世界への挑戦編②
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ガルシルドが捕まった次の日、夏未ちゃんがイナズマジャパンに加わった。
昨日までリトルギカントのマネージャーだったのに、と皆が複雑な様子で黙っている中、不動が、あっち行ったりこっち行ったりするやつ入れていいのか、なんて茶化すように皮肉を言っていたが、円堂が手を差し伸べた事によって、みんなの夏未ちゃんへの不信感はあっという間に無くなった。
あの不動もこのチームに随分と絆されたようで、これがイナズマジャパンかと皆の切り替えの速さに笑っていた。
決勝戦ということもあるが、実の祖父との戦いということもあり、特に円堂が熱の入った練習を行う日々が続いたある日の朝の事だった。
「おーい!水津!」
午前の練習の為にとみんながウォーミングアップに出ている合間にカゴに入った大量のボールを宿舎からグラウンドと運ぼうとしていたところで門の入口から名前を呼ばれた。
振り返れば声の主はイタリア代表のブラージで、彼の巨体の後ろからかなりの数の人間が顔を覗かせた。
『え、どうしたの?』
ひとまずカゴから手を離して彼らの元へ向かう。
11、12、13……オルフェウスのメンバー勢揃いじゃないか!
驚いて入れば、朝早くにすまないとブラージの後ろからフィディオが出てきた。
「決勝戦に向けて、イナズマジャパンの力になれるかもと思って来たんだ」
『あー、なるほど』
あったな、友情回。たしか、コトアールに敗れたやるせない気持ちの彼らをこのままでいいのかとブラージが焚き付けて、出来ることをしようとイナズマジャパンに協力しに来てくれる回だったはずだ。
『それなら監督に声掛けてくるよ。ちょっとまってて』
そう言って宿舎の中にいる久遠さんの元へ行こうと踵を返す。
「あ、選手のみんなはグラウンドかい?」
フィディオの言葉にううん、と首を横に振る。
『今みんなウォーミングアップに出ててね。走りに行ったり、それこそ円堂なんかは近くの砂浜でタイヤ特訓してるよ』
「そうなのか……。じゃあ、オレ、マモルを呼んでくるよ!」
そう言ってフィディオは門の外へ出ていってしまう。
「あ、おい!フィディオ!」
チームメイトが止めるように声を掛けるも、何かしていたいといった様子のフィディオには効かず彼はそのまま浜辺の方へ走って行ってしまった。
『とりあえず、他のみんなはどの辺走ってるか分からないし、戻ってくるまで待った方がいいからここで待機していてくれる?』
「すまないな」
『いやいや、すぐ監督呼んでくるから待っててね』
それじゃあと声を掛けて、急いで宿舎へと戻るの出会った。
久遠さんにオルフェウスのメンバーが来てくれた事と、彼らの提案を話せば、すぐにその申し出を受けようと決めてくれた。
ウォーミングアップに出ていたのみんなと円堂を呼びに行ったフィディオも戻ってきたところで、まずはミーティングルームにてオルフェウスのみんなが感じたリトルギガントの強さや恐ろしさを踏まえた解説を受けて、その後、彼ら提案の15分ハーフでの試合が始まった。
本来45分ハーフの所30分も縮めたのには理由があった。
キックオフボールを得たオルフェウスはまずキーパーのブラージ以外センターライン付近に並ぶ超攻撃的なフォーメーションについた。
そのフォーメーション通り、FWもMFもDFも関係なく全員で攻め上がってきた。
全員が上がっているということは、普段そんな位置に居ない人たちが居て、普通じゃ通らないパスが通りあっという間にゴール前に到達されてしまう。
「オーディンソード改!」
高く上げたフィディオの足が勢いよく振り下ろされボールは光の剣の形をなしてゴールへと飛んでいく。
「ガン、シャン、ドワーン!!」
大介さんからもらったヒントを叫びながら円堂は貯めた気を解き放つが、それが形をなす前にオーディンソードがゴールに突き刺さってしまった。
ここ数日の練習でも未だその技の姿を掴めていない。
今度は点を奪われたイナズマジャパンのキックオフからだが、なんとオルフェウスは全員ゴールに並ぶ全員守備配置についていた。
全員で全力攻撃し、全員で全力で守る。そのために体力が持たないから15ハーフを、申し出たのだった。
守備に阻まれボールを奪われまたもフィディオに渡る。
壁山がザ・マウンテンを発動するために飛び上がった隙をついて抜けたフィディオが再びオーディンソードを放った。
「ガン、シャン、ドワーン!!」
今度は先程よりハッキリと白髪の魔神の姿が現れる。
だが、真正面から受けたオーディンソードの威力に破れ魔神は消え円堂ごとボールはゴールに叩きつけられた。
「くそっ。なんで出来ない。どうして上手くいかないんだ。こんなことじゃリトルギガントには勝てない」
そうして攻略のヒントが掴めぬまま15分が経ち、ハーフタイムへ突入した。
後半はイナズマジャパンもオルフェウスも3人ずつ選手交代が行われてスタートした。
ボールを回された鬼道が佐久間へとパスを出そうとしたタイミングで、目の前にDFのガッツが飛び込んで来て驚いてキックしたボールはあらぬ方向へ飛んでいき、全員での守備固めをしていたオルフェウスの選手たちは予測外に落ちたボールが転がりラインの外に出ていくのをポカンと眺めているのであった。
予測外の出来事には誰も対応できない。その事に気がついた鬼道が不動に指示をだし、不動が鬼道にパスするフリをして、オルフェウス選手たちのど真ん中にボールを落とすという行動で、鬼道側にオルフェウスの選手達がつられ、彼らが先程居た場所に落ちたボールを彼らが呆気に取られているうちに鬼道が走り奪い去る。
まさか、自分たちの方へボールがパスされるなんて思ってもいなかったであろうオルフェウスのメンバーは反応が遅れ、ボールを持った鬼道を追いかけようとするが、その頃にはもう佐久間と不動が傍に駆け寄り3人でのシュート体制に入っていた。
ピュイと指笛が鳴り、飛び上がっていた3人の踵が一気にボールに叩き落とされた、
皇帝ペンギン3号G2。
紫色の5匹のペンギンに守られるように飛んでいくシュートにDFのオットリが正面から止めに入るが押し負け吹き飛ばされた。
そこへ豪炎寺が駆け込んできて、真 爆熱スクリューでシュートチェインした。
燃えて渦巻くそのボールに、GKのブラージはコロッセオガード改で対抗するも威力に押し負け、シュートはゴールへ突き刺さった。
厳しい守備の中、点を取ることは出来るようになった。
後は……。
センターラインに戻されたボールで、今度はオルフェウスのキックオフで再開される。
全員で攻め上がってくるオルフェウスに翻弄されこちらの守備はあっという間に突破され、フィディオにボールが渡る。
フィディオがオーディンソードを打ち、円堂が新技を試すも打ち破られ点を決められる。
同じ事が繰り返され、もう何点か取られた所で、珍しく円堂が弱音を吐いた。
「こんだけやってダメなのか……」
なんで、どうしてなんだ、と転がったボールを拾うのにしゃがんだまま、円堂が悔しそうに呟く。
そんな円堂の元へフィディオが歩み寄る。
「マモル。君はとんなピンチだって自分の力で乗り越えてきたんだろう。どんな必殺技だって身につけてきたんだ」
フィディオの言うとおり、神のアクアやエイリア石なんかがあるこの世界で円堂はそれを否定し己の力でそれらを打ち倒してきた。
ゴッドハンドも、マジン・ザ・ハンドも、正義の鉄拳も、いかりのてっついも、イジゲン・ザ・ハンドも土壇場には完成させてきた。
「その新しい必殺技のヒントだって、ただの掛け声から自分で見つけ出したものなんだろ」
フィディオの言葉にうんと頷いて円堂は立ち上がった。
「君ならできる。君なら必ずできる」
「必ず……できる……」
フィディオからの信頼に答えるように円堂は自分の胸に手を置いた。
「マモル」
「うん!」
失いかけていた自信を取り戻したようで円堂は力強く頷くのだった。
再び試合が再開し、ベンチのみんなも硬い面持ち出フィールドを見守っている。
「円堂さん、まだ1本も止めてない」
「出来るんでしょうか……、新しい新しい必殺技は……」
立向居が不安そうにこぼした言葉に、目金も呼応するように呟く。
『大丈夫よ。フィディオのおかげで足りないものに気づいただろうから』
「さっきの会話ですか?」
「励ましていたようにしか……」
同じくベンチにいるヒロトと木暮が必殺技のヒントになる事を言っていたかと頭を悩ませている。
「流石にもう答え言ったっていいだろ」
円堂がわかったんなら黙ってる必要ないだろと染岡がこっちを見てくる。
『答えは、最後の特訓ノートよ』
「はあ?それなら円堂が1番読み返してただろ?」
『ただ読んでるのと、理解して自分の中に落とし込むのでは意味が違うわよ』
「どういう……」
「あ!またフィディオにボールが渡った!」
話の途中で立向居が興奮して立ち上がる。
皆の視線がボールを持つフィディオに向けられ、彼はジャパンのディフェンスをあっという間に突破してゴール前へ駆け込んだ。
「行くぞォオ!!」
力強くフィディオが叫び、円堂は前を見据えてどっしり構えた。
「真 オーディンソード!」
ここまでの試合で疲れているはずなのに、どこにそんな力が残っていたのか、いままで以上の威力のオーディンソードが飛んでくる。
「はあああああ!!」
円堂は胸の前で手をクロスさせ気を貯めて、それを解放するかのように大きく開いた。
その背には黄金の魔神が円堂と同じようにボールをキャッチしようとどっしり構えている。
飛んできたボールを、両手を前に突き出し、掌でがっしりと掴み挟み込む。
手の中で回転するボールを押さえ込もうとするが、円堂ごとゴールネットに押し込まれてしまった。
ピッーとホイッスルが鳴り得点を決められる。
ボールを抱えたままぐったりと倒れた円堂に皆慌てて駆け寄る。
「マモル!大丈夫か!?」
シュートを打ったフィディオが1番心配そうな顔をしている。
そんな彼に、ああと小さく円堂は返事をして起き上がった。
「見えた……。やっと見えたぞ!新しい必殺技の姿が!」
円堂はぱあっと明るい晴れ晴れとした顔をしていた。
心の其のなん番だったかは忘れたけど……!
自分の力を信じる心、
マヨワナイジシン
これが今の円堂に足りなかったものだ。