フットボールフロンティア編
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染岡のドラゴンクラッシュが源田のパワーシールドに防がれ、弾かれたそのボールで今度は豪炎寺がファイアトルネードを放つ。瞬時の出来事だったのにそれに反応した源田は連続してパワーシールドを繰り出しボールを防いだ。
防がれたボールは、咲山から鬼道に渡り、その両サイドを佐久間と寺門が走り抜けて、鬼道はピュウィと指笛を吹いた。
ぼこ、ぼこ、と地中から現れた5匹のペンギンが鬼道の蹴りあげたボールと共に飛んで行き、それを更に佐久間と寺門が同時に蹴り飛ばした。
皇帝ペンギン2号。放たれたシュートを前に、円堂はグッと握った拳を思いっきり開いて前へと突き出した。円堂の出したゴッドハンドの指先に、ペンギンたちの嘴が突き刺さり、そのまま円堂が耐えきる、かと思いきやゴッドハンドが砕かれボールの勢いで円堂ごとゴールの中へと叩き込まれた。
「帝国学園先制!鉄壁を誇るゴッドハンドを打ち破ったのは帝国の新必殺シュートだぁー!!!」
拍手と歓声で観客席が湧く。そんな中、梅雨は心配そうにグラウンドを見つめた。
『円堂は優しいからなぁ』
帝国の皇帝ペンギン2号が凄いのは確かだが、それ以上に止められなかったのは今の円堂のメンタルに問題がある。物語通りであるならば、影山から鬼道と春奈ちゃんが兄弟で、一緒に暮らすために鬼道は3年間優勝しつづけないといけない、そんな話を聞かされているばすだ。
そのまま0対1の得点のまま前半戦が終了して、ベンチに戻ったみんなが心配そうに円堂を囲っている。
円堂は優しいから、彼自身が試合は試合だと割り切っているつもりでも、心のどこかでそのことを気にしてしまって、プレイに影響がでている。
でもきっと、大丈夫。
こういう時サッカーはいいよね。11人でやるんだもん。誰かがダメな時は他の誰かが支えれる。
15分間のハーフタイムを終え再び試合が再開されれば、すぐさま帝国が切り込んできた。
ボールを持った鬼道が華麗なフェイントで少林寺と松野の2人のマークを振り切り攻め上がる。その横を補佐するように寺門と佐久間が駆け抜けて、ニヤッと笑った鬼道は寺門へとパスを回した。ボールを受け取った寺門がゴールへとシュートを蹴れば、その前に風丸が飛び出して、身体でボールを受け止めようとして後ろに弾かれた。
風丸だけでなく、栗松、壁山、土門。DF4人ともがゴール前を陣取る形で守備にあたる。
そんな守備に上等だと言わんばかりに、佐久間や寺門がシュートを繰り出して、それを体を張ったディフェンスで止める。そんな中、一際小柄な栗松が、弾き飛ばされた。
今が好機、と鬼道の指示で、上がってきたMFの洞面を加えて佐久間と寺門は3角に陣形を取り飛び上がった。
数ヶ月前の試合でもボコボコにされたデスゾーンだ。
放たれたデスゾーンは、雷門ディフェンスの空いた隙間をぬって、ゴールへと飛ぶ。止めようと円堂が腕を伸ばす。その前に雄叫びを上げながら土門が飛び出して、顔面でデスゾーンをセーブした。
『土門っ!!』
ナイスセーブだが、土門はそのままボトリとグラウンドの上に倒れる。
「土門防いだ!捨て身のプレイだ!!」
必死に防いだボールはゴールラインの外に転がったおかげで試合が止まり、土門は担架で運ばれて行く。
そんな中、円堂!と豪炎寺が叫ぶ声が響いた。皆がえっと、驚く前に豪炎寺が放ったファイアトルネードが円堂を思いっきりぶっ飛ばした。
その突然の出来事に雷門イレブンも、帝国イレブンも、観客席も騒然とした。
吹っ飛ばされた円堂の元に寄って豪炎寺が怒鳴っている様子が見て取れる。ポジションに戻っていく豪炎寺を後に、円堂はそっとボールを拾い上げて、じっと何かを考えているようだった。
ファイアトルネード治療法ね。あるとはわかっていたけど実際見るととんでもないなぁ。ここが超次元の世界だからこの熱血論?でもまかり通るが、あっちでやったら多分レッドカードだぞ。
「土門無念の退場。影野が代わりに入ります!」
実況の言うように、土門に変わって影野がフィールドに立つ。
試合再開のコーナーキックキックは辺見が行い、そのボールは鬼道に渡されそのボールをすぐさま上に蹴りあげると、鬼道の上に飛び上がっていた佐久間が下に蹴り下ろしたボールを鬼道がシュートした。
2人が放ったツインブースト、それをしっかりと見据えた円堂は大きく拳を振り上げる。ボールに向かって突いた拳を円堂は連続してパンチし続け、最後にアッパーで打ち上げた。
『爆裂パンチ...!』
ここにきて新必殺で、円堂はボールを止めて、そのボールをDFとMFが繋ぎ、FWの2人の元に渡る。
染岡がドラゴンクラッシュを放ち、それを源田がパワーシールドの衝撃波で受け止める。しかしその状態のボールを豪炎寺がファイアトルネードで押し込む。2人のドラゴントルネードがパワーシールドの衝撃波の壁を破りボールはゴールへと突き刺さった。
「ゴーーール!!雷門同点に追いついた!!」
『よし』
フィールド上で盛り上がっている雷門イレブン達と共にガッツポーズを握った。
それから、1対1の状況のまま激しい攻防戦が続く。後半戦も残りわずかで、その均衡を崩したのは鬼道だった。宍戸からボールを奪いドリブルで進む彼の横を寺門と佐久間が陣取った。
ピュウイと鬼道が再び指笛を吹いた。
3人によって放たれた皇帝ペンギン2号は、ゴールの前の円堂の元へ飛んでいく。それに円堂は大きく手を開き突き出した。ゴッドハンドと皇帝ペンギン2号の力の押し合い。
「ゴッドハンドが押されている!?やはり皇帝ペンギン2号には敵わないのか!?」
ジリジリと円堂がゴールの方へと押し込まれて行く。
そんな中、円堂はぐっと足を踏ん張って、空いている左手をゴッドハンドに合わせた。
「なんと!?両手でのゴッドハンドだ!!」
力の増したゴッドハンドが、ペンギン達を弾き飛ばして、ボールが円堂の手の中へと収まった。
『円堂!!』
やった!と喜びもつかの間。円堂は行くぞと大きくボールを投げた。パスを受け取った風丸は、ボールを奪おうとしてきた佐久間を素早い動きで翻弄し、交わした。
『疾風ダッシュ...!』
風丸から少林寺にパスが回され、ジャンブして空中でボールを受け取った少林寺はグルンと大きくその身を回転させ竜巻を起こし、辺見を吹っ飛ばした。
『竜巻旋風...!』
ドリブル技で切り抜けた少林寺から半田にボールが渡り、半田から前線に上がった壁山へとボールが高く蹴られる。
壁山がジャンプして、豪炎寺もそれに合わせて飛べば、イナズマ落としが来ると源田はパワーシールドを超える技、フルパワーシールドを発動させた。
しかし、壁山と共に飛び上がったのは豪炎寺だけではなかった。壁山の後ろから、まさかの円堂が飛び上がって壁山を台に2人は更に高く飛び上がってそこからイナズマ1号を放った。
高い所から勢いを増して落とされたイナズマ1号はフルパワーシールドの衝撃波をジリジリと押し割りパリンという音と共にゴールへボールを叩きつけた。
『...イナズマ1号落とし...!』
ここに来て怒涛の新必殺ラッシュで得点を決め、ピッーとホイッスルが鳴り響いた。
そして雷門イレブンが喜びに浸る中、ピッピッピーと終わりを告げるホイッスルも響いた。
「ここで試合終了!雷門中勝利!40年間無敗の帝国学園ついに敗れる!!」
大きな拍手と、歓声、そして雷門中コールがスタジアム全体に響き渡る。
『おめでとう、みんな』
誰よりも大きい拍手を送った。
地区大会優勝のトロフィーを受け取って喜ぶ皆の姿を写真に納めて観客席を出るため歩き出す。
この写真は後で春奈ちゃんに渡して学校新聞に載せてもらおう。なんて事を考えながら歩いて居れば、ちょうど客席を立ち上がった人とぶつかってしまった。
「おっと、」
『あ、すみませ...ッ、』
謝る為にその人を見て思わず、息を飲んだ。美少女のような顔立ちの長い金髪の少年だった。
「嗚呼、」
まつ毛の長い紅い瞳が、私を見据えてゆっくりと細められた。
「大丈夫だよ」
『...そうですか』
いや、なんでお前がこんな所にいるんだ。というかエンカウント早くないですかねええええ!!
「僕の顔になにか付いてる?」
あまりに驚いてじっと顔見すぎたせいか、首を傾げてそう聞かれた。
『いえ、すみません。端正な御顔立ちだなぁと見惚れてしまいました』
「ふふ、そう」
上品に笑った彼に、本当に見惚れてしまいそうだな、と思ってしまう。
『あっと、私急ぐのでこれで』
すみませんでした!そう言って、慌てて彼から離れる。
「...またね。水津梅雨さん」
にっこりと笑った彼の顔を見て、ひえっ、と小さく悲鳴を上げてダッシュで観客席を出ていった。
えっ、怖すぎるんだが、なんで名前知ってんの!?いや知ってるか?知ってるよな!神だもん!!
こわ〜と震えながら走って、皆がぼちぼち戻ってくるであろうロッカールームに向かえば、その途中で春奈ちゃんと彼女に手を引かれる鬼道と遭遇した。
「あっ!水津先輩、ちょうど良かった!」
そう言って春奈ちゃんが空いた手をブンブンと振ってきたので、走る速度を落としてゆっくりと彼らに近づいた。
「先輩なんか顔色悪くないですか?...もしかしてまた熱が!!」
『いや大丈夫だよ』
そんなやり取りを春奈ちゃんとやる横で鬼道が、また?と首を傾げた。
「熱があったのか。それでマスクをしていたのか」
『ああ、でももう熱は下がった後だし今は用心でマスクしてるだけだから』
そうかと頷く鬼道の横の春奈ちゃんにところで?と訪ねる。
『ちょうど良かったって?』
「お兄ちゃんの足、先輩に診て貰おうかと思って!」
『いやいや、私医者じゃないからね!?』
そうは言いつつも、プレイの後のケアは大事だし一応診てみようかと3人で帝国のロッカールームに向かう。
自動ドアが開き、中に足を踏み込めば試合には負けたがどこか満足そうな表情の帝国イレブンが居た。
「鬼道!...と、雷門の」
『みんなお疲れ様』
「お、お邪魔します」
恐る恐る、鬼道の後ろから春奈ちゃんが頭を覗かせる。
『春奈ちゃん大丈夫大丈夫。そんなに怖い子達じゃないから。あ、洞面、救急箱ある?』
「いや、お前は逆に馴染みすぎじゃないか?」
ツッコミをくれた鬼道に、そう?と返してとりあえずベンチに座らせる。
救急箱を持ってきてくれた洞面に、ありがとうと伝えて受け取ったそれを開く。
『靴と靴下脱いでね』
「ああ」
「さっきよりも赤くなってる」
『...だいぶ無茶したね』
春奈ちゃんだけじゃなくて、帝国のみんなも心配そうに見詰めて来る中、そっと鬼道の足首に触れる。
『腫れも結構酷いね。春奈ちゃん、氷』
はい、と返事した春奈ちゃんから氷嚢の準備を始めてくれる。
『ちょっと押すね』
「...ッ」
踝の下を押さえると鬼道は、ぐっ、と痛みに耐えるように口を結んだ。
『痛かったね、ごめんね』
ぽんぽんと頭を撫でれば、子供扱いはやめろと言わんばかりにゴーグル越しで睨まれる。
「先輩、氷出来ました」
『うん、じゃあ冷やしてあげて』
はい、と春奈ちゃんが返事して鬼道の足に氷嚢を乗せる。
『おそらく捻挫だと思うけど、後でちゃんとお医者さんに診てもらってね』
鬼道家ならお抱え医師とかいるだろうし、徹底的に診てもらえそう。
「ああ」
『後は、一応圧迫しとこうか』
ある程度冷やしてから、ぐるぐると包帯を巻いていく。
「手慣れているな」
手元を覗き込んで感心したように、呟いた源田に、まあね、と返す。
『自分でやること多かったし』
フリスタの練習をやり始めた頃はよく着地ミスで捻挫してた。いやはや懐かしい。
「やっぱマネージャーいるっていいっすね」
「雷門は4人もいるんだもんな」
成神の言葉に咲山がそう言えば、他の選手達も、羨ましいと口々に零す。
「校内でマネージャー募集してみるか?」
「でも来るのどうせ男だぜ?うちのサッカー部女子マネ禁止だから」
「そうだったわ。どうせなら可愛い女の子がいいよなぁ」
「てか、それ影山が決めたルールなんだから変えれば………」
なんて男の子らしい会話を端に聞きながら、包帯を巻き終える。
『よし。それじゃあ、私達はみんなの所に帰ろうか』
救急箱の蓋を閉めて立ち上がれば、春奈ちゃんは、はい、と頷いた。
「それじゃあ、お兄ちゃん、またね」
「ああ。春奈、またな」
兄と妹
選手達のええっ!?という大きな声が響いた。そういえばみんなは兄弟って知らなかったね。