
ごくごくとグラスの中身を飲み干した世宇子イレブン達は、それぞれ怪訝そうな顔をした。
「これは...」
「なんだこれは?ただの水じゃないか!?」
ポセイドンかそう言えば、神のアクアを運んできた男達はそんなはずは!と慌てた。
「まさかあの小娘が?」
「いやしかし、カードキーは早急に取り替えすことが出来たし何より控え室にはガードマンが居るだろう」
男達のそのやり取りに、アフロディは顎に手を置いて、ふむ、と雷門のベンチを見た。
先程から雷門のマネージャー達がこちらを伺うように見つめている。
「あの小娘と言うのは、水津梅雨の事、かな」
「は、はい。総帥から控え室のカードキーを奪って逃走したのですが、複数で確保に当たった際にカードキーを落として逃げたので...」
「カードキーを落とすより前に侵入した可能性は?」
「ガードマンがいるので侵入は不可能かと」
「...わかった。とりあえず中身がすり替わってることを総帥に報告を」
アフロディがそう言えば、男達ははっ、と頷いて空のグラスの乗ったワゴンを引いて去っていく。
「やられたな。おそらくは彼女のせいだろうな」
雷門のマネージャー達がじっとこちらを見ているのは彼女が何かをしたのを知っているからだろう。試合中に抜け出して居たのもそれを聞く為だったのだとすれば、おそらくドーピングの事が雷門側に伝わっているだろう。
「アフロディ、神のアクアがないなんてどうするんだ」
アポロンが訊ねれば、アフロディはフッと笑った。
「どうもする事はない。僕達はこれまで通りただ勝てばいい。2杯目の神のアクアは前半戦終了までに効果を薄めない為の保険のような物だ。神のアクアの力は僕達の中にまだ残留してる。だから、前半戦の間に雷門を潰せばいい」
アフロディの言葉に、確かに、なるほどなと頷いた世宇子イレブン達はそれぞれフィールドに戻っていく。
「力は失われてない。それを示して心を折る」
アフロディは、グラウンドに居ない誰かを見つめた後、同じようにフィールドに戻った。
何食わぬ顔で戻ってきた世宇子イレブンを見て、春奈は不安そうに夏未と秋を見た。
「失敗したんでしょうか...」
「いいえ、さっきグラスの中身を飲んだ後の反応を見る限りでは、ちゃんと中身が変わっていたようだけれど」
「けど、あまり慌ててないように見えますよ!」
春奈の言葉に、夏未はそれは...と言葉を詰まらせた。
「マネージャー達、さっきから何の話をしてるんですか?」
疑問に思った宍戸が訪ねる横でベンチにいる他の控え選手たちもウンウンと頷いた。
「世宇子中のドーピングの話よ」
「なんだって!?」
「なんでそれをマネージャー達が知っているんですか?」
驚く半田の横で、目金が疑問を投げかける。
それを見て秋はもういいわよね?と夏未と春奈に確認を取り、2人が頷くのを見て口を開いた。
「潜入してる梅雨ちゃんから密告があったの」
「え?潜入!?」
「待ってくれよ!?じゃあ水津は俺達を裏切ってない!?」
「マネージャー達は知ってたの...?」
宍戸と半田の驚きと影野の質問に、マネージャー達はそれぞれ頷いた。
「一応俺と鬼道も知っている。本当は危険だからやめろと言ったんだがな」
響木がそう言えば、監督まで!?と彼らはまた驚いた。
「ま、まあ?僕はそうだと思ってましたが...」
目金は眼鏡をクイクイと持ち上げながらそう言った。
「いやお前も気づいてなかっただろ」
「その水津さんは今...?」
「証拠は掴んだけど、まだ、やることがあるからって、影山の元に...」
「梅雨先輩大丈夫でしょうか...」
「...ええ」
マネージャーは、恐らく影山が居るであろうスタジアムの高い壁をみつめた。
コンコンと扉が叩かれて、失礼します、と言う声に、影山はなんだと返した。
「例の少女を捕獲しました」
『っ、離せよ!触んな!セクハラだぞ!!!』
扉越しのそんな声に、影山はフッと笑って、入れと命じた。
扉が開けば、梅雨の両腕を拘束した状態で黒服が彼女を押して入ってきた。
『なにすんのよ!丁重に扱いなさいよ!』
「うるさい!総帥の御前だぞ静かにしろ!」
『いやでーす』
梅雨がそう言えば黒服はコイツ...!と梅雨を睨みつけた。
「随分と好き勝手やってくれたようだな」
『嫌だなぁ。カードキーを盗んで逃げるなんて、ちょっとしたお茶目じゃないですか』
「どうやって神のアクアを差し替えた」
『さあ?どうやってでしょう?』
「相変わらずのらりくらりと...。しかし残念だが、神のアクアを入れ替えた所でなんと言うことはない」
『へえ?ドーピング無しで大丈夫なんですか?』
「誰が神のアクアの効果が切れたと言った?あれはただの補給に過ぎん」
は?と梅雨が口を開ければ、影山はゆっくりと口角を上げた。
「そこでじっくり見ていくといい。雷門が負ける様を」
そう言って、影山は梅雨に見やすいようにとモニターの位置をひとつ動かした。
画面に映るそのグラウンドの様子に梅雨は、え?と口を開けた。
映る惨劇
怪我をさせたくない。その一心で動いていた筈なのに。
どんなに抗おうが結局、物語は変わらないのか。
画面の向こうでは、地に伏せるみんなが居た。