フットボールフロンティア編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
校内に入り下駄箱で靴を上履きに履き替えながら、ふぁああ、と欠伸をひとつ。
「眠そうだな」
ふ、と鼻で笑いながらいうそんな声に廊下の方を見れば、既に上履きに履き替えた豪炎寺が立っていた。
『おはよう』
「どうせ遅くまでゲームやってたんだろ」
今度は後ろからそんな声がして振り返れば、下駄箱の前に染岡が居た。
「ほら、邪魔だからさっさと退け」
クラス別に下駄箱は別れていて、あいうえお順に振り分けられてるので、さ行の染岡は下駄箱の上の方だから、私退かなくても変えられると思うんだけどなぁ。背も高いし。
そう思ってぼんやりと染岡を見ていたら、少し顔を赤く染めた。
「な、なんだよ!」
『ん、いや。背高くてかっこいいな、と思っただけ』
そう言えば、染岡は更に顔を赤く染めて、はあ!?と大きな声を上げた。
『染岡、うるさい』
「いや、今のはお前が...!」
真っ赤な顔で、はくはく、と口を開けたり閉めたり、水から出された金魚みたいで可愛いなぁ。
ぶぶっ、と豪炎寺が吹き出す。その様子を見て腕で口元を隠しては居るものの笑いを耐えている様子だった。
「豪炎寺!」
「いや、すまない」
染岡が怒鳴れば、半笑いで豪炎寺は謝る。
『ふぁあ。とにかくここに居たら他の子の邪魔になるし、さっさと教室行こうよ』
2人にそう声をかけて歩きだせば、後ろから染岡にお前なぁ〜!と私も怒鳴られる。なんでだ。
「水津、今日ずいぶんと寝ぼけてるな」
隣を歩きながら豪炎寺が、そう言って顔を見つめてきた。
てか、眠いけど、寝ぼけてはないと思うんだけど。
「何時間ゲームしてたんだよ」
後ろから付いてきて呆れ気味に言う染岡にいやいやと首を振る。
『昨日はやってないよ。円堂の練習に付き合ってて...』
ふぁ、と欠伸を噛み殺す。
「円堂の?」
『ん。昨日鉄塔広場でめちゃくちゃな練習やってたからさ』
円堂のめちゃくちゃな練習法に心当たりがある2人は、あー、と唸って頷いた。
「そりゃあ、お前はほっとかねぇわなぁ」
「水津は世話焼きだからな」
『世話焼きと言うかただのお節介だし、怪我をして欲しくないってエゴだけどね。...それが一生懸命やってるみんなの士気を下げたり邪魔になってるのも分かってるんだけどね』
本来は、みんな怪我とかそんなの気にせず全力でやってるところを、部外者の私が茶々を入れてる。それはずっと気がかりでいるけれど、自分の本質的に口に出さずにいられないというか...。
「邪魔じゃねぇよ」
染岡がそう言ってくれて、え?と振り返る。
「お前が怪我の心配してるってのはみんな分かってるし、怪我して試合に出られないんじゃ元も子もないってのは間違っちゃいないしな」
『染岡...』
「もしかして水津、それで気にやんで寝られなかったのか?」
豪炎寺が心配そうな顔でそう聞いてきたので、いや違う違うと手を振る。
『そんな繊細じゃないよ。私じゃなくて、円堂が昨日練習付き合ってた間もやっぱりどこか元気なくてさ。今の練習法じゃダメだって焦ってもいたから、とりあえず円堂が無茶苦茶をしないでいいように個人トレーニングメモの改良してたら寝るの結構いい時間になっちゃった』
「そうか」
「お前、また前みたいに風邪ひくぞ」
『うん分かってるけど、これくらいしか出来ないからさ』
マジン・ザ・ハンドに関してはどうすればいいか知ってるけど教える訳にもいかないし。
「十分だ。トレーニングメモは実際役に立ってる」
『そう?』
そう言われると嬉しいな。
「ああ。勉強しながら出来る筋トレとかな」
「あれな。授業中やっても意外とバレねぇよな」
『筋トレできるだけじゃなくて、血流がアップすることで脳に血が回って記憶力や集中力が高まるから勉強にもいいんだよ』
マジかよ?と聞いてきた染岡に、マジマジと返す。
「円堂の役に立つといいな」
『えっ、流石に円堂の勉強の部分は保証しかねる』
「いや、そっちじゃなくてな。まあそれもあればいいんだろうが」
ふふ、と豪炎寺は小さく笑ってから、サッカーの方だと付け足した。
『ああ、サッカーの方ね。そうね、そうだといいな』
「ああ。じゃあ、また部活でな」
ちょうど私らの教室の前にたどり着いて、別クラスである豪炎寺は、またなと片手を上げて自身の教室の方へ向かって行く。
それを見たあと開けっ放しにされた教室のドアをくぐった。
「水津さん、少しいいかしら」
昼休み。なんだか少し元気がないような夏未ちゃんにそう声をかけられて、理事長室に向かった。
『どうしたの?まさか、理事長に何かあった』
そう聞けば夏未ちゃんは、えっ、と驚いたような顔をした後、ふるふると首を横に振った。
「父は大丈夫よ。経過も良好だし」
『そう。なら良かった』
じゃあ、元気がないのは...。
『円堂関連かな...』
「えっ。呼び出しした理由よくわかったわね」
いや、まあ夏未ちゃんの元気がなくなるイベントと言えば、お父様の事か円堂の事だからなぁ。
「やっぱり貴女、何か、知ってるのね」
確信を持ったように夏未ちゃんはそう言い切った。何かどころか全部知ってるんたけどね。
「イナズマイレブンの過去の事も早くから調べていたみたいだったし。土門くんに二重スパイをけしかけた理由も、影山の事も危険人物だと知っていたから、と言っていたわよね」
『うん』
言ったね、確か。
「なら、円堂くんのおじい様の事も、何か知っていて?」
『円堂大介さん、か』
ええ、と夏未ちゃんが頷く。
何かって言うのは、伝説のイナズマイレブンの監督で、とかそんな情報ではないんだろうな。
『...影山との関係性、とか?』
「やっぱり何か知ってるのね!」
『いや?先の話からすれば、夏未ちゃんが聞きたいのはそういう事かな、と思って。逆に夏未ちゃんは何か知ってるの?』
「...昨日、父と鬼瓦刑事から聞いたの。円堂くんのおじい様の死に、影山が関わってるんじゃないかって。お父様は会場視察の後その事を調べていて、事故にあったそうなの」
『...そっか』
夏未ちゃんは頭のいい子だから、恐らく理事長の事故に影山が関わっているのは察しているだろう。
「水津さんも、影山の事を色々調べていたみたいだから、気をつけて」
『え、ああ、うん』
「このことは、まだハッキリと分かってる事じゃないから円堂くんには内密にしておいてちょうだい」
そう言われて、うん、と頷く。
『夏未ちゃんもあんまり、心配しすぎて気に病んだらだめだよ』
「ええ。ありがとう。急に呼び出してごめんなさいね」
『ううん。大丈夫だよ。それじゃあ私は教室に戻るね』
失礼しましたと、梅雨が部屋を出た後、夏未はおおきくため息を吐いた後、スカートのポケットから携帯電話を取り出して、ある人に連絡を取った。
「もしもし、雷門夏未です。はい。誤魔化されましたけど、やっぱりなにか知っている様子でした。ええ。円堂くんのおじい様の事を話して見たんですが、特段驚いた様子もなかったので、恐らく...。はい、失礼します」
そう言って夏未は通話を切って、理事長室のドアの向こうを眺めるのだった。
「いったい、彼女はいつから何を知ってるの?」
思えば、帝国学園が豪炎寺目当てに試合を挑んできた時もそうだ。帝国の目的をいち早く知っていた。
イナズマイレブンについて調べていたという話も、彼女は古株さんから聞いたあとに調べたと言っていたが、後に古株さんから聞いた話だと、彼女はその時点で、バス事故の事を知っている様子だったという。
そして、スパイ騒動の時にも言ったが、彼女自身の過去の情報が全く分からないのだ。父に聞けど、知り合いの娘さんだよ、としか返ってこない。
水津梅雨はいったい何者なのか。
募る不信感
放課後梅雨の元に1件のメールが届いた。梅雨はそれにいつもの場所で、と返信した。