世界への挑戦編②
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リトルギカントでチームオペレーターとしての力を身につけた夏未ちゃんの意見を取り入れた大介さんが発表した後半の作戦は、ポジションの入れ替えだった。
壁山と飛鷹をFWに上げ、豪炎寺と虎丸をMFに、風丸と不動をDFに下げるというものだった。
「どういうことですか?」
鬼道の質問に対して大介さんは夏未ちゃんの名を呼んで説明を任せた。
「前半の試合を見る限り身体能力では明らかに向こうが上。けど、彼にも欠点はある」
欠点?と首をかしげる円堂に、夏未ちゃんはええ、と力強く頷いた。
「それはFWはFWの、MFはMFの、DFはDFの役割りしか果たしていないこと。完全な分業制でその結果、DFにはMFに必要なボールのキープ力、突破力が不足している」
「そこを崩す為にDFとMFを混ぜるということか……」
顎に手を置きなるほどといった様子で鬼道が呟く。
もう新しいポジションでのゲームメイクを考えているのだろう。
「でもオレ、シュートなんて打てないッスよ……」
困った様子で壁山がそういえば、心配するなと大介さんは声をかけた。
「シュートを打つだけがFWじゃない」
『そうですね。それに壁山は1度、野生中戦でFWやった事あるでしょ?大丈夫よ』
トントンとその大きな背を叩く。
あの頃よりも、試合に関してビビることが少なくなった彼はそうッスね、と力強く頷いた。
「よし、いくぞ!」
円陣を組んだ彼らは、おおー!と高らかに声を上げた後、後半に向けてフィールドへと帰って行った。
「血迷ったか円堂大介。ヘンクタッカー!遠慮はいらん!円堂大介のサッカーをたたきつぶせ!」
立ち上がってガルシルドは大きく腕を振り下ろした。
古株さんがホイッスルを拭き試合が開始される。
チームガルシルドのキックオフで始まったボールは、FWのスコーピオからMFのクロウへ渡される。
そこからクロウはFWのコヨーテが走る先へとロングパスを出した。
「ふっ、」
コヨーテがボールへたどり着く前に、DFに下げられていた不動がカットする。
そのボールを奪おうとコヨーテが近づくか、不動はリフティングを上手く使い自身の身体でボールとコヨーテの間の壁となりボールをキープした。
「豪炎寺!」
隙を見て不動がパスしたボールを豪炎寺が受け取りドリブルで駆け上がる。
「いかせるか!」
トップ下であるMFのオウルが近づいてくるが、豪炎寺はグンとスピードを上げ難なく中盤を突破する。
その後も、イナズマジャパン側は無理せず後ろにボールを戻したりしてパスを繋ぎ、前半あれだけ苦戦していたボールキープを難なく行えていた。
それにポジションを変えたことによってボールを奪われたとしてもDF2人が前線に上げられたことによって、中盤から前線の間でボールを止められる事ができ、すぐさま攻撃へ戻れる利点があった。
「虎丸くん!」
ボールを止めた壁山から虎丸へとボールが渡る。
「豪炎寺さん!」
おう!と返事をした豪炎寺と共に2人は1番前へと走り抜けた。
「タイガー!」
「ストーム!」
炎を纏った虎がフリーとなったゴールへと飛んでいく。
「ビックスパイダー!」
フォクスの蜘蛛の手が伸びボールを掴もうとするが、ボールはその手をすり抜けフォクスの後ろのゴールネットへと突き刺さった。
「決まったー!!イナズマジャパン、ついに1点をもぎ取った!」
ピーッというホイッスルと共に実況の角馬さんが叫んでいる。
私の横で秋ちゃんと春奈ちゃんも飛んで喜んでいる。
そんなイナズマジャパンのベンチと反対に、チームガルシルドのベンチではガルシルドが大きな宝石の指輪をたくさん付けた指を折り曲げギュッと震えるくらい強い力で拳を握りしめていた。
「よし、いけるぞ!」
その後の試合展開も、順調だった。
相手の個人技よりもこちらの連携が上回り、風丸と吹雪のザ・ハリケーンで2点目を決め、相手にボールを取られても飛鷹が真空魔でカットして豪炎寺に繋ぎ、虎丸とヒロトの3人で、グランドファイアG2でゴールを決めた。
得点板のイナズマジャパンのところか3に変えられてすぐに、ピッピッピーと試合修了のホイッスルが鳴り響いた。
「得点は3-2!イナズマジャパンの見事な逆転勝利だー!」
よっしゃー!勝った!とあちこちで喜びの声があがる中、震える男がいた。
「ば、馬鹿な。私の、究極の強化人間が……。ヘンクタッカー!この敗北は貴様らのせいだ!」
指を突き出し、責め立てるようにガルシルドが叫ぶ。
「私はお前たちに最強の力を与えてやった。なのにそれを使いこなせなかった貴様らのな!」
唐突なその罵倒に、チームガルシルドのメンバーは驚いたように口をあけているだけだった。
『いい加減にしろ!』
おいバカと後ろから染岡が止める声が聞こえたが、怒りに身を任せた私はガルシルドへ詰め寄って行った。
『 この人たちはアンタの為に戦ったんだぞ!それなのにアンタは見てるだけで、何をした?少なからずザ・キングダムの監督してたんならピンチの彼らに指示ぐらい出せただろうが!自分がやること怠っておいて、負けたからって彼らに責任を問うのは違うでしょうが!!』
「なっ……!」
私が捲し立てるように叫べは、ガルシルドは顔を真っ赤にして何かを言い返すでもなくただ拳を振り上げた。
「水津!」
後ろでみんなが叫ぶのが聞こえる。
殴られる衝撃に備え目を閉じる。だが、
「そこまでだ!」
そんな声が聞こえ、ガルシルドの拳が振り下ろされる事はなかった。
開けた瞳の先に居たのは3人のスーツ姿の男たちで、そのうちのひとりがガルシルドの腕を掴んでいた。
「なんだ貴様らは……!」
「国際警察だ!ガルシルドお前を逮捕する」
「国際警察!?」
「少々お遊びが過ぎたようだな」
その声に振り返れば、鬼瓦さんもそこに居た。
「ガルシルド。その嬢ちゃんが未来を知ってるって分かってたんなら、さっさと島から離れていればいいものを」
「貴様が通報したのか……!」
睨みを効かせてくるガルシルドにそりゃあねぇと頷く。
まあ私が連絡せずともあれだけ派手にコトアールエリア壊してたら警察に来てくださいって言ってるようなもんだと思うけど。
「本当に私を逮捕するつもりか」
そのガルシルドの言葉に国際警察のひとりが無言で手錠を取り出した。
「何故分からぬのだ!世界刻一刻と病んでいる!サッカーなどという玉遊びに浮かれている今この時にも世界の残された資源を有効に使うためには私による支配が必要不可欠なのだ!!世界を救うのはこの私だ!私だ!私なのだぞ!!」
何かに取り憑かれたように、ガルシルドは天に手を伸ばし上に向かって叫んでいる。
『あなたはどうしてそこまで……』
「どうしてだと?神がそう告げたのだ!私が私こそがこの世界を救うのだと!!」
『神って……』
「ええい、いい加減にしろ!!」
痺れを切らした警官がガルシルドの手に手錠をかけて取り押さえる。
影山さんは私をガルシルドから遠ざけようとしていたから知らないと言っていたが……。
『もしかして、その神って……』
神代のことではと聞きたがったが、警官たちがガルシルドを引っ張っていく。
『あー……』
まあ、セインの話では神代と言うのは日本での呼称だろうと言っていたし、国の違うガルシルドの前ではアレはまた違う名を名乗っているかもしれないし聞いたところで分からないかもしれない。
それに今更、神代の事を知っても私の身体がこうなっているのをアレはどうこうしてくれるわけではないだろうし……。
「水津」
ポンと肩に手が乗って首を横に向ける。
『染岡……』
「お前はあいっかわらず危険な事しやがって……!アイツお前を攫うっつってたんだぞ!!」
『ああ、そうだった』
怒った染岡の顔を見て思い出したと呟けば、呆れたように大きなため息を吐かれた。
『だってさ、可哀想じゃないか。利用されるだけ利用されて……』
ヘンクタッカーたちチームガルシルドの方を見れば、彼らも警察に連れ去られて行くところだった。
彼らの姿は神代に利用された自分と、
少し被って見えた
だから怒らずにはいられなかったのかも。