世界への挑戦編②
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私が標的にされたからというのもあるだろうが、ガルシルドを捕まえるため、そして何よりサッカーを守るため、イナズマジャパンのみんなはチームガルシルドとの戦いを受け入れた。
それを見て、僕たちにやらせてと、町を壊されたロココが声をあげるがそれを大介さんは却下した。
その理由は、彼が肩を負傷していたからだ。
先程木を受け止めていた時に私がひと目で分かるくらいに様子がおかしかったから流石にいつも彼を指導している大介さんには一目瞭然だったのだろう。
「水津、お前さんはイナズマジャパンのトレーナーだったな?すまないがロココの肩の応急処置を頼む」
了解ですと返事をすれば、大介さんは円堂を呼んでチーム編成の相談を始めた。
『ロココ。肩の様子を見るからこっち来てくれる?』
「あ、うん」
『みんなは誰が選手されてもいいようにしっかりストレッチして!』
はい、と返事をしてみんなは屈伸や、前屈を行い始めた。
空いたベンチにロココを座らせ、キャラバンから持ってきていた救急箱を開ける。
『とりあえずジャージ脱いでくれる?』
「……これでいい?」
素直にジャージを脱いでくれたロココに、おっけーおっけーと返事をしながら彼の左肩に氷嚢を置く。
『冷たいかもしれないけど、15分から20分くらいは冷やさないとだから我慢してね。怪我の原因を聞いても?』
「避難の際に勢いよく壁にぶつけてしまって」
『なるほど。瓦礫が落ちてきたとかではないのね』
出血したりはしていないし打撲だけならいいけど……。記憶の中では試合に出場してたし、骨折まではしてないと思うんだけど……。
結局医者ではないからわからないし、今できる応急処置だけはしっかり行っておこう。
「キミは、自分が狙われてるのに落ち着いているね」
『え?』
「それは、ガルシルドの言っていたように未来を知っているからなの?」
『あー、まあ、それもあるけど……なにより、みんななら勝ってくれるって信じてるからね!』
そう言って笑えば、ロココはなるほどと小さく呟いた。
「ゼッタイテキシンライ……。そうか、キミがナツミの言ってた大事な友達なんだね」
『夏未ちゃんが?』
チラリと彼女を見れば大介さんの隣で円堂との作戦会議を熱心に聞いている。
「うん。信じて送り出してくれた友人がいるって言ってたよ。だからキミのことかなって」
『そう……。そう思ってくれてるのなら嬉しいかぎりね』
「ナツミの友達が信じてるチームだ。ボクも信じるよ」
『ありがとうロココ』
そうやってロココと会話しているうちに、スターティングメンバーが決まった。
GKは円堂。
DFに壁山、吹雪、綱海、飛鷹。
MFが鬼道、不動、ヒロト、風丸。
FWは豪炎寺、虎丸。
4-4-2のオーソドックスなフォーメーションだが、メンバーは頭のキレる者と、身体能力が突出して高い者が選ばれた感じだ。
未知の的相手に対抗するため、何があってもすぐさま適応出来そうなメンバーが選ばれた感じだ。
キャプテンである円堂や横から見ていた夏未ちゃんの口添えもあっただろうが、自分のチームではないというのに最適なメンバー選びをしているのは流石伝説のゴールキーパー円堂大介ということか。
審判はガルシルド側の者じゃ確実に不正があることから、古株さんに行って貰うことになった。
彼の口からホイッスルが鳴らされ試合が開始される。
なんでこの現場にいるのか知らないがどこからともなく現れた角馬王将さんが、イナズマジャパンのキックオフだ!と実況を始める中、豪炎寺からボールを貰った虎丸が風丸へとパスを出した。
風丸からヒロトへ、ヒロトから鬼道へと盤上を広く使いボールを回して上がって行く。
ドリブルで駆け上がる鬼道の前に、チームガルシルドの緑色の髪の少年がボールを奪いにきた。
1度ボールに触れられるも、素早く身を翻した鬼道が相手の足元からボールを抜いて再びドリブルで駆け上がる。
だが、そのまま背後にぴっちり付かれていて、鬼道はフリーの豪炎寺へとパスを出した。
鬼道の正確なパスで走る豪炎寺の足元へボールが届くはずだった。
正面から近づいて来ていた大柄な男が急に尋常じゃないスピードで、豪炎寺の横を通り抜け、彼の足に届く前にボールをカットした。
「アイツいつの間に!」
ベンチから見ていた木暮が驚くほどだ。
目の前にいた豪炎寺からすれば、もっと驚いたことだろう。
「ヘッジホッグ!」
大柄な男が黄緑色の髪の前髪で左目を隠した小さな男にボールを渡した。
「行かせるかぁああ!」
そう叫んだ風丸が正面から立ち向かうが、先程の男と同様に、急激にスピードを上げたヘッジホッグはあっという間に風丸の横をすり抜けた。
「な、なんですか、今のスピードは……!?」
目金が叫び、その横に立つマネージャーたちはみんな驚きで空いた口が塞がらないと言った顔をしている。
似たような状況を前にも体験しているはずなんだけど、なんでそんなに驚いているんだ?
「調子に乗ってんじゃねえ!」
不動が下がって守備に回るが、ヘッジホッグは不動の手間で空高く飛びがった。
「マンティス!」
先程鬼道と対面していた緑髪の少年が同じく空中出ボールを受け取って、MF陣を飛び越えて上がってくる。
「なんなんだよ、あのジャンプ力……」
綱海が驚きの声をあげる中、鬼道はそうかと呟き、気がついたようだ。
「気をつけろ!相手は強化人間プログラムを受けているぞ!!」
あ。そうか、みんなは知らなかったのか。
「スノーエンジェル!」
吹雪が必殺技を発動するも、吹雪の足元から這い寄る氷を咄嗟のスピードで抜けたマンティスは氷漬けにはならなかった。
「間違いねぇ!鬼道の言う通りだぜ!」
染岡がベンチから立ち上がって叫ぶのを聞いて、ああ、と頭を抱えた。
私はアニメやゲームでそういうもんだと思い込んでいたけれど、ガルシルドのチームだからそうだとみんなは思ってなかったわけだ。それは驚くか。
これは別に使ってる可能性があるとか言って忠告しといて良かったよな。失敗した。
「なんでそんなことを……そんな体でサッカーをしたら体がボロボロに!」
必死に円堂が訴えかければ、それをバカにするようにヘンクタッカーが笑った。
「なにもわかってないようですね。私たちがロニージョたちと同じだと思っているのですか?」
「なに!?どういうことだ!」
「ザ・キングダムのロニージョ。そして更にはチームKのデモーニオ。彼は単なる実験台でしかなかったのです」
実験台?と円堂が驚きのあまり復唱すれば、ヘンクタッカーはそうと得意そうに頷いた。
「強化人間プログラムを完成させる為に必要なデータを取るためのね」
なっ、とみんなは息を飲む。
「データを取るため!?」
「彼は十分役目を果たしてくれました。自らの体を犠牲にしてね。そして完成したのが私たち究極の強化人間プレイヤーなのです!」
「許せない。デモーニオやロニージョを実験体に使うなんて……!」
『自らの体で実験してやるならまだしも、いい大人が幼気な子供達を犠牲にしてヘラヘラしてるんじゃないよ!』
「おや?」
怒鳴った私に対してヘンクタッカーはおかしいと言いたげな顔をした。
「ならばあなたが代わりになりに来れば良かったのでは?最初から全て知っていたのでしょう?」
『なっ、それは……』
そうする方法があったのは確かだ。
「ふざけるな!水津が代わりになろうがなるまいが、誰かを犠牲にすんのはおかしいだろうが!!」
返す言葉のなくなった私の代わりに染岡が怒鳴ってくれる。
それに対してヘンクタッカーはくつくつと笑っている。
「すべてはガルシルド様の理想の世界を実現するため」
そう高らかに宣言したヘンクタッカーは、パチンと指を鳴らした。
その合図で止まっていた試合が急に動きだした。
「そんなことさせるかよ!」
マンティスがドリブルで駆け上がるのに、綱海が瞬時に気がついて走り出す。
「理想ってのはな、実験なんかじゃねえ!自分の手で実現させるもんなんだよ!!」
叫ぶ綱海の前でマンティスはボールと共に飛び上がった。その彼の後ろからもう1人、青紫いろの髪の男が飛び上がり、マンティスの上げたボールを何度も蹴りつけた後、綱海の元へ飛ばした。
ジャッジスルー3。
強力なボールが綱海の胴に当たり後ろへ転ばせた。
そうして綱海の横を抜けた男は、コヨーテと呼んで額に赤いティラカを付けた銀髪のオールバックの中性的な男へとボールをまわした。
「喰らえ。これが究極の強化プレイヤーの必殺技!」
口元を布で隠している彼は、ボソボソとそう言ってボール天高くに蹴り上げ、同じように飛び上がった。
「ガンショット!!」
両足で挟み滑りずらすように発射されたボールは回転かかり、弾丸のようにゴールへとボールが飛んでいく。
「円堂くん!」
「強化人間なんかに負けるもんか!」
そう言って円堂は拳に気を貯める。
「あの気の貯め方は……!」
そう呟くロココには覚えがあるのだろう。
円堂はノートからではあるが同じ師から受け継いだ技だ。
「真 イジゲン・ザ・ハンド!!」
衝撃はのドームでガンショットへ立ち向かうが、シュートの威力に押し負け、ドームが割れてボールはゴールへと突き刺さるのだった。
「円堂さんの真イジゲン・ザ・ハンドが破られた……」
「なんて威力なんだ……」
これが、
究極の強化人間
ガルシルドは大介を見てニヤリと笑うのであった。