フットボールフロンティア編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ため息が出るほど美しい少年が空から現れて、本当にため息を吐いた。
『今日だったか、』
現れた美少年は、キーパー練として円堂へと向かった、ドラゴントルネードとツインブーストの2つのシュートを素手で意図も容易く止めた。
「お前!すげぇキーパーだな!」
ワクワクとした様子で円堂が美少年に声をかければ、彼はボール止めたまま金の長い髪を揺らして後ろを振り向いた。
「いや、私はキーパーではないよ。我がチームのキーパーならばこんなボール指1本で止めてみせるだろう」
そう言いながら美少年は、指の先にボールを乗せてクルクルと回して遊び始めた。
「そのチームってのは世宇子中の事だろう。アフロディ」
いつもより一段と低い声で、鬼道がそう美少年の名を呼びつけると、サッカー部のみんなから驚きの声が上がり、フッと笑ったアフロディは指に乗せたボールを1つ弾き落として、もうひとつを腕に抱えた。
弾かれてグラウンドから私の方へと転がってきたボールを拾い上げれば、アフロディは一瞬だけこちらを見て笑った後、円堂に向き直した。
「円堂守くんだね?改めて自己紹介させてもらう。世宇子中のアフロディだ。君の事は影山総帥から聞いている」
「やはり...世宇子中には影山がいるのか」
睨みつけるように鬼道が言う横で、染岡がてめぇ!と声を荒らげた。
「宣戦布告に来やがったのか!!」
「宣戦布告?ふふふっ」
「何がおかしい...!!」
「宣戦布告と言うのは戦う為にするもの。私は君達と戦うつもりはないよ。君たちは戦わない方がいい。それが君たちの為だ」
目を細めて蔑むかの様な瞳でアフロディは雷門イレブン達を見た。
何故だよ!と一ノ瀬が聞けば、アフロディはゆっくりと瞬きした。
「何故って?負けるからさ」
何を言ってんだ、と言った空気が雷門イレブン側に走るが、そんなものはお構いなく、アフロディは言葉を続けた。
「神と人間が戦っても勝敗は見えている」
「自分が神とだとでも言うつもりかよ!!」
怒る一ノ瀬に対してアフロディは、さあ、どうだろうね?とすっとぼけるように返して笑った。
「試合はやってみなくちゃ分からないぞ!」
「そうかな?リンゴは木から落ちるだろう?世の中には逆らえない事実と言うものがあるんだ。ふっ、そこにいる鬼道有人くんが1番よく知っていると思うよ?」
わざと煽るように鬼道を名指しすれば、鬼道は今にも殴りかからん勢いで飛び出そうとして、それを豪炎寺が抑える。
「だから練習もやめたまえ。神と人間の溝は練習では埋められるものじゃないよ。無駄な事さ」
アフロディの言葉をうるさい、と一喝して円堂はギュッと拳を握った。
「無駄だなんて誰にも言わせない!練習はおにぎりだ!俺たちの血となり肉となるんだ!!」
「ああ。あはははは!」
怖いくらいの表情をした円堂に対して、アフロディは爽やかに笑い返す。
「上手いこというね!なるほど、練習はおにぎり、か。ふふふ」
「笑うとこじゃねーぞ」
円堂が睨みつければ、アフロディはしょうがないなぁと、抱えていたボールを持ち替えて、足元に落下させた。
「じゃあそれが無駄な事だと証明してあげる、よ」
そう言うや否や。アフロディはボールを反対のゴールの方へ高く蹴りあげ、一瞬のうちに蹴りあげたボールの元に回り込んだ。
「いつの間に!?」
皆が目をかっぴらいて驚く中、アフロディは空中で軽々とボールを蹴った。
向かってくるシュートに、円堂は急いで構える。
必殺技でもなんでもないはずのそのシュートは、一気に弾速を上げ円堂の前に飛び出した。
「どりゃ!」
両手を前に突き出して、円堂がボールに触れて踏ん張るが、シュートの威力でジリジリと押し返される。
「うわぁ!」
円堂は後ろのゴールへと吹き飛ばされたけれどボールは何とか弾かれて、ゴールには入らなかった。
円堂!と皆が声を上げて倒れた彼の元に向かう。
大丈夫かと取り囲んだ皆に、ゆっくりと目を開けた円堂は、退けよ!と怒鳴って皆のことを手で払った。
「来いよ!!もう1発!!」
今までにない、円堂の様子に皆が一瞬驚き、怯み、その間に、のっそりと立ち上がった円堂がアフロディに向かって歩き出す。
「今の本気じゃないだろ!本気でドンと来いよ!」
ぐらりと揺れて円堂は片膝を着くが、それでも尚、真っ直ぐアフロディを睨みつけている。随分と怖い顔だ。
「あはは!面白い!神のボールをカットしたのは君が始めてだ!」
そう言って笑ってアフロディは、ゴールに入らなかったボールを拾い上げた。
本来ならここで、アフロディは決勝が楽しみになってきたと笑って帰るはずだった。
だけど、彼はあろう事か、ボールを先程と同じように、わざわざ反対側のゴール前に飛ばして、瞬間移動した。
ちょっと待て、マジでふざけんな!
今の状況分かってる!?皆が円堂を心配してゴール前に集まったままだ。このままだと皆が危ない。あの帝国を壊滅させたシュートだぞ。
アフロディが大きく足を振り上げる。逃げてなんて叫んでも間に合わない。
アフロディの足が振り下ろされた。
『一か八か!』
何もしないよりはいいと、先程拾ったボールを足元に置いて、狙いを定める。
『今!』
持てる全力でシュートを蹴る。
ボールは真っ直ぐに飛んでいき、目の前を過ぎようとしたアフロディの蹴ったボールへとバチンと大きな音を立ててぶつかり、弾かれた。
「へぇ、」
アフロディのシュートの方が圧倒的に強すぎて威力こそ殺せなかったが、ぶつかった事によりシュートコースを大きく逸らして、ぐん、と曲がったボールは、コーナーの方へ飛んで行って、グラウンドの先の生垣を破壊した。
『いや、怖っ』
理事長ごめん。でもみんなの命のが大事だから。
「水津なんで!」
止める気でいた円堂がそう声を上げた。
『現にろくに立てもしないのに無茶言わないで!みんなを危険に晒すな!!』
怒れば、円堂はぐっ、と押し黙った。
それを見てアフロディは、あははと笑い声を上げていて、再び円堂に睨まれている。
「面白い。流石水津梅雨さん。影山総帥が気に入るはずだ」
そう言って、アフロディはふんわりと宙から私の前に降り立った。
『影山さんに気に入られてるって1ミリも分かんないんだけど何それ』
気に入られるような事はしてないと思うが。むしろ地雷踏み抜いてる方だと思うんだけど。
「そう?そういう所だと思うよ。現に私のシュートも瞬時に止めるではなく逸らすことに決めた。素晴らしい判断能力だね」
『私はキーパーでも強いシュートを打てるFWでもないからね』
「フリースタイラーなんだって?」
『それがなにか?』
なんだ、今度はフリースタイルもバカにするつもりか!?そう身構えたらアフロディはふふ、と美しく笑った。
「自由な女神か。悪くないね。どうだい?今なら私のチームに入れてあげるよ」
その言葉に、何っ!?と雷門イレブン達から声が上がった。
『お生憎、私は神は信じない質で。お断りさせていただくわ』
「そう。残念だな」
1ミリも思ってなさそうな顔でアフロディはそう言って、とん、と踵を浮かしてつま先から後ろへと飛んだ。
「まあ、もし決勝戦までに気が変わって入りたくなったら言ってよ。それと、円堂くん」
未だ睨みつける円堂にアフロディは満面の笑みを浮かべる。
「決勝戦楽しみにしてるよ」
そう言って眩い光と花弁を舞い散らせながらアフロディは姿を消した。
「...なんて奴だ」
『はあ...怖、』
ぺたり、とグラウンドに座り込む。
「梅雨ちゃん大丈夫?」
心配そうに秋ちゃんが駆け寄ってきてくれる。
いやマジで、異世界転生の主人公並のチート能力とか欲しかったわ今。私だってそれくらいあれば、シュート蹴り返したわ!マジで逸らすの上手く行って良かった...。フリスタで空間認識能力とか上がってて良かったと思う...。
『...大丈夫。だけど、』
美少年恐怖症
になりそう。流石のラスボスの風格だった。