世界への挑戦編②
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何とか全員起こした頃にはフェリーの出航時間をすぎてしまっていたから、みんなは途中からでも試合を見ることが出来たのだろうか、と響木さんの病室でテレビ中継でイタリア代表オルフェウスとコトアール代表リトルギガントの試合が終わるのを見届けながら考える。
私もみんなが超特急で食べた朝食の片付けをしてから、徒歩でエントランスエリアの病院に向かったので、病室に到着した頃には試合の後半戦が始まっていたし、あまり試合は見られなかったが、それでも尚コトアールの強さを見せつけられた。あのオルフェウスの選手たちが手も足も出ないのだから。
『次の試合、イナズマジャパンが勝つには……』
どうするべきか、と響木さんに尋ねようと思いベッドを振り返って口を閉ざす。
一般病棟へ移されたとはいっても、心臓に負荷がかかっていたうえの手術だったのだ、身体はしんどいよね、と再び眠ってしまった響木さんを見つめる。
とりあえず病院内の購買部へ行って自分の昼食になりそうなものと響木さんの入院に必要な物がないかなと一通り見て回る。
そうして時間を潰して買い物を済ませた後、売店を出て響木さんの病室へ帰ろうとしたところで、見知った顔に出会った。
『鬼瓦さん!?』
驚いたのは彼のその腕にギプスがしてあった事だ。
「ああ、お前さんか。響木の見舞いか」
『え、ええ、そうですけど、鬼瓦さんの腕……!』
「これか。すまん、しくじっちまった。ガルシルドの奴に逃げられた」
『あ、………』
そうか、忘れていた。そうだよね後にアレと戦うのならガルシルドが逃亡するのは確実だったのに、その方法は覚えていなかった。
影山の裏を引いていた奴だ。護送車に危険をもたらすという同じ手法で逃走した訳だ。
『すみません、私が覚えていれば……』
「いや、こればっかりは油断した我々のミスだ」
気に病むことはないと鬼瓦さんはフォローを入れてくれる。
『でも、せめて昨日連絡を入れておけば……』
「なにかあったのか?」
『実は……』
かくかくしかじかと、昨日部屋から資料が盗まれたであろうことを話す。
「強化人間プログラムなんてものを考える奴だ。人を超える力のデータなら欲しがるのも当然だろうな」
『手に入れたところで、神が創ったものを人間が再現出来るとは思わないんですけどね……』
染岡はどうにか出来る方法があるかもしれないとはいっていたけれど……。
万が一出来たとしても1日2日じゃ到底むりだろう。
過度な期待をしないように自分にそう言い聞かせる。
「だが、何をしでかすかは分からん。とりあえずこのことは円堂たちにもガルシルドが逃げたことは伝えて置いた方がいいだろう」
『ああ、そうですね』
とりあえず電話なら、ここからなら外へ出た方が早いと一旦二人で病院を出る。
円堂に鬼瓦さんが電話をかけガルシルドのことを伝える。それから鬼瓦さんが電話を代わってくれたので響木さんが一般病棟に変わったからみんなもお見舞いにきても大丈夫だよ、と伝えて電話を切る。
ありがとうございます、と携帯電話を返したら、受け取った鬼瓦さんはイテテテと顔を歪ませた。
『大丈夫ですか?』
「なんのこれしき……」
「ご無理は禁物ですよ、鬼瓦刑事」
強がった鬼瓦さんの後ろから少女の超えがそう告げた。
「ああ、嬢ちゃんか。ん?」
鬼瓦さんが振り返り、その後ろから私も除き見れば、夏未ちゃんが、赤いキャップ帽を被ったお爺さんと共にいた。
「不死身の鬼瓦か」
お爺さんのその言葉に鬼瓦さんは、ん?と顔を顰めた。
「その名は変わってないな源五郎」
「あんた、まさか……」
先程手渡した携帯電話が、鬼瓦さんの手から落ちる。
付けていたサングラスを外して見せたお爺さんは、コトアール代表監督ミスター・アラヤ。本当の名は円堂大介。
驚きの再会を果たした2人は、病院の屋上でコーヒー片手に風に吹かれながら、響木さんのことを話していた。
私と夏未ちゃんは、屋上に設置されたベンチに座って昔を懐かしんでいる2人の様子を眺めていた。
『私は生きてるって知ってたけど、夏未ちゃんからすれば不確定だったわけじゃない?よく探しだせたよね』
「ふふ、貴女大分ヒントをくれていたわよ。円堂くんのおじい様なら追われる身でもどこかの国でサッカーしてそうだって」
『いや、それだけで普通見つけ出せれないって』
本当に、凄い執念だ。それに見つけるだけじゃなく……。
『それで、コトアールでやるサッカーは楽しかった?』
「ええ。それに私がやるべき事も見えたし……。貴女はどう?イナズマジャパンのトレーナー」
『そうだねぇ』
予選本戦の練習期間を振り返ってみる。
『上手くいかないこともあったよ。知っているだけじゃどうにもならないこともあったし』
緑川のオーバーワークだって知っていて止めようとしたけれど、結局信頼を勝ち取れなかったからああなったわけだし。
『それでも、すこしでもみんなの力になれていたのなら』
この世界に私がいた意味があったのなら
そうだったらいいな、とは思うよ。