フットボールフロンティア編
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校内のグラウンドで豪炎寺と風丸の炎の風見鶏の特訓が続く中、理事長がサッカー部の様子を見にやってこられた。
部員達に労いの言葉をかけた後、理事長は見たいものがあるとサッカー部の部室に向かった。
「うむ...これは年季物だ」
「部室を見たかったんですか?」
「かなり古いと夏未から聞いていてね」
「我々の時代からの部室ですからね」
響木さんがそう言えば、私以外のサッカー部一同は、ええ!?と驚きの声を上げる。
そうだったの!?と皆が驚いてる中響木さんは部室の中に入り、ボール籠など中の物を動かして、ほら、と壁を手で指した。
「こんな落書きも残っている」
そこに書かれているのは、俺たちは逃げたんじゃない!という文字。
これを書いた当時はとても悔しかったんだろうな。けれど声を大にして言えない理由があったんだろう。...恐らく裏切った影山、というか、当時中学生だった影山のバックに居た者から脅されてたとか。
『そういう落書きだったらこっちにもあるよ』
ロッカーの横の壁に隠すように書かれた強くなりたいの文字。
部室の清掃したりする時に実はひっそりと見つけて居た。あるのは知ってたしね。
「ああ、懐かしいな。確かあの辺にも...」
どこどこ?と皆が興味津々に部室の中を見て回る。
「気が付かなかったな」
「ああ...俺たちずっとここ使ってたのに」
円堂と共にこのサッカー部を立ち上げた、染岡と半田がそう呟く。
「まさに影の存在」
影野の言葉に、そうだね、と頷いていれば、円堂が嬉しそうに、あ!と声を上げた。
「コイツはじいちゃんのだな!」
「何もかもあの頃のままさ」
「ここにはイナズマイレブンの全てがあるんですな」
そう言いながら理事長は、ボール籠からボールを1つ手に取った。
「選手たちの血と涙と汗を感じます」
そう言って理事長は、手に取ったボールを高い位置から落として右膝でぽんぽんとリフティングしだした。
「やるぅ!」
円堂がそう言えば、理事長は口角を上げ、中々のもんでしょう、と誇らしげに語る。
そうだよね、一応サッカー協会会長なんだよね。
「こう見えて昔からサッカーが好きでね...うぉっ、と!」
話しながらリフティングするのは難しかったのか、途端にバランスを崩し、狭い部室の中、右に左にてんやわんや。慌てて蹴った事により、ボールがあらぬ方向へと飛んだ。
『よっ、と...!』
円堂の眼前に脚を伸ばして、ぶつかる寸前でボールを止めて、そのままリフティングを引き継げは、突然の事にビックリしたのか円堂は後ろに尻もちをついた。
『円堂大丈夫...?』
「ああ、ちょっとビックリした!」
「すまん...」
理事長が謝る後ろで夏未ちゃんがやれやれと頭を抱えている。
二三回ポンポンと、リフティングを繰り返した後手の中にボールを収めてボール籠に戻しに行く。
「ところで、これから部員が増えてくることを考えると、ここはもう狭いのではないかね?」
「そう言われれば...」
「確かにここは懐かしい。しかしいつまでも古い物にこだわっていても仕方なかろう。新しい部室を用意したいのだがどうかな?サッカー部復活のお祝いと、全国大会出場のご褒美と思ってくれたまえ」
理事長のその言葉に1年生達が、すっげー!理事長太っ腹と大喜びする。
「俺このままでいい」
円堂がそう言えば1年生達は、ええっー!と叫び、恐らく彼らに新しい部室をと理事長に進言してくれたのであろう夏未ちゃんが驚いたように彼を見た。
「この部室は試合も出来なかったころの俺たちの事も、昔のイナズマイレブンの事もみんな知ってる。それにこうして仲間も増えてきた。この部室は雷門イレブンの歴史そのものなんだ!俺たちの大事な仲間なんだよ!」
円堂の言葉に2年生達は、うんうんと頷いたり、口角を上げた。
「円堂の言う通りかもしれねぇな」
「この部室に全国優勝のトロフィー飾ってやろうぜ!」
「おお!それいい考え!」
「キャプテン...!分かったでやんす!」
選手たちがそう言う中、夏未ちゃんがマネージャー達に貴女たちもそれでいいの?と言ったように見つめてきた。
秋ちゃんはこの部の創設に関わってたかからきっとこの部室に愛着あるだろうし、春奈ちゃんはこう見えて熱血タイプなので円堂の理論が刺さっていて反対ではないだろう。
私は、本来ならそりゃあ新しくて綺麗な部室の方がいいし、なんなら匂いの籠らないように通気性のいい建物を希望する所だが、この部室は円堂の言ったように皆の思い出だし、なによりゲームやアニメでずっと見てきた私の思い出でもある。
いいよ、と言うように頷けば、そう、と夏未ちゃんは困ったように眉を下げた。
「俺たちもそれでいいです!」
1年生達も納得したように円堂にそう言えば、円堂は嬉しそうに笑った。
「みんな!ありがとう!」
「これが円堂守。イナズマイレブン監督、円堂大介の孫ですよ」
みんなに囲まれる円堂を見つめながら、響木さんが呟いた。
それから練習再開しようぜ!と皆が部室を飛び出して行く。
選手たちを筆頭に後からマネージャー達も追いかけて出ていく中、1番最後に部室を出れば、前にいる夏未ちゃんが、はあ、と大きなため息を吐いた。
「まだここを使うのね...」
そう言って肩を落とす夏未ちゃんの元に先を行ったはずの円堂が駆け足で戻ってきた。
「お前の親父さん良い奴だよな!」
それだけ言って早々に立ち去った円堂に困惑したように夏未ちゃんは、ありがとうと返す。
『夏未ちゃんが理事長に部室の事、進言してくれたんでしょ?それなのにごめんね』
「え?ええまあ...。けど仕方ないわ、みんながここでいいんなら」
『ありがとうね』
そう言って頭を撫でれば、もう!と怒られる。
そうしていれば、後ろから理事長が夏未と彼女を呼んだ。
「マネージャーを買ってでた理由がよく分かったよ」
その言葉に、夏未ちゃんはふふ、と笑みを零した。
「水津くんも、学校には馴染めたかい?」
『はい。お陰様で』
「いやぁ、夏未からフリースタイルをやるとは聞いてはいたが、さっきのリフティングも素晴らしかった」
ありがとうございます、とお辞儀をする。
「さて、じゃあ私も仕事に戻るとしよう。2人とも、マネージャーとして頑張るんだよ」
そう言って理事長が手を振って教員駐車場のある裏門の方へ歩きだせば、響木さんが車まで送りますよと慌てて隣を歩く。
「じゃあ、私達もグラウンドに戻りましょうか」
『そうだね』
正門側にあるグラウンドに向かって歩き出して、思わず足を止める。
「ああ、明日は大会の会場の視察に行く予定でね」
「そうですか」
なんて、理事長と響木さんの話し声が聞こえたからだ。
すっかり、忘れていた。
慌てて、振り返って2人の元に駆け出せば、後ろから夏未ちゃんが驚いたように私の名を呼んだが、無視して2人の元に向かう。
『理事長!』
「どうしたんだ、水津」
驚いたように響木さんと、理事長が振り返った。
「何か要件があったかね?」
わざわざ足を止めてくれて、理事長はこちらに向き直ってくれた。
『理事長!明日、気をつけて下さい!!』
「気をつける?何にだ?」
『それは...!』
思わず反応してここまで来たが。
言ってしまっていいのだろうか?
「水津くん?」
フットボールフロンティアの全国大会で使う会場の下見の帰りに事故に遭う。
もし、それを伝えてしまったことにより、私が関わったことにより、話が書き変わるとする。理事長がそれで怪我をしない方に変わるのならいいが、もし、万が一、命を落とすような方向に変わってしまったら?
そう思ったら次の言葉が出てこなかった。
『......っ、』
「水津?なんだ、どうした?」
響木さんも近くに寄って、心配そうに声をかけてくれる。
『...あ、いえ、その...』
「何かあるのか?」
『...その、嫌な予感がします。だから...理事長、気をつけてください』
ふむ?と困ったように響木さんと理事長が顔を見合わせている。
深く内容は言えないから、これでどうにかならないか。
「...そうか。ありがとう。気をつけるよ」
そう言って理事長はぽん、と私の頭に手を置いた。
『はい...。本当にお気をつけて』
そう声をかければ、ああ、ありがとうと言って理事長は去っていった。
「もう、水津さん、急に走って父に何か用だったの?」
後ろから夏未ちゃんがやって来て、不思議そうな顔をした。
『あ...うん。夏未ちゃん、』
頑張ろうね
これから何が起きようと一緒に支えるから。