フットボールフロンティア編
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後ろを追いかけて来た黒服達から逃げる為、廊下の曲がり角で息を潜める。一応巻くことが出来たがまだ近くから、逃げても無駄だ!大人しく出てこい、と男の声がする。
当然出ていくわけが無い。
逃げながら探しているが目当ての世宇子中控え室が見当たらない。というかゲームのマップで見てたよりもこの建物広い。
追われているから1個1個の部屋を開けてみていくわけにもいかず、もしかしたら見落としもあるかもしれない。
最初のガードマン2人がインカムで連絡を取ってくれたせいで追っかけて来る人も増えたしさあ...。ハンターから逃げ切って賞金が貰える番組の気分だよ。
何となく覚えてるゲームのマップだと世宇子中の控え室は廊下の左側だったと思うんだけど...。もはや逃げるためにあちこち曲がったので現在地がどこかもわかんないや。
どうしたものか。
曲がり角の先に少し頭を出して黒服達が居ないことを確認する。よし、っ!?
「やっと捕まえた!」
その声と共に後ろから肩をがっしりと掴まれた。
しまった、と声をあげようとしたら片手口を塞がれた。
くそ、大人の男の力なんぞ小娘に解けるわけないじゃないか。
モゾモゾと抜け出そうと暴れれば、何故だか、大人しくしろではなく、落ち着けと言われた。
「俺だ、俺」
そう言って男はかけていたサングラスを少し下にずらして見せた。
『鬼瓦さん!』
「しー。まだ奴らが近くに居るから静かに」
そう言って黒服に変装していた鬼瓦刑事は人差し指を口元に持っていった。
こっちだ、と鬼瓦刑事に案内されるまま、そっと移動して空き部屋のような所に入って内側から鍵をかける。
「まったく、お前さんはメール1つ寄越して勝手に潜入しやがって」
部屋に入るなり鬼瓦刑事が怒ったが、無理もない。
昨日の番に一方的に送って、鬼瓦さんからの危険だからやめろというメールは無視させてもらったからなぁ。
『すみません。けど、影山からドーピングをしているという言質を取りましたよ』
「お前さんの読みが当たってたわけか」
『はい。神のアクアと言うもので試合の時に世宇子中がグラスに入った水を皆で仰々しく飲んでいるのを見たことがありませんか?あれです。そして今から再摂取の時間で控え室にあるのを選手の元に持っていくそうです』
「神のアクア...。今からか...まずいな。控え室を調べるにも鍵が掛かってる」
『それなら大丈夫です。ここにあります』
そう言って、握っていたカードキーを鬼瓦刑事に手渡す。
「お前さんこれをどうやって」
『えっと...、強奪?』
「強奪ってなぁ...。それであんなに追われてたわけだな」
はあ、と鬼瓦はため息を吐いた。
『はい。それを使って神のアクアをただの水に入れ替えるつもりでした』
「なるほどな。しかしドーピングなら1度試合を中止にして」
『いえ、おそらく影山はそんな証拠どこにあると言い張って逃げますよ。今からサンプルを解析班に渡しても成分解析には時間がかかりますよね?』
「...ああ。そこまで考えての中身の差し替えか」
『はい。それに一生懸命戦ってる子供たちの姿を影山に見せたいんです。サッカーは復讐の道具ではないってのを影山に知らしめる事が出来るのは円堂や、雷門のみんなだと思うから...!』
「わかった。そこまで言うならその作戦で行こう」
ありがとうございますとお礼をすれば、今回だけだぞ、と返された。
『はい。そこでなんですが...』
かくかくしかじかと、鬼瓦刑事にこの先の作戦を伝えたら、驚いた顔をされてお前は後で説教だ、と怒られた。
「だが、お前さんの言う通り予備を先に出されてしまっては適わん。それで行くぞ」
はい!と頷けば鬼瓦刑事は扉の鍵を開けて外に出た。
「小娘がいたぞ!みんなこっちだ!捕まえろ!」
鬼瓦刑事はそう大きな声で叫んで、行け!と私に口パクで合図した。
それと共に走り出せば、こっちか!とドタドタと走る音が聞こえてきた。
鬼瓦刑事から聞いた世宇子中控え室の方面に走っていく。
そうすれば鬼瓦刑事を筆頭に黒服たちも着いてくる。
着々と走って控え室の前に行くとやはりガードマンが居た。
「そこのお前!その小娘を捕まえてくれ!」
鬼瓦刑事が叫べは、任せろと言ったようにガードマンが正面に立ち塞がったがそれをアクロバットで飛び越えて走る。
飛び越えられたガードマンが唖然とする中、黒服達のインカムにノイズが走った。
「どうした。ああ。なに?入口に雷門中のマネージャーがやって来て騒ぎ立てている?そんなもの追い返せ!今こっちはそれどころじゃない」
黒服が叫んでいるの聞いてニヤリと笑う。いやぁ3人ともナイスタイミングだよ。おかげでこっちに来る人手を減らせる。
黒服達が梅雨を追いかけ控え室から遠ざかる中、鬼瓦刑事は追いかけず呆然としたガードマンと共に居た。
「よし、行ったな」
「ハッ、どういう事だ!?」
慌てたような顔をするガードマンに鬼瓦は大丈夫だと笑った。
「さっきあの小娘がアクロバットで飛んだ時カードキーを落としたのを拾ったんだ。小娘が気づく前に選手達に神のアクアを届けねば」
「なるほど」
「影山総帥が機嫌を損ねる前に対処しなければ」
「総帥が...!確かに」
「悪いがお前はここに誰も入らないように見張っていてくれ」
「わかった」
ポンコツガードマンをだまくらかして鬼瓦刑事は世宇子中控え室に侵入した。
あとは鬼瓦刑事が上手く差し替えてくれると信じ、ひたすらに走る。
鬼瓦刑事が事を完了させるまで出来るだけこちらに引き付けておきたいが...。
「梅雨ちゃん!こっちよ!」
女の子の声でそう呼ばれて曲がり角から伸びてきた手に腕を掴まれた。
『秋ちゃん!?』
「そっち曲がったぞ!」
「梅雨ちゃん次はこっち!」
後ろから黒服が追っかけて来るのも無視して秋ちゃんは腕を掴んで全力で走る。その反対の手には携帯電話が握られて居て耳に当てがわれていた。
そんな秋ちゃんは何処を曲がれば、見つかりにくい、というのがまるで分かってるみたいに進んで行き、いつの間にやら追っ手をまいた。
「ここよ、入って」
『あれ、ここ...』
秋ちゃんに引っ張られて入ったのは、雷門中の控え室だった。
「水津さん!」
「梅雨先輩!」
そう叫んだ夏未ちゃんと春奈ちゃんが駆け寄ってギュッと抱きついて来た。
『え、ちょっと、ちょっと2人とも...!』
「無事で良かったです...!」
「馬鹿!お馬鹿!無茶なことして!」
春奈ちゃんは泣いていて夏未ちゃんにはポカポカと殴られる。
「私も心配したんだからね」
そう言って秋ちゃんにも手を握られた。
『3人とも、ありがとう。でもまさか秋ちゃんが助けに来るなんて思ってなかった。私、騒いでくれるだけでいいよって言ったじゃない』
「だって、それで確実に逃げ切れるとは限らないじゃない?」
『けど、それで秋ちゃんまで捕まったら...!』
「ええ、リスクはあったけど、3人ともどうしても試合は貴女と一緒にベンチに座りたかったのよ」
『夏未ちゃん...』
夏未ちゃんの顔を見て、秋ちゃんと春奈ちゃんの顔を見る。
3人ともきっと怖かっただろうに、無理をしてくれた。
『でもなんで秋ちゃんあんなにスムーズに追っ手を撒けたの...?』
「それは春奈ちゃんと夏未さんにナビゲートしてもらって」
「試合が始まる前に下調べして置いたんですよ!」
ぐっ!と春奈ちゃんがサムズアップした。
なるほどね、夏未ちゃんと春奈ちゃんの頭ならそのくらいやりそうだな。
『なるほど...』
「貴女と逃げるならこの中では1番運動神経がいい木野さんが適任って事で、木野さんにはだいぶ無茶をお願いしたのだけれど」
「ちょっと怖かったけど、意外と何とかなったね」
『そっか。ありがとうね。一応、神のアクアをただの水に入れ替えてもらうのを今鬼瓦刑事にやってもらってるから...』
「神のアクア?」
『え、ああ。そっか、そこから説明するね...』
スイッチスワップ
世宇子中は神のアクアって言われるドーピング剤を使っててね。そう言えば、3人はやっぱりそうだったのとか、あの水が...とさして驚いてないようすだった。