ホーリーロード編
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雷門対月山国光の結果は雷門の勝利に終わった。
試合後半、雷門に点を返され越された月山国光は、これまでのフィフスセクターの指示での試合に慣れきったせいで本当の逆境に立たされたことがなかったからか明らかに士気が落ち動きが悪くなった。
だが、そんな中でもたった1人でボールに喰らいついたのは、元雷門の南沢篤志だった。そんな彼の行動に触発されて、士気を取り戻した月山国光の選手達は最後まで雷門と熱い試合を繰り広げた。
監督の近藤までも選手達の熱に当てられたのか、本当のサッカーを思い出したと、言いフィフスセクターからの脱退を告げてきた。わざわざ連絡をしてきたのは、武士道からか。
まあ、連絡をくれたのが私で良かったよ。他の者だったら直ちに監督差し替えになっていただろう。
私が月山国光が反乱分子に下ったことを隠蔽工作している間に、豪炎寺の方は円堂が謁見に現れたらしい。
『あー、やっぱりバレバレだったんだ』
「まあ、どう見てもお兄ちゃんだし」
豪炎寺家で食卓を囲みながら報告会を行っているので、私だけでなく夕香ちゃんからもツッコミが入る。
「他の人ならともかくとして、付き合い長い円堂くん
ならバレるでしょ」
『へー、中学卒業してからも付き合いあったんだ』
「まあ、サッカーを続けてればな」
高校が違っても試合で会ったりするもんなぁ、と納得すれば、夕香ちゃんがふふふと笑っている。
「結婚式に呼ばれるくらいには頻繁に会ってた癖に」
『へー、結婚式に……』
オウム返しのように呟いたあと、ん?と思考が停止する。
『えっ!?結婚式!?』
勢いよく机に手をついて身を乗り出すようにして豪炎寺を見る。
『誰の!?』
「そりゃあ、円堂の」
『誰と!?』
「雷門と」
『雷門って夏未ちゃん!?』
ああと頷く豪炎寺を見ながら、ゆっくりと席に座り直す。
『まじか……いや、まあそこがくっ付くのが妥当ちゃ妥当だけど……』
秋ちゃんとか冬花ちゃん、とか色々言いたいこともあるが……。
『早くない結婚!?』
「そうか?いや、まあ周りと比べたらそうか。円堂たちは付き合って長かったからな。早いイメージじゃなかったな」
『そうなんだ……結婚か……』
婚期……う、頭が……。数年前から周りの友達が次々と結婚していったのを思い出して頭が痛いぜ。いや、痛いのは心かも。
「フッ、安心しろ」
小さく笑う豪炎寺の声に、なに?と顔をあげる。
「染岡はまだ結婚してないぞ」
『なっ、ん、ゴボゴボッ』
豪炎寺の突然の発言に驚いて、思わず噎せてしまう。
「大丈夫、梅雨ちゃん!」
夕香ちゃんが慌ててお水をグラスに注いで持ってきてくれる。
ありがとうとそれを貰って一気に飲み干す。
『あーもう。びっくりした。なんなの突然』
「いや、知りたいかと思ってな」
『それは……、まあ、知りたいか知りたくないかと言えば、ねぇ』
ゴニョゴニョとそう言えば、豪炎寺はまた笑っている。
「へぇ〜、梅雨ちゃんって染岡選手の事が好きなんだ。いいじゃない!染岡選手って言えば、今やイタリアのプロリーガーでしょ!」
『ええ!?プロ!?しかもイタリアの!?』
凄いじゃん、ホントなのと豪炎寺を見れば、彼はああと頷いている。
『そっかぁ……プロかぁ……』
彼が努力の人なのは知っている。豪炎寺や吹雪に追いつこうといつもがむしゃらに特訓していたのを見ていた。
だから彼がプロになった事がとても嬉しい。嬉しいはずなのに、その過程を見届ける事が出来なかったことに少しだけ悲しみを覚える。
「水津?」
『え、ああ……イタリアでって凄いなと思って。だってサッカーの本場だよ!?』
「ああ、そうだな。実は染岡だけじゃなく、鬼道もイタリアでプレイしてたんだがな」
『え?それなのに今は雷門でコーチしてるの?』
「ああ。急に帰国して帝国の総帥になり、ホーリーロード予選の帝国と雷門の試合の後から雷門のコーチに変わったんだ」
影山の遺した帝国のサッカーがフィフスセクターのやり方で壊れるなら、鬼道は自分の選手としての経歴より帝国学園を優先するのは分かる気がするな。
今の雷門を手伝うのも、後の帝国の為になるわけだし。
染岡は……、日本に戻ってきてはなさそうだよなぁ。情報とかに疎そうだし。
イタリアか……。
少し、ホッとした。
今、染岡に会ってもどんな顔をすればいいのか分からない。
私は元々、10年前の中学生の彼らの元に戻るつもりだったから。急に10年後の染岡に会って、私は彼を同じ彼だと思えるだろうか。そもそも、染岡は10前のことなんて昔の思い出として忘れ去っているかもしれない。
あんなに、傍に居たかったはずなのに、今は……
会うのが怖い
だなんて。