世界への挑戦編②
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最後の練習を終えた今日は、監督の指示で明日の決勝戦に向けて早く寝ること、と強く念を押された結果、静かな夜を迎えていた。
みんなが部屋で寝ているであろう時間に、私は今までしてきたように食堂でノートパソコンを開いていた。
明日の朝選手のコンディションチェックはあるものの、もうトレーニングメニューを制作したりの仕事はない。
だけど、なんとくここに来てパソコンを開いていた。
今まで作った選手たちの資料を眺めながらぼんやりと過ごしていれば、廊下を歩いてくる音が聞こえて出入口の方へ顔を向けた。
「やっぱここに居たか」
そう言って中に入ってきたのは染岡だった。
『あら、悪い子ね。今日は早く寝なさいってお達しだったでしょ?』
そう言って笑えば、染岡はまた子供扱いかよと少しムッとした顔をした。
「そう言うお前だってまだ起きてんじゃねぇか」
言い返しながら染岡はこちらへと歩み寄ってきて、後ろからノートパソコンを覗いた。
「まだ仕事してんのか?」
『ううん。今日はもうお仕事ないよ』
じゃあなんで、といったように染岡はパソコンの画面から私の方に視線を向けた。
『これまで作った資料を眺めてたの』
そう言えばまた、視線がパソコンの方向いた。
「凄い量だな」
『そうだねぇ。この仕事の成果が明日には分かるんだよね』
「ああ、そうだな……。明日、か……」
『楽しみだなぁ』
なるべく声のトーンを明るくして言う。
そうでなければ泣いてしまいそうだからだ。
恐らく明日が最後の日になるだろう。ワンチャン、最終回という円堂たちの卒業式の日まであるかもしれないが……望みは薄い気がする。
染岡も何となくわかっているから、今ここに来てくれたのだろう。
「水津。明日は絶対勝つ」
力強い言葉だった。
私は彼のこういった負けん気のつよい所が好きだと心底思う。
「だから、最後までちゃんと見届けろよ。黙って居なくなるのはナシだからな」
その言葉に、うんと頷く。
『大丈夫。ちゃんと最後まで見届けるよ。だから染岡も私に何があっても試合に集中するって約束してね』
もはやいつ消えてしまうか分からない状態だ。そんな状態で試合中に消えかかった私を見て動揺して試合にならないなんて事、笑えないから。
指切りというように小指を染岡の方へと差し出せば、染岡はわかったと頷いて自分の小指を私に絡めた。
『嘘ついたら針千本のーます!』
指切った、と絡めていた小指を離す。
「お前なら本当に飲ませて来そうだな」
『うん。だから最後までしっかりカッコイイ姿を見せてよね』
そう言って笑えば、染岡はああと頷いた。
「お前たち」
食堂の出入口からそう声を掛けられた。
少し驚いて、びくりと肩を揺らしてそちらを見れば、久遠さんが立っていた。
染岡が小さく、やべ、と呟いた。
「私は早く寝ろと伝えたはずだが」
『はーい。もう寝ますよー!』
ノートパソコンを折りたたんで席を立ちながら染岡へ目で合図する。
「あ、俺ももう寝ます!おやすみなさい!」
そう口早に言って染岡は久遠さんの横を通り抜けて食堂を出ていく。
バタバタと足音が遠くなって行くのを聞いてから、久遠さんに近づいてノートパソコンを渡す。
『これのデスクトップにある新規ファイル、後で読んでおいて下さい』
「なんだ?」
『決勝戦前にこんな情報寄越すなって代物です』
そう言えば久遠さんは険しい顔をしながら分かったとパソコンを受け取った。
『明日、私に何かあった時、みんなの事任せられるのは監督だけですからよろしくお願いしますね』
今の様態の響木さんにお願いするわけにもいかないからね。
『それじゃあ、おやすみなさい』
最後の夜
願えば叶いそうな程、窓から見える空は晴れて星が瞬いて見えた。