フットボールフロンティア編

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こちらの世界に来て2週間が過ぎた。
最初の3日間くらいまでは、転校生という理由で目立っては居たが、今ではそれも落ち着き、特に大きな出来事もなく順調に学生生活を送っている。

本日も授業を終え、部活動に入っている者達がいそいそと教室を出ていく中で、のんびりと鞄に教科書を詰めた後、帰宅部として揚々と学校を出た。

帰路に着きながら、思考を巡らす。
この2週間の間に、まず自分の状態を調べた。
何故か若返った上、若干髪色や瞳の色が変わった上で雷門中に2年生として転入。ここまではまあ当日に得た情報である。
トリップの要因はわらない。現世で死んだ記憶がないので所謂転生ではないと思う。
髪や目の2Pカラー変更感からまず、自身に似た人物への意識交換トリップもしくは成り代わりトリップと言うやつではないかと思い、雷門理事長から受け取った書類の保護者のサイン欄を見た。

押された印鑑は私の苗字と同じ水津の文字で、無論直筆だと思われるサインの苗字も水津だ。しかし名の方は、現世での両親の名前とは全く違う、【神代】という名前が記入されていた。
かみしろ?かみよ?じんだい?どう読む名前なのか男性なのか女性なのか、そもそもこの身体の両親なのか判断は付かずじまいだ。
恐らく木枯らし荘に住むための契約書もこの神代が手続きしているはずなので、ヨネさんに聞いてみれば早いが自分の保護者が父親か母親か?などと聞くのは大変おかしな話で、こちらから話を振れれずにいる。
家族写真とかないのかと思い、部屋に用意されていた私用の荷物の中を調べたが家族写真やアルバムのようなものは一切見つからなかった。
まあ、もしその神代が本当にこの身体の親であるならば、連絡を寄越してくるかもしれないしその時は「お母さんから電話よ」とかヨネさんが言ってくれるだろう...とも思ったが2週間立っても一人暮らし始めた娘に連絡1回もない親なんて居るんか?ネグレクトか?とも思いつつある。
育児放棄の気も強いのかなと思ったのは、私の鞄に預金通帳が入っており、そこにトリップの翌日に10万程振り込まれてたので(どう考えても子供のお小遣いの額ではない)、金だけやるから1人で暮らしな、感がやべぇなと思ったからである。
まあ、結局トリップしてきた理由も、この身体の親事情も全く分からずじまいで......

『!!!』

ぼんやりと河川敷の横を通り過ぎていた私の斜め前から白と黒の所謂サッカーボールが勢いよく飛んできた。
咄嗟にボールとの距離を測って2歩下がって体を引く。
トン、とボールが胸にぶつかって上に跳ね上がる。
重力に従って落ちてきたボールを右足の靴の内側面で蹴りあげて、今度はそれを右膝に落とし跳ね上げさせて、頭に落としそれから身体を折って背中でボールキャッチした。

ぱちぱち、ぺちぺちと、2つの可愛らしい拍手が鳴った。
背中に腕を回し、ボールを取って、真っ直ぐ姿勢を戻したそこには、綺麗に切りそろえた茶髪を小さなツインテールにしてる小学生の女の子と、青いバンダナを巻いた小学生の男の子が居た。

「お姉ちゃんすっごーい!!」

そう言って拍手をくれる2人は赤いサッカーユニホームを着ていてその胸元にはKFCと書かれている。
あーーー見覚えがあるなぁ。

『このボールは君たちの?』

「うん、そうだよ」

『そっか。危ないから気をつけてやるんだよ』

どうぞ、とボールを男の子に手渡しする。

「うん!ありがとう」

「りゅうのすけちゃんってばヘッタクソだからすぐ変な所に飛ばすのよね~」

「なんだとー!!」

『ああ、コラコラ。喧嘩しないのよ』

どうどう、と鎮れば、男の子はムッと頬をふくらませて黙った。

『上手になる為に今、練習してるんでしょう?頑張ってね』

よしよしとバンダナの上から頭を撫でる。

「うん。あのさ...お姉ちゃんもサッカーやってるの?」

『え?あーー、ちょこっとだけね』

小さく親指と人差し指の間に隙間を作って見せる。

「ちょこっとって嘘でしょ!さっきのアレすっごく上手だったもん!!」

『ああ、リフティングね』

「そう!!リフティング!!」

女の子は大きく頭を揺らしながら頷いて、それから私の両手を両手で取った。

「ねえ、お姉ちゃん!そのリフティング、まこに教えて!!」

『え″』

思わず変な声が出る。あはー、やっぱりこの子、如月まこちゃんだったか。

「俺にも!!」

男の子の方も手に持ったボールをずい、と前に突き出した。つーことは、りゅうのすけちゃん...この子は間竜介だな。
アニメではそこまで絡みはないがゲームでは戦うことのできる稲妻KFCの子供たちかぁ...。

2人がキラキラとした眼差しを向けて来て断る事はできなかった。

『わかったよ。ただここは道路に近くて危ないから君たちの練習場に連れてってくれる?』

やったー!と2人は喜んで、こっちだよ!!と竜介か走り出す。

「あっ、りゅうのすけちゃん待ちなさいよ!!もう!!お姉ちゃん行こう」

まこちゃんに手を引かれて河川敷へと降りていった。








『そうそう、足の甲、そうここにボールを当てるの』

集まった稲妻KFCの子供達にわかりやすいように自身の履いてる靴の靴紐が交差している部分を指さす。

『最初はお腹の高さからボールを落として』

手に持ったサッカーボールで実践する。


『1回地面に跳ね返らせてそれを足の甲に乗せ、て、今度は反対の足の甲に乗せる。これの繰り返し』

ぽんぽんぽんぽんと繰り返し左右の足でリフティングを繰り替えせば、小さな眼差しが沢山集まった。

『これが基本のリフティングね。サッカーやってるからこれくらいは出来るよって子もいるかな』

出来るよ、と1人2人手が上がる。

『出来ない子はまずはこのリフティングの練習ね。100交互に出来たらいいかな。もう出来る子はつま先でちょんちょんリフティングの練習やろうか』

つま先でやるこのちょんちょんリフティングが意外とフリースタイルフットボールでは使うことが多い。

「ちょんちょんリフティング?」

『んっとね、やるから見ててね』

基本のリフティングの時と同じようにお腹の辺りからボールを落として、地面に跳ね返らせて浮いたボールを右足のつま先乗せてそれをちょんちょんと小さく突くように片足立ちでそれをずっと続ける。

『で、これができるようになったら...、よっと!』

途中でちょんちょんリフティングをしていた右足を内から外へとボールの外周で回してまた同じ足でリフティングを再開する。

『こういう、技も入れていけるようになるよ』

すっごーい!と子供達から拍手が頂ける。
褒められて気分いいので、子供達にエンターテインメントを少し見せてあげよう。

続けたままの片足リフティングを左右交互に変え、外から中へとボールの外周で足を潜らせるレッグオーバーを決め、軽く4、5回左右でリフティングをしたら、片方の足のかかととふくらはぎの間にボールを挟むゾイドと呼ばれる技でボールの動きを止め、止めたボールをゆっくりと足の合間に流し両足でがっしりと挟み込み、そのまま思いっきり後ろへとバック宙で飛び上がってボールを真上で離して、ばっ、と両腕を伸ばして着地した。

「す、すっげーーー!!!」

KFCの子供の方からではない、大きな声が響いた。
突然の部外者からの声に子供も、え?と固まってしまっていた。

「すげー!すげぇ、すげー!」

繰り返し発言されるすげー!の声の主の方を向けば、オレンジのバンダナを額に巻いた男子と、その後ろの数歩引いた所に立ったヘアピンのついた緑髪の女子が立っていた。

「円堂ちゃんだ~!」

わー、とまこちゃんが手を振る。
円堂ちゃんだ~ではない。1番関わってはダメな主人公のお出ましではないか。今日はグラウンド交渉諦めるの早くない??なんでこんな放課後すぐ河川敷来てるの。

「おう!まこ、今日も練習混ぜてくれるか!!」

「もちろんいいよ!!」

まこちゃんと会話しながらバンダナ男子円堂はこちらに近づいてきて、私の両腕をがっしりと掴んだ。

「なぁなぁ、さっきのすっげぇな!!サッカーやってるのか!?その制服雷門のだよな??」

『え、ありがとう?サッカーやってるってかフリスタをやってる。制服は雷門中のだね』

バンダナ男子の勢いに気圧されながら、質問に答える。

「フリスタ?」

『フリースタイルフットボール。さっきのみたいなやつ』

「リフティングとダンスやアクロバットを織り交ぜた競技だよ、円堂くん」

「ああ!」

緑髪の女子の説明に、あれか!と円堂は頷いた。

「俺、雷門中2年円堂守!!サッカー部のキャプテンやってるんだ!」

うむ。知っているよ。
グローブをはめた手を差し出されたので、握り返す。

水津梅雨。あー...同じく2年生だよ』

「そうなのか!同じ学年にこんなサッカー上手いやついるの知らなかったな~」

『あー、うん、』

「円堂くん円堂くん」

ちょいちょいと、円堂のユニホームを後ろの女子が引っ張る。

「どうしたんだ木野?」

「円堂くん、彼女、2週間前に染岡くんのクラスに転入してきた子よ」

「あー!!そうだったのか!!」

円堂がそりゃあ知らないわけだな、とうんうんと頭を揺らした。

「私、同じ2年生の木野秋よ。サッカー部でマネージャーをしてるの。私も小さい頃にサッカーやってたから女の子でサッカーやってる子に会えて嬉しいわ」

にこやかに笑って手を差し出される。

『へぇ~、そうなんだ』

うん、ごめんね。勝手に貴女の事も、貴女がサッカー辞めた理由も知ってるよ。

『こちらこそ会えて光栄だよ』

そう言って手を握り返した。

「ねーねー、円堂ちゃん達お話終わった?」

「おう!」

「じゃあ、お姉ちゃん!さっきの続き!リフティングのやり方教えて~」

『え、あー、はいはい』

そういえば、この子らのリフティング講師してたんだったわ。
先程バク宙の大技バックフリップリリースで、飛ばしたボールをいつの間にか拾ってきたまこちゃんに、早く早くと急かされる。

「なぁ、水津!俺も一緒にやってもいいか?」

『えっ、』

「え、ダメか?」

しゅん、と円堂の表情が捨てられた子犬みたいになった。
なんでそんな顔するの。断るの無理、良心が痛む。極力関わらないってコレもう出来なくない??

『...リフティング練習だけど、いいの?』

「おう!リフティングはボールコントロール身に付けるのにいい練習になるよな!!」

『あー、そうね』

キーパーの練習にはあんまならないけどいいのか。
しかし、これ逃げられないね。寧ろここで折れないと、彼が転入してきた時みたいに今後付きまとわれそうだな。

『それじゃあ...、一緒にサッカーやろうぜ』

そう言えば、円堂の顔がパァーっと輝いた。

「おう!」

良かったね、円堂くんと後ろで秋ちゃんが微笑んでいた。




逃げるコマンドの喪失
今日はエンカウント率が高すぎる。
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