ホーリーロード編
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「………!」
誰かの声が聞こえた。
その声に反応するようにゆっくりと目を開く。
うっすらと、ぼんやりとした視界に最初に入ったのは桃色で、戻って来れたのだと、その桃色に手を伸ばした。
「大丈夫ですか!」
私の手を掴んだその声は、期待していたものとは違う女性の声だった。
段々とハッキリしてきた視界に映ったのは桃色のお下げ髪の少女だった。
彼女は心配そうに私の手を握っている。
「大丈夫ですか?起きれますか?」
その声に、ええと返事をしながらゆっくりと身体を起こす。
その際に触れた地面はザリザリとしていて、土や砂の感触があった。
地面に人が倒れてたらそりゃあ心配しただろうな、と声をかけてくれた少女の方を見た。
『ありがとうございます』
格好を見るに少女は女子高生のようだった。
クリクリとした丸いその目を何処かで見たことがあるような気がした。
「お姉さんは、どうしてこんな所で倒れていたんですか?」
そう言いながら彼女は私の背に着いた土を払ってくれる。
『それは……』
うーん、説明が難しい。
そもそも、ここ何処だ?
キョロキョロと辺りを見渡せば砂場や遊具がみえる。どうやら公園のようだ。
ライオコット島のスタジアムで消えたから、リスポーン地もライオコット島のスタジアム内だろうと思ったが、どう見ても違う。
無理やり神代の力を使ったせいで、座標がズレたのかもしれないな……。
「もしかして……覚えてないんですか?」
なかなか答えない様子を見て少女はそう訊ねてきた。
説明が難しいし、ここはそれに便乗させてもらおう。
『ええっと……そうみたいです。あの、ここはいったいどこなんですか?』
とりあえず現在地を知ろうと少女に訊ねた。
「ここは、稲妻町です。わかりますか?」
『稲妻町……あ、ええ。わかります』
ライオコット島内どころかまさか日本のしかも稲妻町とは……。
もしかして、最終回まで飛んだか?アニメでは優勝後の話は卒業式の話だった。
そういえば、神代の意識の中に私に力を貸してくれた者がいたが、その意識が時間がかかるみたいなことを言っていたような気がする……。
とりあえず雷門中に行ってみよう。みんながいるかもしれない。
立ち上がろうと足に力を入れてから、ああ、と思い出す。
元の身体に戻ったんだった。
麻痺で力の入らない足を思い出して、地面に両手を付いた。腕の力で身体を持ち上げて、何とか立ち上がろうとすれば、女の子が手を貸してくれた。
『ごめんなさい、ありがとう』
「いえ。お姉さん、足が悪いんですか?」
『ええ、少し麻痺があって。ああ、でも歩けない程じゃないの』
「お姉さん、お家はどっちの方ですか?」
『お家?あー、』
木枯らし荘の部屋は、久遠監督に私がすぐにこっちの世界に戻らなければ解約してもらうように頼んである。1年も経っているから流石に解約済だろうなぁ。
『雷門中の方なんです』
まあ、とにかく雷門中に行ってから考えよう。
そう思い少女にそう告げれば、彼女は少し待っててくださいと言って携帯電話を取り出した。
黄色い折りたたみケータイを開いてポチポチとボタンを押したあと彼女はそれを耳に当てた。
「あ、もしもし、お兄ちゃん?悪いんだけど車、公園の入り口まで回してくれない?うん、うん。お願いね」
そう言って彼女が電話を切る。
「お兄ちゃんがお迎えに来てくれてるの。雷門中まで送って行くから乗っていって」
『え、けど……』
いいからいいからと言った少女は、私の手を取って公園の入り口まで歩き出す。
随分と優しい子だ。私のペースに合わせてゆっくりと歩いてくれる。
公園の入り口に着いて1、2分待てば、赤いスポーツカーが前に止まった。
そうして、その車の運転席から褐色肌に青いメッシュの入った白い長髪の男が降りてきた。
「どうしたんだ、夕香。急にこっちに車を回せだなんて」
赤いスーツにバチバチのピアスとゴテゴテのネックレス。それに黒いストールを身につけた男の顔にはどことなく見覚えがあった。
それに今言った、少女の名前には明らかに覚えがある。
『豪炎寺、夕香、ちゃん……?』
え?と少女がこちらを向くのにつられて、男もこちらを見た。
彼女がもし、豪炎寺夕香ちゃんならこの男性は……。
『豪炎寺、修也……?』
その名を口にすれば、男は眉を顰めた。
「いや、私は……」
否定を口にしかけた彼は、私の顔をじっと見て、まさかと呟いた。
「お前、水津か……?」
『ええ、そう。水津梅雨です!』
胸に手を置いてそう名乗る。彼が知っている私は中学生の姿、しかも神の器の影響か、髪は少し青みを帯びていたし、瞳はアメジスト色だった。
今の
私だって、彼の姿の変わりようから、夕香ちゃんの名前を聞かなければ気づかなかっただろう。
「どうして、またこっちに……」
驚いている豪炎寺と私を見つめて、夕香ちゃんは不思議そうにしている。
「お兄ちゃんたち知り合いだったの?」
「あ、ああ。彼女は10年前のイナズマジャパンでトレーナーをしてたんだ」
「へぇ〜」
そうなんだと豪炎寺の横で相槌を打つ夕香ちゃんとは別に、私は固まっていた。
10年
まさかそんな月日が経ってしまっただなんて。