フットボールフロンティア編
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「後半は染岡のワントップで行こう」
鬼道のその言葉に、やっぱり半田が噛み付いた。
鬼道の考えた作戦は、無限の壁を使う4番と5番の選手を引き剥がす為、あえてFWを染岡1人にして囮にするというものだった。
「豪炎寺を下げるって、本当にそれでいいのかよ!?そんなの俺たちのサッカーじゃない!!」
両手でぎゅっと拳を握りしめ、半田は声を強くする。
「豪炎寺と染岡のツートップ。それが俺たちのサッカーだろ!!」
半田の語りかけに、幾人かの選手達がどよめく。確かに雷門は今までフォーメーションを変えず、ずっとこのツートップ制で来た。
「確かにそれはそうでやんすが...」
「分かってないな」
鬼道がそう言えば、何っと半田は彼を睨みつけた。
「いいか。ここはフットボールフロンティア。全国の強豪が雌雄を決する全国大会。そしてそのピッチに今お前たちは立っている!もうお仲間サッカーなどしている場合じゃない」
その言葉に、半田だけでなく皆絶句している。
鬼道の言うことは間違っては居ないんだけど、如何せん言葉が強すぎる。
「お前たちは全国レベルなんだ!」
シーンと黙ったままの皆の様子を見てため息を吐く。
感情論に感情論をぶつけても意味がない。感情論は共感することが大事だと何かの本で読んだ気がする。
『みんな。唐突なフォーメーション変更で戸惑うのは分かるよ』
水津さん...と1年生達が不安そうに見てきた。2年生達がギャンギャン言い争ってるとそりゃあ困るよね。
『けどね、豪炎寺を下げるのは染岡を囮に使うだけじゃなくて、もうひとつ利点があるでしょ』
ね、鬼道と彼の方を見れば、半田からそっちの味方するのかよとでも言わんばかりに睨まれる。
「...ああ。豪炎寺の必殺技はディフェンダーと協力して行うものが多い」
イナズマ落とし、イナズマ1号、イナズマ1号落とし、炎の風見鶏...どれもDFの壁山か風丸、そしてGKの円堂が関わってくる。
『そう言った点で、DFとの距離が近い配置になれば攻撃の手段も増やしやすい』
何も考え無しでこの案をあげているわけではないと強調してやれば、鬼道はそういう事だ、と頷いている。
半田以外の選手達はそれなら確かに...と意見が傾き始めている。
「頼んだぞ」
豪炎寺が染岡を見てそう言えば、彼は、ああ!とサムズアップした。
「豪炎寺...!?」
「やってみようぜ、半田」
ポンと円堂が半田の肩に手を置けば、致し方なくといったように半田は、わかったよと頷くのだった。
後半戦開始して、鬼道の作戦通り、染岡がシュートを打つために前線に上がったと見せかけて4番の選手をペナルティエリアから自分の方へと引き付けた。その隙に鬼道は染岡とは逆サイドにいる豪炎寺と壁山へセンタリングを上げた。
2人がイナズマ落としを放って、ボールはゴールへと飛んでいく。決まった!と思ったが寸前で、無限の壁を発動され止められてしまった。
「さっきまで染岡さんに釣られてたのに!」
宍戸の言葉に、最近ではベンチに居ても敵を観察しチャンスを探るという事を覚えた影野がコクコクと頷いた。
「あのディフェンダー足が早い...」
『それもあるけど、判断が早いよね』
「確かに。お兄ちゃんがボールを豪炎寺さんにパスした時にはもう動き出してました!」
これまた兄に似て観察眼が鋭い春奈ちゃんがそう言った。
「...一筋縄では行かなそうね」
再びボール得た鬼道は風丸と豪炎寺にパス出す。だがしかし炎の風見鶏も無限の壁で止められてしまう。
イナズマ落としは壁山にゴール前まで上がってきてもらって放つ技だしセンターライン前後から放つと威力が落ちて止められるのは仕方がないと思うが元々ロングシュートである炎の風見鶏も止めてしまうか...。
「松野!円堂にバックパスだ!」
染岡にマークが2人付いたのを見て鬼道は指示を出す。
円堂がペナルティエリアから出て、豪炎寺と共にボールを蹴った。
飛んで行ったイナズマ1号は、またも発動された無限の壁にぶつかって弾かれて、ゴールラインを出ていった。
イナズマ1号は御影専農戦で下鶴改のパトリオットシュートを返す為に生み出したカウンター技だ。あの時はゴールを押し破ったが、やはり相手の技の威力をも利用した上でのカウンター技なので、今回の普通のパスからのイナズマ1号だと威力が足りないのだろう。
「このまま負けちゃうのかな...」
不安そうに宍戸が見つめるフィールドでは選手達が戦意喪失していた。
「おい、みんな!どうしたんだよ!?」
円堂が大きな声で叫ぶ。
「何へこんでんだ!まさか諦めたなんて言うんじゃないだろうな!まだ試合は終わってないんだぞ!!」
土門、栗松、風丸、と選手達の名を呼んで円堂は叱責する。
「でも、無限の壁が破れないんじゃ...」
「やっぱり必要なんだよ必殺技が...」
松野が落ち込み、土門もそういう言う。
「必殺技ならある!」
円堂の力強いその言葉に、皆がえ?と顔をあげて彼を見た。
「俺たちの必殺技は炎の風見鶏でもイナズマ1号でもない!俺たちの本当の必殺技は最後まで諦めない気持ちなんだ!」
何かに気付かされた、そんなハッとした表情にみんなの顔つきが変わる。
「帝国と戦った時からずっとそうだった!尾刈斗中の時も、野生中の時も、御影専農の時も秋葉名戸の時も!戦国伊賀島の時だって!!諦めなかったからここまで来られたんだろ!!」
円堂はぐっと拳を握って力説する。
「俺は諦めない。諦めたらそこで終わりなんだ!」
そうだ。棒バスケットボール漫画の先生だって諦めたらそこで試合終了だって言ってた。
「そんなの俺たちのサッカーじゃない!!俺たちのサッカーは絶対に最後まで諦めない事、だろ!?だったらやろうぜ最後まで!!俺たちのサッカーを!!!」
「俺たちのサッカー...」
そう。帝国学園にボコボコにされた最初の試合。あの時だって20点取られても、円堂は諦めずにゴールの前に立っていた。
「円堂...!」
「キャプテン...!」
それぞれが、円堂を呼び力強く頷いた。
「よし。残り5分、全力で行くぞ!」
鬼道も雷門イレブンに感化されたのか、力強く拳を掲げて見せ、皆もおお!と頷いてフィールドに散る。
半田のコーナーキックから、雷門は円堂を含め全員で攻撃に転じる。
パスにドリブル、フェイント、持てる技術の全てを使って千羽山にボールを渡さないように攻め上がる。だが半田からパスを受け取った鬼道に3人のマークが即座に付きかごめかごめで囲われる。
鬼道は自分に3人もの選手が付いていることでディフェンスが薄くなっている事を逆手に取り、今だと言わんばかりに、ボールを上空に蹴りあげた。
高く上がったボールに、円堂と豪炎寺、そして鬼道が飛び上がってゴールに向かって蹴り落とした。
イナズマ1号になんとなくデスゾーンの禍々しさを足したようなシュートが、千羽山が発動した無限の壁にぶつかった。
行け!とみんなが念じる中、イナズマ1号よりも威力の増したその技は無限の壁を打ち砕き、ボールをゴールへと押し込んだ。
その事に、会場が1度シーンと静まり返った。
《...ハッ!む、無限の壁が破られたー!!千羽山遂に失点!無失点記録が途絶えたぞ!!》
実況の角間さんも驚いて居たようだが、そのアナウンスの後、会場からは大きな拍手が送られる。
やったやった!と喜ぶ春奈ちゃんと秋ちゃんに私と夏未ちゃんがも引っ張り上げられ、一緒に喜ぶ。
「無限の壁をブレイク...突き崩す...。これこそまさにイナズマブレイク!」
後ろで目金がなんか言ってたが、無視をしてキャッキャ言ってる女の子達と喜んでいたら、聞いてくださいよー!と怒られた。
そのまま試合はアディショナルタイムに突入する。現状1対1だ。これで巻き返せば勝てる。
無限の壁が破られ、今まで無失点だった記録が途絶えた事によりショックを受けたのか、戦意喪失気味になった千羽山の隙を付いてパスを通して染岡にセンタリングが上がる。
「ドラゴンクラッシュ!!」
再び、無限の壁を出す気力も無くなってしまったのか、ドラゴンクラッシュは意図も簡単に千羽山のGKの横を掠めてゴールに刺さった。
よっしゃー!やったー!と雷門イレブン達が喜び合う中、試合終了のホイッスルが鳴り響くのだった。
皆がベンチに戻ってくると、宍戸がいの一番に駆け出してキャプテン!と円堂に抱きついた。
「勝ったんすね!俺たち勝ったんっすね!!!」
喜ぶ宍戸を可愛い後輩だなと横目に見つつ、帰ってきたみんなにタオルを渡して歩く。
『はい、鬼道。どうだった?』
どうぞ、とタオルを手渡しながら聞けば、鬼道はフッと笑った。
「いいチームだな」
『でしょう』
「あのさ、」
鬼道とは違う声にそう言われ、後ろを振り向く。
『半田。お疲れ様』
ポンと彼の肩にタオルを乗せてポンと叩いて、他のメンバーへとタオルを渡しに向かう。
「...鬼道、悪かったよ」
背後で半田が謝る声が聞こえた。
「いや、気にするな」
少しだけ振り返って見れば2人が握手を交わしていて、良かったな、とひと息ついて、仕事に戻るのだった。
壁の崩壊
ロッカールームを出る前に、鬼道から貸した服が返されて、その袋の中に礼だと1冊の冊子が入っていた。