フットボールフロンティア編
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アフロディが去り寂寂たるグラウンドで、円堂は尻から地に着いた。
『円堂、』
「...なんだよ」
あのまま地面に座ったままの私と同じ目線だと言うのに、ちっとも目線は合いやしない。
他の皆は、先程私が円堂に怒鳴ったのもあり、大丈夫か、と心配そうに見守っている。
『一回目はカット出来てた』
「けど、あれは本気じゃなかっただろ」
むくれた様子で言う円堂にどうだろうね?と返す。
『私はシュートを受けた訳ではないから分からないね。実際どうだったの。へそと尻に力を入れる、だっけ?』
「何か、掴めそうな感じはした」
『そっか』
「...わるかった。後ろに皆がいること考えてなかった」
『そうだね。皆に怪我がなくて良かったよ』
そう言えば円堂はコクリと頷いた。
私が怒った理由もちゃんと理解したみたいだし、反省してるかな。
『秋ちゃん、春奈ちゃん手を貸してくれる?』
腰抜けちゃってさ。そう言えば、あ、うん、と慌てて2人が手を貸してくれる。
「円堂」
「手はいるか?」
向こうでもそう言って、豪炎寺と鬼道が円堂に手を貸している。
新技も出来そうな気がする、そう言って円堂はグラウンドを出て修練場に向かって行く。その後ろを、キャプテン...と心配そうに1年生達と目金がついて行く。
「円堂くん、大丈夫かな...」
『見てて痛々しいよね。時間がないのは分かるけど焦りすぎというか、根を詰めすぎというか...』
本当にどっかのバカを思い出すようだよ。
『御影専農の時も、木戸川の時もあるから意外と血気盛んなのは知ってたけど、あそこまで周りが見えてないのは相当やばい』
「そうか。相当深刻だな」
そう言ったのは、いつの間にやら学校に来ていた響木監督だった。
監督はちょっといいか、と夏未ちゃんを呼んで、何やらヒソヒソと話し始めた。
「しっかし、水津よくアレにタイミング合わせられたよな」
半田にそう言われ、自分でもそう思うと頷く。
『あの時手元にボール持ってなかったら、と思うとゾッとするけどね』
準決勝の世宇子中と刈美庵中との試合の映像を見た事があれば、恐怖でしかない。
私が介入した事で、アフロディが余計な事し出すし本当びっくりしたし怖かったわ。
『でもまあ、皆に怪我なくてよかったよ』
そう言えば風丸が、ああと頷いた。
「水津がボールをぶつけてくれて助かったし、何よりおかげで、軌道を逸らす事はできるって分かったしな」
「けど、試合じゃボールは1つだろ?どうやって逸らすか...」
土門がそう言えば、皆が、うーんと悩むそぶりをみせた。
「あのさ、みんなでこうしててもしょうがないし、悩むより体動かしてみるのがいいんじゃない?」
一ノ瀬がそう言えば、そうだな、と鬼道が頷く。
とりあえず、1年生たち呼び戻そう、ということで一同修練場に向かった。
「マジン・ザ・ハンド!!」
修練場で、キーパー特訓用の自動サッカーマシンから放出されたボールに向かってボロボロの円堂が大きく手を突き出して、その手に触れることなくボールは円堂の顔面にぶち当たった。
それを見て春奈ちゃんが小さく悲鳴をあげる。
『はあ...』
「水津先輩、木野先輩...!」
春奈ちゃんはどうしたら、と言った様子でこちらを振り返った。
隣の秋ちゃんは気遣わしげに円堂の事をじっと見守ってる。
『今、止めに入っても、どうせまた無茶な練習するんだろうしなぁ』
ここ数日、コンコンと言っているのにコレだ。
円堂に着いて行っていた1年生達と目金は、壁際にちょこんと身を寄せあって座っていて、円堂の様子を見てはため気を吐いていた。
「ほらほら、俺達も練習だ!」
土門が声をかければ、沈んでいた1年生たちはゆっくりと顔を上げた。
「座ってたって点は取れないぞ!」
「それはそうでやんすが...」
「相手が相手ですからねぇ...」
そう言った目金に、半田がだから練習するんだろ、と返すが、5人はうーん、と煮え切らない返事をした。
「円堂くん!」
秋ちゃんの声に、円堂の方に視線を戻せば、派手にボールにぶつかってぶっ飛ばされていた。
思わず、と言った様子で駆け出そうとした秋ちゃんに、円堂は来るな!と叫ぶ。
「諦めるもんか...!何がなんでも完成させるんだ...!」
「円堂くん...」
良くないなぁ...。いやここはこうなる話だと分かっているからこそ、やるせないというかなんというか。
「監督...」
不安そうな声で夏未ちゃんが響木監督を見る。
「水津」
監督に名を呼ばれ、なんだ?と思いながら、はい、と返事する。
「お前が言っていた事が正しかったな」
その言葉に何の話だ?と首を傾げていれば、響木監督は皆に集合するように声をかけた。
集まった皆を前に、響木監督は1泊2日の合宿を提案した。
「合宿?」
円堂が首を傾げれば、響木監督はああ、と頷いた。
「学校に泊まってみんなで飯でも作ってな」
その言葉に、円堂は、え?と呟いて眉をひそめた。
「許可は私が取っておきました」
合宿という言葉に、1年生達は楽しみだと浮かれた声を上げる。
「待ってください、監督」
浮かれた声を遮るように、明るさのない円堂の声に、1年生達は、え...、と静まり返った。
「飯でも作るって...そんな呑気な事言ってる場合じゃ...。世宇子との試合は明後日なんですよ...!それまでにマジン・ザ・ハンドを完成させないと」
「出来るのか?」
響木監督がそう言えば、円堂は、えっ、と顔を上げた。
「今の練習で必殺技を完成させる事が」
「なっ、だから!それはやってみないと!」
「無理だ!」
キッパリと響木監督がそう言えば、円堂は、驚きでぽっかりと口を開けた。
そりゃ驚くよなぁ。木戸川清修戦前に雷雷軒でミーティングしたときに響木監督は、練習は嘘をつかないと言ってたのに、ここに来て否定されるんだもんなぁ。
「むり...?」
「マジン・ザ・ハンドは大介さんが血のにじむような努力をして作り上げた幻の必殺技。闇雲に練習して完成出来るほど甘い技ではない。それに今のお前は必殺技の事で頭が凝り固まっている。そんな状態で完成させることは不可能だ」
「確かに、1度マジンザハンドの事を忘れてみるのもいいかもしれないな」
鬼道がそう言えば、円堂は、な!?と驚いたように振り返る。
「水津が前に言っていただろう。練習も時と場合に寄っては裏切ると」
ああ、と響木監督が頷くのを見て先程言ってたのは、それかと納得する。
まあ今の円堂の練習は身になってるかっていうと微妙そうだもんね。
『円堂。体を休める事も、ご飯を食べて栄養を付けることも選手としてはとっても大事な事だよ』
「う、」
押し黙った円堂を見て今がチャンスと夏未ちゃんにアイコンタクトを取れば、彼女は頷いた後パンパンと2回手を叩いた。
「それじゃあ、合宿と言うことで決まりね」
「みんな、用意をして5時に集合だ」
静かにぐっと拳を握る円堂とは裏腹に、はーい!という1年生達の元気の良い返事が修練場内に鳴り響くのだった。
合宿やろうぜ!
とりあえず一時帰宅して、風呂はいってこよう!