フットボールフロンティア編
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全国大会2回戦の対戦相手は、鉄壁のディフェンスを誇る千羽山中。
先の本戦1回戦目も、そしてこれまでの地区大会の間も無失点で、1点も許していない強固な壁。それをいかにして突破するかと雷門中は必死に特訓を行っていた。
「フッ、ハッ、チャア!!」
少林寺が功夫の構えからヘディングでシュートを決める。
「名ずけて!クンフーヘッド!」
「なんか名前つけるのも段々早くなったんじゃないですか」
少林寺がそう聞けば、目金はフフフと怪しく笑った。
「特訓の成果ですよ」
「特訓?」
「ありとあらゆるゲームをやり込み漫画を読み、必殺技の名前を日々研究しているのです!」
「そんなの特訓じゃなくいつもやってる事では」
少林寺の的確なツッコミに、ピシリと固まってしまった目金の頭にポンと記録用バインダーを乗せる。
『ほら目金サボってないでパス練行って』
「サボってないです!僕は新必殺技の名前を...!」
はいはい、と頷いて、目金のユニホームのユニホームを掴む。
『至高の装備集め手伝ったげるから部活もサボらず頑張ろうね』
「えっ!本当ですか!...じゃなくて!僕はサボってなんかないですよ!!!」
手足をバタバタさせる目金を見て、少林寺がアハハ...と呆れたように笑った。
目金を引っ張ってパス練組の方へ連れて行けば、ちょうど宍戸が風丸にパスを出すところだった。
いち、に、さん、とタイミングを計り蹴りあげたボールは風丸の方へ飛んでいき、そして走る彼の足元ではなく、後ろに落ちた。
宍戸があれ?と首を傾げる。
「何やってんだよ」
「すみません。いつもみたいにパスしたつもりなんですけど...」
宍戸はおかしいなぁと首を傾げている。
ふむ、そっか。これがあったな。忘れてた。
『目金もパス練混ざっといで』
「あ、はい」
目金を離して、自分はベンチに戻る。
「壁山ヘディングー!!」
ベンチに戻る中、上げられたボールをヘディングで受け止めようとした壁山が顔面セーブをして後ろに倒れてドシンと地が揺れる。
『大丈夫!?』
慌てて駆け寄れば、宍戸と風丸、それに少林寺も駆けてきた。
「何やってんだよぉ、壁山...」
「おかっしいなぁ...いつもみたいにやったんスけど」
起こすのはマズイか?聞いてきた風丸に、意識がハッキリしてるから大丈夫よ、と答えれば、壁山の巨体を起こそうと、男の子たち3人が必死に引っ張りだした。
やれやれと、その様子を見る端で、栗松と土門もパス練をしていて、
土門からの強すぎるパスに栗松がギャーっと悲鳴を上げて避けていた。
「染岡!ドラゴントルネードだ!」
ゴール前では、半田が染岡にセンタリングを上げて染岡のドラゴンクラッシュから豪炎寺がファイアトルネードを放つ。だが、そのボールは完全なドラゴントルネードにならず、しゅるしゅると音を立て勢いが弱まり、ゴール前に立つ円堂の横を掠めて行った。
「えっ...。あ!点入れられちゃった。あははは...」
流石の円堂も、驚きでシュート反応出来なかったようで、渇いた笑い声をあげる。
「もう一度だ」
「おう!」
そう言って染岡と豪炎寺は再びドラゴントルネードを円堂に向かって打つ。
しかし結果は先程と同じ、ドラゴントルネードにならず飛んで行ったボールは今度こそ円堂にがっしりと受け止められてしまった。
「何故決まらないんだ...」
「俺の蹴りが甘かったか?」
染岡の問に、豪炎寺はいや、と首を振る。
「お前の蹴りは完璧だった。俺のも...なのに、何故?」
「調子悪いのか?まっ、頑張ろうぜ!千羽山中が相手なんだから!」
円堂が笑顔でそう言えば、2人は困ったように眉をひそめた。そりゃあそうだ。2人とも絶好調なはずなのだから。それなのにドラゴントルネードは決まらない。
「水津!」
『へっ?』
「ちょっと来てくれ!」
豪炎寺にそう呼ばれ、ここで呼ばれるのかと頭を抱えて彼らの元に向かう。
原因わかってるからこそ困るんだよなぁ。
「今の見てただろう。どう思う」
『えっ、えーと...』
「なんだよ。ダメなところがあるならハッキリ言えよ」
染岡にそう言われて、参ったなと頭を搔く。彼らにソレを教えるのは私の役目じゃないしなぁ。
『うーん、ダメなところがないから困ってるというか...。それは2人の方が分かってるんじゃない?』
「...ああ。俺のファイアトルネードも、染岡のドラゴンクラッシュも完璧だった」
「今までは決まってただろ。なんで急に」
正直よくよく考えれば、前回の戦国伊賀島戦から兆しはあったのだ。前半戦で2人が撃ったドラゴントルネードは止められたが後半の最後、豪炎寺が1人で撃ったファイアトルネードは点が決まっていた。
それを説明するにしても...。
『うーん...』
「引き止めて悪かったな。もしまた何か気づいたら教えてくれ」
『あ、うん』
そう言って、パタパタと走ってマネージャー達と響木監督が何やら話をしているベンチに戻る。
「あ、おかえりなさい。水津さん」
秋ちゃんの言葉にただいまと返して響木監督の隣に座る。
「豪炎寺と染岡はどうだ?」
『2人とも、互いが現状の最高のプレイをしているのは理解してるみたいですけど、なぜそれで噛み合わないのかは理解してないみたいですね』
「貴女、みんなのパスや連携が上手くいってない原因知ってたの?」
夏未ちゃんが驚いたようにそう言ってきて、うん、と頷く。
『個人の能力強化が著しいし、それも皆が均等にレベルアップしてる訳じゃない。修練場でやるメニューや私が提示してる筋トレも選手に寄ってまちまちだし。自分が何となく足が早くなったかな?と思っても周りの子達もそこそこ早くなってたら、凄く早くなった事には気づきにくいだろうし』
難しい問題だよね、そう言えば、はあ、と夏未ちゃんはため息を吐く。
「貴女、気づいていたなら何故早く言わないの。早くに修練場を禁止にしていたらこんな事には...」
『いや、修練場でのレベルアップなしで、千羽山中は倒せないよ』
そう言えば、横で響木監督も頷いた。
「ああ。分かったところでこればっかりはどうしようもないしな。とにかく先程も言ったように、お前たちは普段通り接してやれ」
はい、と頷いて、秋ちゃんと春奈ちゃんはそろそろ休憩時間に入るからと準備を始める。
「本当にどうにも出来ないものなの?貴女なら的確に彼らに教えれるんじゃなくて?」
『うーん、私じゃ試合で一緒にピッチには立てないし』
「ああ、水津の指示に慣れて、試合で何も出来ないでは困るしな」
響木監督の言葉にそうそうと頷く。
「今までは、風丸くんが指示出すこと多かったじゃない?彼に教えるとか」
『んー。風丸はDFの指揮は取れるけど、的確な指示と言った場合はちょっと違うんだよね。今回の件は、ほぼ全選手に起こってる事だから、全体を見渡せる目を持った選手出ないと』
「ウチにそんな選手は、いないわね」
『そうなんだよね。どっかでスカウトしてくるか...』
どっかってかスカウトしたい子は決まってるんだけどね。
「スカウトか。なるほど」
その手もあるなと響木監督は考え出す。
「そうは言ってもこの時期に他の部から急に引き抜くのは難しいですよ」
『入部申請って夏未ちゃんにでいいんだよね』
「え?ええ、生徒会の管轄ですからね」
うん、なら大丈夫だ。
夏未ちゃんは、私の転校の時も、豪炎寺の転校の時も理事長の手伝いをしてたし、彼の転校手続きも言えばできるだろう。
「心当たりがあるの?」
『うん。1人だけ』
それは誰?と聞かれて、口元に人差し指を持っていった。
秘密
そう言えば夏未ちゃんはため息を吐いた後、直ぐに入部できるよう、手続きは用意しておくわと言った。いやぁ、頼りになる。