フットボールフロンティア編
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朝、病室に寄ればベッドの上に点滴や心拍計に繋がれた理事長が寝かされていて、椅子に座った夏未ちゃんが不安そうにじっと理事長を見つめていた。
『夏未ちゃん、これ栄養ドリンクと飴とチョコレート』
そう言ってコンビニのビニール袋を夏未ちゃんに手渡す。
「えっ、」
『ちゃんとした食事は場寅さんが持ってきて来るだろうけど、もし食事が喉を通らないようなら糖分を摂取するだけでも違うから』
そう説明すれば、彼女はありがとうとビニール袋を受け取った。
制服のままだし、昨日は病院に泊まったのかな。
『お父さんの事、心配だろうけど途中でちゃんと仮眠取りなさいね』
「...ええ」
『じゃあ、私は会場に向かうけど...あっ、テレビカードの使い方わかる?』
「もう、そのくらいは分かります。...みんなのことよろしくね」
不安そうに顔を見上げた夏未ちゃんに心配するな、と彼女の頭を撫でて踵を返す。
『じゃあ、行ってくるね』
「あ、待って、水津さん。1つお願いがあるのだけれど...」
お願い?と首を傾げれば、ゆっくりと夏未ちゃんは口を開いたのだった。
病院寄っていくからと、皆とは現地集合すると言って別行動にしたのだが、大事な日に限って渋滞する...!会場までタクシーで行こうとしたのが間違いだったか。電車にしとけばよかった。
もう開会式は始まってしまってるのではないだろうか。
会場前に到着したタクシーをお金を払って慌てて降りて、会場入口を目指して走る。
『あれ...?』
入口のドアの前に立って電話をしている男性を見つけて思わず声に出す。
『鬼瓦さん、』
「ん?...ああ、ああ」
電話口でそう言いながら、鬼瓦刑事少し待てと言うように私に手のひらを見せた。
「分かった。直ぐに戻る。ああ」
ピッと電話を切った鬼瓦刑事は、嬢ちゃんと言って近づいてきた。
「開会式始まってるぞ」
『ああ、やっぱり...。病院寄ってから出たら渋滞巻き込まれちゃって』
「なるほどな」
そう言って鬼瓦刑事は、ん、と何か悩むような素振りを見せた。
「...、嬢ちゃん、嫌な予感が当たっちまった」
『...影山、ですか?』
まあ、そうじゃなきゃ話的には困るんだけど。
「ああ。時期に報道もあるだろうが、奴が釈放された」
『そうですか』
「...驚かないのか?」
鬼瓦刑事が怪訝そうにこちらを見た。
『え?』
あっ、そうか。普通は影山が釈放になったとか言ったら、なんで!?って驚く所か...!知ってた事が仇となったな。
『いや...あの事件を40年隠し続けた影山ならそれくらいの事やってのけそうだなと思ってしまって』
「...確かにな」
『保釈金が支払われたんですか?』
「いや。証拠不十分での釈放になったらしい」
保釈保証金を支払っての保釈なら、警察側が海外への渡航を禁止したり、家の前にカメラを設置したりの制限を設けることができるはず。だが、そうではないということは...。
『だとしたら、完全に警察の手を離れますね』
「ああ。だから、今度こそ奴がなにをしてくるか分からん。嬢ちゃんは確か前に影山に接触を図られたと言っていたな」
『えっ、はい』
頷けば、鬼瓦刑事は胸ポケットから小さなメモ帳とペンを取り出して、そこに何かを書いて、ちぎったそれを私の方へと突き出した。
「俺の連絡先だ。もし、また奴が接触してきて、可能であればここに連絡をくれ」
『あ、はい』
ありがとうございます、とその小さなメモを受け取ってスカートのポケットに忍ばせる。
よっしゃ。鬼瓦さんの連絡先ゲットとか後々便利じゃない?やったぜ。
「じゃあ、俺はそろそろ行く。サッカー部の子供達に頑張れと伝えてくれ」
『はい。ありがとうございます』
ぺこりと頭を下げれば、鬼瓦刑事はじゃあな、と走り去って行った。
『......、あ!開会式終わっちゃう!』
見送ってる場合じゃない、と慌てて会場に飛び込んだ。
始まる全国大会
中に入ればちょうど、最後の学校の入場行進で。世宇子中と書かれたプラカードを持つ大会運営側の女性の後には誰もいなくて、そこだけ異彩を放っていた。