フットボールフロンティア編
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両チームの整列しコイントスが終わりポジションに着くためそれぞれフィールドに散る。そんな中、
「鬼道、ちょっといいか」
そう呼び止められた鬼道は、なんだ、と足を止めた。その隣に声をかけた染岡が並び立つ。
「今日の作戦、前半は守備に力を入れないか」
「昨日の会議で、前半から攻めると決めたはずだが。急にどうした」
「いや、アイツが昨日前半は守備に回った方がいい、って言ってただろ」
「...水津か」
鬼道が名を呟けば、ああと染岡は頷いた。
「俺たちを裏切り影山に付いたアイツを信じるのか?さっきは物凄い剣幕で怒っていたじゃないか」
「それは、アイツが決めた覚悟ってのが、裏切る事だったのかよと思ってたからで...」
染岡は、合宿の夜の事を思い出した。
あの日は、事故で水津の事を押し倒す形になってしまったり、背におぶった時の感触だったり、そういったものが要因で悶々として寝られずにいた。
とりあえず布団に入るだけ入り、目をつぶって入れば、皆の寝息やいびきが聞こえる中、ゴソゴソと誰かが動き回る音がした。
薄らと目を開けて見れば音の主は水津で、小さな声で何とかかんとか言いながらも柔らかい笑みを浮かべなから皆の布団を掛け直して歩いていた。
自分の方に来た時は慌てて目を瞑り、轟々といびきをかくフリをしていれば、水津はくす、と笑った後布団を掛け直して、今度は隣の円堂の布団を掛け直していた。
それから円堂の布団をぽんぽんとリズム良く叩きながら、何かに思いを馳せるように呟いてはため息をついていた。
『みんなが傷つくのは嫌なんだけどな...きっとみんな正々堂々立ち向かうんだろうなぁ。私も、覚悟を決めなきゃな...』
そう言ったのは聞き取れた。
「水津は、誰よりも俺たちが傷付くのを嫌う奴だ」
あんな優しい顔でみんなに布団かけて回ってた奴が、裏切る事にショックを受けた。けど、先程、忘れ物をしてロッカールームに戻った時にマネージャー達が話していた内容を聞いてしまった。
「アイツは俺たちを裏切ってなんかない。世宇子中の秘密を探るために影山の元に...!」
そう言った染岡の顔の前に鬼道は待てと言わんばかりに掌を突き出した。
「静かにしろ。それ以上は何も言うな」
「なんでだよ」
「分かっている。俺も響木監督も」
小声でそう言って鬼道は目線を反対のフィールドに立つ世宇子中の奴らへと向けた。
「分かってるって...」
「あの作戦会議の後も、永遠と守備メインにしろだの、出来れば極力世宇子の奴らと接触しないプレイをしろだの言われてな。理由を問い詰めた」
鬼道と響木が水津から聞いた話は自分が潜入し、人知を超えた力の理由を調べてそれを警察に突き出すからそれまで怪我をするなと言うめちゃくちゃな物だった。
「危険だからやめろと言ったが、まさか今日強行するとはな」
はあ、と鬼道はため息を吐き染岡を見た。
「水津が俺たちの為に潜入したの確かだろうが、ここでアイツの言う怪我しないプレイングをしていては、恐らく世宇子中の奴らに気づかれる。何かを待っている、と。そうなれば、水津は更に危ない目に合うかもしれん。だからこそ俺たちは全力のプレイで奴らの目を引き付けなければならん」
「...、わかったよ。他の奴らは知らねぇよな?」
「ああ、言わない方がいい。水津の裏切りで俺たちが動揺している、と言うのも目に見えた方が怪しまれないだろう」
了解と頷き、染岡はセンターラインに戻り、鬼道も自分のポジションに着く。
「鬼道と何を話していた?」
隣に立つ豪炎寺がそう聞いてきた。
「水津の馬鹿をぶん殴る為に全力で世宇子に勝つって話だ」
そう言えば豪炎寺は、フッといつものスカした感じで笑った。
「そうだな」
審判がホイッスルを吹きながら大きく片手を掲げた。
《さあ!試合開始です!》
世宇子中からのキックオフでヘラが軽く蹴ったボールをデメテルが受け取りそれは後ろのアフロディに回されて、染岡と豪炎寺かボールを奪いに駆け上がった。
「決勝に進んできたのが雷門とはこれも因縁か...。だが、ある意味理想の相手かもしれん。プロジェクトZを達成するためのデータを得るためには...」
薄暗い部屋の真ん中で、フン、と鼻で笑い影山はモニターを見つめている。そう言えばプロジェクトZって結局どっちの研究の前進なんだろうか。まあどちらにせよサッカー選手を兵器にしようなどというとんでも実験な訳だけれど...。
モニターに大きく映ったアフロディは足元にボールがあるにも関わらず動かないでいる。彼は天高く左腕を上げパチンと指を鳴らした、と思ったら次の瞬間にはもうボールを奪いに来ていた染岡と豪炎寺の後ろに居てそして驚いた彼らを吹き飛ばした後は呑気に歩いてボールを運んでいる。
『ヘブンズタイムか』
時空操作ってとんだチート技だよね。これも神のアクアの力なんだろうけど...。
早くその神のアクアを何とかしないと。
画面では今度は鬼道と一ノ瀬が同じように一瞬で移動したアフロディに吹き飛ばされいる。
本当なら試合が始まる前に神のアクアをさせたかったんだけど、予想外に早急に試合が始まったからな。今までの試合は両チームのアップを挟んでから試合スタートだったが世宇子中はアップをせずに始めた。まあそれだけ雷門を舐め腐ってるし、神のアクアの力にすがってるんだろうけど。
今度は壁山と土門が吹き飛ばされて、ついにアフロディは円堂の正面に立つ。そこから彼は輝かしい白い羽を広げて宙に飛びった。
『ゴッドノウズ...』
アフロディが放った必殺技に円堂はゴッドハンドで立ち向かう。
だが、ゴッドハンドはパリンと割れて、円堂はボールごとゴールに突き刺さった。
「フッ」
愉快そうに影山が笑う。
円堂...、みんな...。
今度は雷門からのキックオフで染岡と豪炎寺が駆け上がる。
だが、世宇子中イレブンは1人として動くことなく2人を素通りさせる。
ゴールに向かってドラゴントルネードを2人が打てば初めてキーパーが動いた。
キーパーのポセイドンが大きく両手を地に叩きつければどこからともなく波の壁が現れて、ドラゴントルネードを防いだ。
ボールを止めて見せたポセイドンは、豪炎寺へとボールを投げつけ人差し指指をクイクイと曲げまるで打ってみろと言わんばかりの挑発をした。
それに対し雷門側は、鬼道を中心とし一ノ瀬と豪炎寺で皇帝ペンギン2号を放つ。しかしペンギンも波の壁に阻まれ止められてしまう。
そしてポセイドンはまたボールを雷門に返す。
今度は、一ノ瀬と土門、円堂がザ・フェニックスを打つ。
飛んで行ったフェニックスは、ポセイドンの拳で地に叩きつけれられて、抑え込まれボールは地面にめり込んだ。
アニメの展開そのものだ。
このままでは、やはりみんなが怪我をする。だから鬼道には言ったんだけどなぁ...。やっぱり考え直してはくれなかったか。
眉間に皺を寄せ画面を見つめていれば、後ろからコンコン、と音がした。
「総帥。時間です」
扉越しのその声に、影山は振り向きもせず入れと声をかける。
失礼します、と入ってきたのは1人の黒服の男。
その男は深々と頭を下げたあと、影山に近付いて両手を差し出した。
影山はモニターに映るデメテルがダッシュストームで雷門DF陣を吹き飛ばすのを見た後、愉快そうに口元を歪ませながら振り返って黒服の手の上にカードキーを乗せた。
「確かに。承りました」
そう言って黒服はお辞儀をして、失礼しますと背を向けて扉に向かう。
いや、これチャンスでは。
いつもの如くポケットにねじ込んでいた手のひらサイズのリフティングボール。
それを足元に置く。
不審な動きに気がついた影山が、む、と声を上げたが遅い。
大きく足を振り上げて、蹴りあげたリフティングボールは黒服の後頭部に直撃して、その瞬間走る。
捕まえようと伸ばした影山の手をすり抜けて、後頭部直撃し倒れた黒服の手からカードキーを奪う。
「貴様...ハナからそれが目的か?」
『ええ』
「総帥!何事ですか!」
バンッと勢いよく扉が開けられ、ガードマンの2人が入ってきて、倒れた黒服と私を見た。
やべっ。
「捕まえろ」
端的な影山の指示でガードマン2人がにじりよってきた。
ジリジリと私が後ろに下がればガードマン2人もついてくる。
いや馬鹿かよ?
そのまま扉の前に居たら逃げ道を塞げたでしょうよ。
こんなチャンス逃す手はない。
こちとらサッカーの練習に付き合ってて、無論フェイント練習もやってるんだよ。1回左に行くと見せかけて、右に重心を移せば、それを読んだガードマン達は右で挟み撃ちにしようとして来た。
「逃がさん」
『はあ、わかったよ』
やれやれと両手を真上に上げて降参のポーズを取る。
「よし、そのまま大人しくしろ」
ガードマンの1人が手を伸ばした瞬間、右に身体を大きく傾けてそれを振り上げて、左側に側転した。
「なっ!?」
そりゃあ一介の少女がまさか側転で逃げるなんて思わないだろう。
驚いてる隙にそのまま、誰も居ない扉の向こうにダッシュした。
任務完了
当然待て!と2人のガードマンは追っかけてくる。後はこいつらを撒いて、神のアクアを廃棄するだけだ。