世界への挑戦編②
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後頭部を強打し意識を失い、医務室へと運ばれた染岡は救護班の処置のおかげか、思っていたよりも早く意識を取り戻してくれた。
「……ここは」
目を薄く開け、見慣れぬ白い天井をぼんやりとした様子で見つめている染岡を見て、張り詰めていた糸がぷつりと切れたように、私はベッドの隣に座り込んでしまった。
『良かった……よかった……』
留まることを知らず溢れてくる涙を指の端で拭う。
「……水津……?」
頭を少し動かしてこちらを向いて私の名を呼んだ。
頭部を強く打っていたからこのまま目を覚まさない可能性だってあった。
だからまずは目を覚ましてくれて本当によかった。
だけど、問題はそれだけじゃない。
ベッドの横にしゃがみ込む私の対面に立つ医師が、染岡にフルネームや、どうしてここにいるか分かるか?などの意識確認を行っている。
頭をぶつけた場合。過去の私……正確に言えば記憶のコピー元の人間は脳震盪から足に麻痺が残った。
だからまだ安心出来ないと、医師の質問にハッキリと答えていく染岡を見守る。邪魔にならないように立ち上がって、壁側に避けて。
受け答えはハッキリしているし、立ち上がらせてもふらつき等ないみたいだけど……。
「現状問題はなさそうですね」
「なら、ベンチに戻ってもいいっすか?」
染岡がチラリと無音で流れているモニターを見た。
試合状況が映し出されていて、ゴール前に全員が陣取った全員守備の様子が見える。
「そうですね……。構いませんが少しでも具合が悪かったり、何かおかしいと感じたらトレーナーに伝えてください」
「分かりました。水津、戻ろう」
そう言って染岡がこちらを向くので、うんと頷く。
『ありがとうございました』
と、医師にお礼を伝える。
「何かあったら直ぐに現場の医療班に伝えてください」
『わかりました。それでは、失礼します』
私が礼をして医務室を出れば同じように染岡も失礼しますと礼をして部屋を出た。
「水津、心配かけて悪かった」
廊下を歩きながら染岡がこちらを見る。
『ほんっとに……目を覚まさなかったらどうしようかと……』
「水津……」
足を止めた染岡が私の頬に手を伸ばし、そして目の恥の涙を親指で拭った。
「悪かった」
もう一度謝る染岡にふるふると首を振る。
『意図してああなったわけではないでしょ』
ワザと顔面でボールを止めに行こうとした訳でもなく、染岡はちゃんと胴体でボールを受け止めようとしていた。ただ、ドラゴのシュートの威力が強すぎただけだ。
『謝ることじゃないよ』
「だけど……、最後まで見とけっつったのに……」
医務室に付き添うのに試合が見れなくなった事を言っているのか、それとも自分がフィールドに最後まで立つ姿を見せたかったと言うことなのか、分からないけれど、染岡は少し落ち込んだようにしゅんとしている。
『大丈夫。試合はまだ見れるし……それに、』
染岡の胸にコツと額を当てる。
『かっこよかったよ』
そう素直に伝えれば頭の上から、なっ、と驚きの声が上がった。
それからそっと肩に手が置かれたが、うー、とか、あーとか、言葉に困っている様子だった。
『ふふ、戻ろうか。みんなも心配してるだろうし』
そう言って顔を上げれば、顔を真っ赤にした染岡がああと頷いた。
グラウンドへ入れば、ピッチ内の試合はイナズマジャパンの全員守備を掻い潜ったドラゴが、ダブル・ジョーを放った所だった。
すっと息を吸い込んだ円堂が大きく両手を開く。
「イナズマー、ジャパン!」
円堂がそう叫びながら両手を突き出しボールを挟む。
彼の背後にはヒーローのように赤いマントを靡かせる魔神がハッキリと現れていた。
ボールはガッチリと円堂の手に収まり、威力を無くした。
「できた……。できたぞ!!ゴッドキャッチが完成した」
円堂がボールを天へ掲げると、割れるような歓声が起こった。
ベンチやピッチのみんなも大喜びだ。
「やったぜ!」
隣の染岡がグッと拳を握って叫ぶ。
『ちょっと、まだ安静にだからね!』
染岡の叫ぶ声か、それとも私の怒る声で気がついたのか、みんなは医務室から戻ってきた染岡を見てほっとしたようだった。
染岡をベンチに座らせてから、監督へ医師からの伝達を報告する。
『これで、心置き無く戦えますね』
そう言えば監督は、ああ、と力強く頷いた。
反撃だ!
円堂の言葉に、みんながうおおおと声を上げた。