オリオンの刻印編
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あの後、趙金雲監督がタイミングを測ったようにやってきて、子文くんと私は大人に見られるのは分が悪いといったような様子を出してその場から立ち去った。
公衆トイレで元の服装に戻って、子文くんと共に宿舎に戻った。
「こんな時間に何処に行ってたんですか」
宿舎の玄関で待っていたのか、帰るなり西蔭にそう声を掛けられた。
なぜか、その隣には青い髪の少年、確か……一星だったかな。彼が居た。
西蔭は多分、王帝月ノ宮の頃の癖で待ってたんだろうけど、彼はそれに付き合ってたのかな?ちょっと変わってるな。
『ちょっと監督に頼まれて買い出しに行ったんだよ』
コクコクと同意するように大頭面を子文くんが揺らしながら持っている紙袋を掲げて見せた。
中身は先程我々が着ていた変装セットたが、中身までは気にしないだろう。
「あれ?でもさっき明日人くん達もアイス買いに行かされてましたけど……」
不思議そうに一星がそう言う。
『え、そうなの?連絡くれれば一緒に買ってきたのにね』
知らなかったフリをして、ねー、と子文くんに同意を求める。
コクコクと頷いたあと、子文くんは袖の長い手をめいっぱい伸ばしてジェスチャーする。
『荷物を監督の部屋に持っててくるって事かな?じゃあ、お願いするね』
そう言えば、子文くんはトテトテと荷物を抱えて先に行ってしまった。
「それにしてもわざわざこんな時間に女性に買い物を頼まなくてもいいですよね」
危ないじゃないですか、と一星は言う。
『まあ、子文くんが一緒だったから』
「でも女性に夜道を歩かせるなんて感心しませんよ。もし次そんなことがあったら僕に声をかけてください。代わりに買い出しに行きますから!」
そう言って一星はニコッと笑う。
随分と紳士的だ。確かロシア育ちなんだっけ?
『ありがとう。その時はお願いするよ』
「はい、任せてください!」
そう言って一星は胸を叩いた後、それじゃあ、と一礼して去っていった。
「俺も、言っていただけだらいつでもそのくらい代わります」
どこかムスッとした様子で西蔭がそう呟く。
『もう……キミね、私のパシリじゃないんだから。大体、一星のアレは社交辞令みたいなもんでしょ』
そう言えば西蔭は更に眉間のシワを深くした。
「そうでしょうか」
『そうそう。海外仕込みの紳士表現でしょ?』
本当にそうだろうか、と西蔭はひとり心の中で思う。
待っている間のアイツの様子は……と西蔭は思い返し眉を顰める。
そんな西蔭の様子には気づかずに梅雨は部屋へ戻ろうと歩き出す。
その後ろをいつもの如く西蔭はついて歩く。
『ところで、あんな所で待ってたって事は私に何か用があったの?』
「いえ、その……用という用があったわけでは……。ただ、自販機に水津さんの好きなメーカーの紅茶があったので」
『え、まじ!何処にあった?』
この玄関付近や食堂付近にも自販機があるが、好きなメーカーのやつはなかったはずだ。
「トレーニングルームの先の通路あって、その……お好きなやつだと思ったので買って、お部屋に向かったのですが居なかったので……。今は俺の部屋で冷やしてます」
『つまり、お茶しようと誘いに来てくれたわけね』
「はい」
可愛いヤツめ。好きなメーカーを覚えていたうえにお茶がしたくて探していたのか。
『もー、嬉しいけど、私だけじゃなくて、他の子ともちゃんと交流しなさいね』
『特にDF陣とは親交を深めておきなさいよ。ゴールキーパーなんだから』
ね、と西蔭を振り返れば、はい、と小さく頷いた。
『あとは司令塔になるだろう鬼道とも……』
そう噂をすれば何とやら、前方から鬼道がやってきた。
ゴーグルで表情は分からないが、顎に手を置いて何か悩んでるようす。
『どうしたの、鬼道』
「ん、ああ、水津と西蔭か」
今気がついたというように鬼道は足を止めてそう言った。
『なんかすごい考え込んでたね?何かお悩み?オネーサンに相談してみ』
「ああ、戦略を組むのに細かい選手データが欲しくてな。雷門ではお前が、星章では春奈がやってくれていたんだが……」
あー、今のマネージャーの大谷つくしちゃんと神門杏奈ちゃんは、明らかにデータ収集系マネじゃないもんなぁ。
『だったらそういうの得意なのここにいるよ』
そう言って西蔭を指す。
「え、俺ですか。水津さんじゃなく?」
『そりゃ私もそういうの好きだけど、言うて私はフリスタ選手よ?今は一緒に練習させてもらえてるけど、それがいつまであるとは限らないし。だったらチームにいる人がやる方が確実でしょ。それに、キミは王帝月ノ宮で野坂の補佐やってたんだから』
折り紙付きよと鬼道の方を見る。
「そうか。もし良ければ手伝ってもらえればありがたいが……」
鬼道の視線が西蔭に向けば、西蔭は何故か私の方をじっと見た。
「……わかりました。俺で良ければ手伝わせてもらいます」
「恩に着る」
礼を言う鬼道をみて、よし、と手を叩く。
『それじゃあ今から鬼道もお茶会参加ね』
お茶会?と鬼道が首を傾げる。
『うん。西蔭がね、私の好きな紅茶見つけたからって買ってきてくれたのよ』
「……自販機のお茶ですけど……」
「水津それは…………俺が参加してもいいのか?」
『え?なんで?どういう風にデータまとめるかの話し合い必要じゃない?』
「いや、そうじゃなくてだな」
やれやれと鬼道が頭を抱える。
「鬼道さん。水津さんも喜びますから是非参加してください」
「……お前も大変だな」
返事になってない返事を返す鬼道を何言ってんのと見れば、西蔭が小さく笑った。
「いつもの事です」
『え、なんでそこ通じあってんの?』
まあ、
仲良くやれそう
ならいいけどさぁ。
でもちょっと面白くないな。