フットボールフロンティア編
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『うぎゃ!?』
「うわっ、」
いやはやまさか、曲がり角で美少女とぶつかり尻もちをつくなんて漫画みたいな展開があるなんて思ってもみなかったな。いやここイナイレの世界だから漫画みたいなものか。
アイタタとお尻を擦りながら立ち上がって、ぶつかった相手を見れば...雷門のジャージに身を包んだ、小麦肌の金髪美少女...のような少年がいた。
『あー...』
「痛〜!あなた一体どこ見て歩いてるんですか!」
プンスコと怒りながら立ち上がる少年を見て頭を抱える。
宮坂了。雷門中陸上部所属の1年。めんどくさいのに引っかかったな。
「ちょっと聞いてるんですか!あなたのせいで怪我するところだったじゃないですか!」
『えっ、あ、ごめんね。大丈夫?』
「なんなんですか、あなた。ボーっとして、あなたの方が大丈夫じゃないんじゃないですか」
『え?あー、うん』
ジーっと私を見つめた宮坂は、急にハッとした表情に変わった。
「あなた、サッカー部の...!」
きりりとつり上がった眉と、ジリジリと焦がすかのような目。睨みつけてきた彼に思わず大きなため息を吐く。
宮坂はサッカー部に風丸が取られたと思ってるもんね。陸上部から彼の尊敬する風丸を引き抜いたサッカー部は全員敵なんだろうけど...。
「風丸さんを陸上部に返してください。サッカー部はもう人数揃ったんでしょ?」
『...、そうだね。でも、陸上部に戻るかどうか決めるのは風丸だよ。返してくださいって言われても困るな』
そう言えば、宮坂は少しムッとしたように唇を噛んだ。
「あなた達が引き止めてるんじゃないんですか。風丸さんは優しいから、言い出せないだけで...!」
『そうね、引き止める子も居るかもしれない。優しいから残るかもしれない。でも、それで陸上部に戻るにしろサッカー部に残るにしろ、それは風丸が決めた事でしょう?君がとやかく言うことじゃないよ』
「なっ...」
ぐっ、と悔しそうに宮坂は拳を握っている。
『ねぇ、陸上をやってる時の風丸ってどんな感じ?』
えっ?と宮坂は顔を上げた。
『私はサッカーやってる風丸しか知らないからさ』
「......風丸さんは、とにかく速くてかっこいいんです。練習だって誰よりも真剣に取り組んでるし。全国の選手と渡り合える実力のある人です!」
風丸を語る宮坂の顔がみるみると晴れやかにそして誇らしげになるものだから、思わず笑みが浮かんだ。
『そっか。風丸に憧れてるんだね』
「そうです。風丸さんは凄くかっこいいんです!」
『うん。キミは、サッカーを本気でやってる時の風丸は見たことある?』
そう言って宮坂に背を向けて学校の方に向かって歩き出す。
「...ないですけど」
そう言いながら、3歩後ろから宮坂がついてくる。
『純粋に走るだけなら誰よりも速くて』
「そりゃあそうです。陸上部なんですから!」
『最初は難しそうにしてたけど、練習の成果あって今じゃドリブルしながら走るのも上手になって』
「風丸さんはどんな練習だって真剣にこなしますからね!」
『試合じゃディフェンダーの指揮をとる才も見せてる』
「それは...」
ピタリと立ち止まって、振り返って見る。
『明日の試合、観においで』
そう言えば宮坂は、また拳を握った。
「...さっき、風丸さんにも言われました」
さっき?ああ、なんか河川敷で話をするみたいなシーンがあったんだっけ?
『見てからもう一度、風丸に声掛けてあげてよ』
「...それで風丸さんが陸上部に戻るって言ってもボクは知りませんからね」
『うん。それで陸上部に戻るにしてもそれで風丸が納得してるならいいと思うよ』
「...変わった人ですね」
えっ、変わってるか?普通だと思うんだけどなぁ。
「それじゃあ、ボクは朝練があるんで」
そう言って宮坂は、ビュン、と素早い動きで駆け出して先を行ってしまった。
『速いなぁ...』
ぽつり、と呟いて、のんびりと歩いて学校に向かった。
風吹くままに
この先どうなるのかは私が決めることではなくて。