フットボールフロンティア編
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アフロディに連れられて、黒服のガードマンが2人立つ扉の先に通された。
室内は薄暗く、∧記号の様な形をしたデスクの上部にはホログラムの様なモニター数枚あり、そこにグラウンドの様子が写し出されていた。
そのデスクの前の椅子に腰掛け脚を組んでいる男は、アフロディが総帥と声をかけると振り返りニヤリと口角を上げた。
「来たか。円堂守がマジン・ザ・ハンドを完成させられなかった。これは事実だろうな」
影山はそう言って人差し指と中指の間に1枚の封筒を挟んでこちらに見せた。それは合宿の後、私がフットボールフロンティア副会長宛に送り付けた物だった。
『勿論。手紙にも記した通り、合宿までやり、過去イナズマイレブン達が響木正剛と共に特訓したマジン・ザ・ハンド養成マシーンまで使っても完成させることはできませんでしたよ』
全て本当の事だ。真実を話し、まずは影山の信用を得る。
ゲームをやった時の記憶が正しければ、神のアクアを保存してある場所の鍵は影山のデスクの上。だが、アニメ基準で話が進んでいるとなると、影山は試合中この部屋から出ることがない。影山を部屋から追い出すのは難しいし、信用を得て鍵をゲットし神のアクアの保存場所に向かうのが無難だろう。
「まあ、マジン・ザ・ハンドの真偽がどちらであろうと、僕達が負ける事など有り得ませんよ」
ふふふ、と美しく笑うアフロディに、フラグ建設有難うなと心の中で返す。
「そうだ。雷門がどう足掻こうが、神の力を得たお前たちの敵ではないだろう」
「はい。それでは僕は試合の準備に向かいます」
「ああ」
胸に手を当て会釈をしたアフロディは踵を返して扉の外へと出ていった。
『神の力...神のアクアねぇ』
立ち去るアフロディの後ろ姿を見ながら、そう呟けば影山はやはり知っていたか、と言った。
『ええ。所謂ドーピング剤ですよね』
以前チート能力があると伝えて居たからか、対して驚きもしない様子で影山は、ほう、と頷いた。
「どこまで知っている」
『確か、軍事用に開発された物でしたっけ?しかしながら皮肉なネーミングですね。貴方も私と同じで神なんて信じてないでしょうに』
同じか、と言って影山はフッと鼻で笑った。
「神は信じないタチと言って亜風炉の誘いを一蹴したと聞いたが、何故急に心変わりをした」
はあ、とため息を一つ。
聞いてくると思ってた。そりゃそうだ。以前影山から誘ってきた時もあっさりと断った。
『あの馬鹿、人の言う事ちっとも聞きやしないんです』
「あの馬鹿とは」
『円堂守ですよ。彼、無茶苦茶な練習をするんです。過去に私が怪我を負った事は話しましたよね。それもあって私は指導の方に興味があって、雷門に居たのもそれが出来たからなんですけど...』
「言うことを聞かず腹が立ったと?」
『まあ、それもありますが、マジン・ザ・ハンドを完成させられなかった時に思ったんですよ。自分のコーチングでは長らく帝国学園で指導をしてきた貴方にはどうやっても勝てないと』
我ながらベラベラと良く口が回る。
実際、個人でフリスタやってだけの知識のサッカー素人と数十年指導をしていた者では、後者が圧倒的に優れている。
「ほう。それで?」
『だから貴方がどうやって選手を育成するのか見て盗もうかと思って』
「それで雷門を裏切るのか」
『ええ。復讐の為に雷門を裏切った貴方からしたらそんな事でと思うかもしれませんが。私は自分のステップアップの為なら雷門だけでなく貴方も踏み台にするつもりです』
「フッ、私もか。まあ、見て盗むつもりならばそうであろうな」
口角を上げた影山は、くるり、と椅子を回してモニターの方を見つめた。
背を向けたと言うことは、これはそこそこ信用を得たということでは!?
「まずは第1歩としてここで我々が完全なる勝利を収めるところ見ているといい」
『はい。あ、モニター見にくいんでもうちょっと前に行ってもいいですか?』
「...。お前には謙虚さはないのか」
『いずれ貴方も踏み台するって言ってるので今更じゃないですか?』
「それもそうだな。好きにしろ」
『はい!』
歩み寄って影山の隣に立つ。
近くで見てもこのデスク使いづらそうだな。ちらりと横目でカードキーを探す。
「始まるぞ」
もう!?早くない!?
『はい』
あまりデスクをジロジロ見ていても怪しまれるから、大人しくモニターに視線を向ければ、選手達がグラウンドに整列し握手を交わしているところだった。
急がなくては
みんなが大きな怪我を負う前に...。