フットボールフロンティア編
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真新しい半袖ブラウスにグリーンのリボン、そしてグレーのスカートに身を包み階段を駆け下りる。
『おはようございます、ヨネさん』
「おはようございます、梅雨さん」
木枯らし荘の共同キッチンに居た、ふわふわとした金の髪にハートの髪飾りを付けた小柄な中年女性に声をかける。
彼女がこの木枯らし荘の現在の管理人で、私の記憶が正しければ、少し見目が違うがイナGOの世界で秋空チャレンジャーズに居た初老の女性ではないか、と推測される。
結局、寝て起きてみても夢から醒めて現実世界に帰るでもなく、普通にこちらで目覚めてしまったため、この2日ほどヨネさんに稲妻町の事を色々教えて貰い、寝食を共に過ごした。
『ごちそうさまでした!』
用意してもらった朝食を食べ終え、食器を片付け急いで、スクールバッグを持って玄関を出る。
『まだ、来ていないね』
約束の月曜日、7時半。
木枯らし荘の門の前で待つ。
大丈夫かな、とリボンの端を掴んでひっぱる。
制服なんて何年ぶりだろうか。この身体が中学生のものだと分かってはいるが、心はアラサーなので羞恥心というかなんというか、これ着てもいいんだよね?感がすごい。
そんなことを思いつつ待っていれば、高級車が目の前に止まった。
執事さんが降りてきて、挨拶を交わし後部座席へと案内される。
「御機嫌よう」
先に座っていた夏未ちゃんが優雅に挨拶をしてくれる後ろで、扉が閉められる。
『おはよう、夏未ちゃん』
そう言えば、未だにちゃん付けに慣れないのか彼女は頬を少し赤く染めた。
「ええ、おはよう」
そんな彼女を見てか、ミラー越しに執事さんが微笑んで車を出発させた。
学校に着けば職員室に通され、担任の先生を紹介される。
そしてHRがやって来て、先生と共に私が過ごすこととなるクラスへ向かった。
一緒に入ってきなさい、と言われ教室へ入ると、ザワザワとしていたソレが一斉にこちらを向いた。
好奇の目が沢山、教台横の私に刺さる中、先生は淡々とHRを始める。
「さてと、では転入生を紹介する。水津、自己紹介を」
『はい。水津梅雨と申します。本日よりよろしくお願い致します』
第一印象で、この学校での生活の全てが決まると言っても過言ではない。
笑顔と礼儀、これ大事。
社会人の営業スマイル舐めんなよ。
にっこり笑顔で挨拶とお辞儀をし顔を上げると、事前に同じクラスだと聞かされていた通り夏未ちゃんがいて、目があったので思わず笑み返す。
「では、水津の席は窓側の1番奥の席だ」
向こうに座りなさいと促され、机と机の間を通って、1番後ろの席に向かう。
窓側の1番後ろとか、絶好のお昼寝席じゃないか。モブとしてひっそり生きるには最適だな、と、そんな事を思いるんるんで席の前まで行き、隣の席を見て、固まった。
「...んだよ」
イラついたような声に、ハッとして、なんでもないと小声で言って動揺を隠すように慌てて椅子に座る。
不機嫌そうに舌打ちをし、隣の席の彼は頬杖をついた。
...。
ああ。
思わず額に手を当てて考える。
三白眼に褐色肌のピンク坊主。どう見ても染岡竜吾だ。
彼らに関わらずモブとして彼らを応援する、そう言ったじゃないか。よりによって隣の席とか...。いや嬉しいよ?だって私イナズマイレブンのファンだし。
いや無心だ無心。私はモブ。いち生徒、いちクラスメイトとしてしか彼らと関わることはない。OK大丈夫。
そう決めた。
予定通り自己紹介で好印象を持たれたように、名も知らぬ...いやまあ1部の生徒にはイナイレの2000以上いるゲームキャラ達のような子も見かけたが、本筋に関わらないモブの子達に授業合間の休憩タイムで、机の周りを囲まれている。
「何処から来たの」
『遠いところからだよ』
なんて答えれば、海外から来たの?なんて言われて、そもそも次元が違うんだよなぁ...。
『残念。一応日本人だよ』
「紛らわしい言い方しないでよ~」
もう、と女の子達が笑っている。
「なんでこの時期に転校してきたの?」
確かに、言われてみれば一学期の合間というかなり中途半端な時期での転校だな。
『あー、諸々の事情で?』
「えー何それ。教えてくれてもいいじゃん」
中々食い下がらない子がいるなぁ。
『うーん、』
参ったなぁ。そもそも
「クラスメイトなんだよ、教えてくれてくれたっていいじゃん」
『えー、と』
何か適当にでっち上げるかな、と思った瞬間だった。
「っるせぇな」
隣の席からのそんな声に、周りの子達はそちらを見た。
「なによ染岡」
「言いたくねぇ理由があるからわざわざぼかして言ってんだろ。執拗いんだよ。あとうるせぇからここでやんな」
シッシ、と染岡が手を振ると周りの子達はまたねと言って蜘蛛の子を散らすように去っていた。
『ありがとう、助かったよ』
そう、染岡に言えば、彼は眉間のシワを深くした。
「てめぇも、ニコニコ笑ってねぇで、嫌なら嫌って言えや」
それだけ言って、彼はもう話すことはないとそっぽを向いた。
『ごもっとも』
目立たないように、と避けた結果めんどくさい事になったなぁ。
放課後、更にめんどくさい事になった。
隣の席の染岡がそうそうに教室を出たのを見計らって、クラスメイト達がまた、私の席に群がった。
「水津さん前の学校で部活は何してた!?」
「テニス部入らない?」
「水泳部はどう!?」
「待て待て待て、陸上部に入るだろ!」
「いやいや、あれだけアクロバットできるなら応援団入るでしょ!!!一緒にチアやるでしょ!?」
怒涛の部活動勧誘ラッシュには理由がある。
5時間目の体育の授業。大人しくモブで終わらす予定だったのにやらかした。
授業内容はマット運動だったのだが、先生に支えて貰ってバク転をするというもののはずだったのだが。
まあ元々フリースタイラーなのである程度のアクロバットはこなせるのだが、こちらの超次元身体能力に自身がなっていると思っていなくて、軽い気持ちでやったら簡単にバク転からのバク宙を決めてしまい、結果目立ってしまったのである。
そういう訳で、こいつ運動できるぞ、と目を光らせた運動部員達に捕まっているのである。
「バスケ部はどう?」
「サイクリング部は!!」
色々勧誘してくれるが、やはり、サッカー部、はないか。まあそもそもサッカー部員である彼は興味ないとそそくさと居なくなってしまったしなぁ。
『うーん全部魅力的なんだけど、、ごめんね。私フリスタやってるからさ。他のスポーツに興味ないんだよね』
昼間の彼の言葉もあるし嫌なものは嫌、興味ないものは興味ないとサクッと断らせて貰おう。
じゃあ、そういう事だからと席を立つ。
「水津さん、予定通り学園案内をするから付いてきて頂戴」
ちょうどいいタイミングで夏未ちゃんが声をかけてくれる。
『はーい。じゃあね、皆』
バイバイと手を振って囲いを抜けて、夏未ちゃんの横に並ぶ。
『お待たせ』
「全くよ。昼も放課後も囲まれているんだもの」
そう言って夏未ちゃんは先に歩き出すので慌てて横について行く。
『声かけてくれてよかったのに』
「貴方が他の生徒との交流するのも大事だもの」
『夏未ちゃんはいい子だなぁ』
よしよし、と頭を撫でると、ちょっと!!と怒って手を振り払われる。
『かわいい』
「かわっ...!...もう、ふざけてないで行くわよ」
授業で使う各教室を案内しながら、ついでにここは何部だとか、そう言う説明も夏未ちゃんがして進んでくれる。
『夏未ちゃんは部活動してるの?』
「いいえ、部活動はしてないわ。その代わりではないけれど、生徒会業務を行っているわ」
『ああ、そっか。理事長の娘さんだもんね』
そういう事よ、と夏未ちゃんは長い髪を払う。
「ねぇ貴方、フリスタっていうのはサッカーのことかしら?」
『え?』
2階の窓から夏未ちゃんは外のグラウンドを見つめているようだった。
私もつられて外を見る。
「先程、他の部活には興味ないと言っていたじゃない」
囲いから逃げる為に言ったやつね。
『そうね』
「でも先日、サッカー部には興味があると言っていたじゃない」
そう言いながら、目を細めて、蔑んだような目で夏未ちゃんが見ている先を見た。
その先に居たのは、頭にオレンジのバンダナを巻いた少年だった。彼は陸上部の元にいって手を合わせている。頼むよといった感じにだ。
「だから貴方の言うフリスタっていうのはサッカーの事なんじゃないか、と思って」
『そうね。サッカーの1種だよ。フリースタイルフットボール。簡単に言えばリフティングとアクロバット、ダンスなんかと融合した競技だよ』
「フリースタイルフットボール...それなら聞いたことがある気がするわね」
『身一つ、ボール1つあればできるからね。だから別に部活動に入りたい訳じゃないんだよ』
一応そこを強調して言っておく。
サッカー部なんか入ったら本編関わってしまうじゃないか。無理無理。
「1人でやるスポーツなのね。大会とかもあったりするのかしら」
『そうね、世界大会とかもあるし』
「そう」
わかったわ、と夏未ちゃんは1人で何か理解したように頷いた。
もしかして、私がサッカー部入りたいとか言ったら廃部案中止にする気だったのかな、なんて
自意識過剰がすぎる
仮にもしそうだったとしたら、入りたいなんて言わなくてよかった。