フットボールフロンティア編
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理事長の意識は戻ったが、まだ暫くは入院になるらしく娘である夏未ちゃんは父の代わりに出来る事をするとサッカー部や生徒会の仕事だけでなく理事長の仕事も請け負って忙しくしている。
病院への見舞いもあるだろうし、サッカー部は顔が出せる時でいいよと伝えてある。彼女の分も頑張って選手達の尻たたきをしなければ。
『はい、豪炎寺。風邪ひかないようにタオルで汗拭いてね』
「ああ」
イナビカリ修練場では円堂と豪炎寺、それと染岡と壁山が特訓に励み、他のメンバーは外での練習を行っていてこちらは秋ちゃんがついて行ってる。
そんな中、修練場内の自動ドアがシュンと音を立て開いた。
「て、帝国学園が!」
そう言って飛び込んできたのは春奈ちゃんで、扉の近くにいた私と豪炎寺、それに円堂が振り返る。
「初戦突破か!」
よし!と豪炎寺よ手のひらに拳をぶつける円堂を見て思わず顔をしかめる。
帝国学園は...。
「10対0で...」
「結構な点差だな!」
「世宇子中に、完敗しました...」
その言葉に、修練場に居た皆がえっ、と特訓の手を止めた。
「嘘だろ、音無」
「ガセじゃねえのか!?あの帝国が初戦で負けるはずねぇだろ!」
染岡と壁山が装置から飛び降りてやって来る。
「それも10対0って帝国が1点も取れないなんて、ありえないっスよ!?」
「音無、どういう事だ!?」
「それが、見た事のない技が次々と決まって帝国が手も足も出なかったそうです...」
知っていたからこそ、簡単に想像出来るその光景に、頭が痛くなる。
「あの帝国が...」
「そんなわけない!帝国だぞ!アイツらの強さは戦った俺たちがよく知ってる!アイツら本気で強いんだ!鬼道が居るんだぞ!」
『円堂、春奈ちゃんに当たっても』
噛み付く勢いで、怒鳴る円堂をどうどうと止める。
「お兄ちゃん...出なかったんです...」
え?と皆が聞き返した。
「お兄ちゃんウチとの試合で怪我したじゃないですか」
『右足痛めてたもんね』
「はい...。相手はノーマークの学校だったから大事を取って控えに回ってたんです。そしたら相手が圧倒的で...傷を押して、お兄ちゃんが出ようとした時には...」
段々と声がか細くなっていく春奈ちゃんの背中に手を置く。
心情を考えたらしんどいだろうな。
「あの鬼道が...。そんなこと絶対ありえない!!」
『円堂、いい加減になさい。誰が1番辛いか考えたら分かるでしょ』
そうは言えば円堂はグッと唇を噛んだ。
「なんで水津はそんな冷静なんだよっ!」
「キャプテン、落ち着いて欲しいっス」
「落ち着いて居られるか!鬼道たちが完敗なんて...!ありえねぇ!」
そう言って円堂は修練場を飛び出して行く。
「円堂!!」
「キャプテン!!」
染岡と壁山が声をかけたが、円堂は止まらず行ってしまった。
『あのサッカー馬鹿...』
やれやれと頭を抱えた後、春奈ちゃんを見る。
『大丈夫?円堂は多分帝国学園に向かったと思うけど、気になるなら春奈ちゃんも』
そう言えば、ううんと春奈ちゃんは頭を振った。
「今あっても、なんて声をかけたらいいか...」
『そうだよね...』
試合に出て、ボコボコにされた側なら相手が強かったとでも言えるが、試合に出れもしないでチームメイトがボコボコにされる姿を見ているしかなかったものに、ましてやその怪我の原因を作った試合の対戦相手なのに何が言えるのか。
「俺たちがここでこうしてても意味は無いだろ」
豪炎寺がそう言えば、そうだなと染岡が頷く。
「練習再開するか」
「はいっス...」
再び装置に向かう皆の背中を見守る。
円堂だけでなく皆もまた帝国と戦いたいと思っていただろうし、それぞれに思うところはあるだろう。
哀憐の情を抱く
私たちが嘆いたところで何も変わりはしないのだけれど。