世界への挑戦編②
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ヘヴンズゲートではあんなに泣いていたのが嘘のように、デモンズゲートでのダークエンジェルとの戦いの時も、試合が無事終わってマグニート山から日本エリアの宿舎に帰ってきてからも水津の様子は明るく見えた。
だけど、水津の体が消えるって問題は何にも解決してないわけで……。
試合中楽しいだなんて言っていたけど、あんなの空元気だよなぁ。
そう考えて寝ていたベッドの上から起き上がる。
練習の後にマグニート山を登って、試合して(しかも多いやつは2回も)、その後下山で流石に疲れて夕飯の後、皆さっさと自室で休むことになったのだが……。
「寝れねぇ」
体は疲れているので横になって見たものの、考える事が多くて眠れない。
「アイツまだ起きてっかな」
というか、消えたりしてねぇよな?
不安になりベッドから立ち上がり、自室を出る。
向かうのは水津がいつも夜練習に出てる奴らを迎える為にいる食堂。夕飯の片付けをした後、そのままそこでトレーニングメニューだとか資料を作ってるのをよく見る。
1階に下りて、食堂へ続く廊下を見た時点で違和感に気づく。
明かりがついていない。
「いない……?」
まさか、と部屋に入り明かりをつけて食堂内を隅々まで確認するが、水津の姿は無かった。
ヘヴンズゲートの時のように体が透けているのかもと目をこらしてもう1周ぐるっと室内を見てみたがやはり姿はない。
「そんな………、消えて……」
サッと全身から血の気が引いた。
いや、まだ、部屋にいるかもしれない。
そうだ。流石に今日は疲れて、部屋に……。
慌てて食堂を飛び出して、急いで来た道を戻る。
沢山のドアの前を過ぎて、水津の部屋のドアの前に立つ。
力加減とか忘れて思いっきりドンドンとドアを叩く。
「水津ッ!いるか!」
声を掛けるが返事はない。
ドンドンともう一度ドアを叩いてみるが、中で物音がする様子もない。
まさか、本当に……。
恐る恐るドアノブに手を伸ばす。
これで居なくなっていたら……、俺は……。
覚悟を決めドアノブを握って回そうとした時だった。
『染岡?』
聞きたかった声が後ろから聞こえ、勢いよく振り返る。
「水津!お前っ、どこいってたんだよ!」
『えっ、お風呂だけど……』
「ふ、ろ……」
キョトンとした様子の水津の顔を見る。
火照ったように少し赤い頬と、いつもはちょこっと結んでいる髪が下ろされてて少し濡れている。
はあ〜、と大きく息を吐いてその場にしゃがみ込む。
『えっ、え?大丈夫?』
心配した様子で水津が駆け寄ってくる。
「よかった……。いなくなっちまったんじゃねぇかと……」
『ああ……、それで』
大丈夫だと言うように水津の手が俺の肩に伸びた所で、ドタドタと言う足音が水津の後ろから聞こえた。
「梅雨~、ってそんなとこでどないしたん?」
「あれ?染岡、どうしたんだ?」
水津の後ろを見れば廊下の先から浦部と塔子がやってくる。この2人に加えて、雷門も今日は宿舎に泊まっていく事になっているから、それで女子達で一緒に風呂に入ってたんだろうか。
「あー、いや、何でもねぇ」
そう取り繕ってその場に立ち上がる。
「ふぅん、なんでもない、なあ」
ニヤニヤと笑いながら浦部が俺を見あげてきた。
「な、なんだよ」
「なんでもないことあらへんやろ?わざわざ梅雨の部屋の前に居て」
「なっ。た、たまたま通りかかっただけだ」
「じゃあ、なんでしゃがんどったんや?」
「なんでって、そりゃあ………」
水津が無事でホッとしたからなんて言えないし、言った所でなんでか追求されても水津との約束で体が消えるって事は言えねぇし……。
どうするよ、と水津を横目で見れば、うーんと考える素振りを見せた後、うんと右腕を伸ばして俺の額に手を触れた。
「は!?」
『染岡、具合悪いんじゃない?』
「確かに顔赤い気がするな」
水津の言葉に、塔子が俺の顔を見てそういうが、顔が赤いのは水津の行動のせいである。
「いや、顔赤いんは梅雨の……」
浦部はそう言いかけて何か思いついたように悪い顔になった。
「いや、そういうことなら梅雨に診てもらった方がええわ!ちょっと梅雨の部屋で休んで行きや!!」
そう言って浦部は勝手に水津の部屋の扉を開けて、俺の背中を押した。
「はあ!?お、おい、別に大丈夫だから」
「アカンアカン!準決勝控えとるんやで?そういうわけやし、ウチは今日は、秋ん所に泊めさせてもらうわ!」
「でも秋の所は夏未が泊まるんだろ?3人も寝れるか?」
「あー、せやった。春奈んとこは塔子が泊まるんやったな。ほな冬花に頼んでみるから!心配せんと、ゆっくり2人で過ごしぃ」
浦部は俺を部屋に押し入れながら塔子と話を進めて、部屋の主すらも勝手に押し入れドアを閉めた。
『えぇ……』
あまりの勢いに、水津は呆然と閉じられたドアを見つめていた。
『えっと、とりあえず……お茶飲む?』
「あ、ああ」
水津からの提案に、頷けば適当に座ってと促される。
適当にと言われたが、前に部屋に入った時に使った椅子は水津がお茶の準備をしている側にあって取れない。
ローテーブルでもあれば床に座るが、流石に施設の備え付けのデスクしかないし……。
いいのだろうか、と思いつつもベッドをベンチ代わりに腰掛ける。
『えっと、それで……』
お茶を入れるため俺に背を向けたままの水津が歯切れ悪く話し始める。
『もしかして、返事、とか聞きたくて来た?』
「返事?いや、お前が消えたりしてないかと思って……」
そこまで言いかけて、水津の言った返事という言葉の意味に気づく。
「返事って、」
あの勢い余って言ってしまった言葉の返事か!?
『違ったのか、恥ずかしい……』
小声でそう言って水津は頬を抑えている。
「いや、返事は………」
この反応で貰えるものなら恐らく嬉しいが………。
水津の性格を考えるならば……。
「返事はまだいい」
俺がそういえば水津は驚いた顔をしてこちらを振り向いた。
「お前の事だから今の状態じゃ、俺の事振るだろ」
じっと見つめれば、目が逸らされる。
『それは………、その……』
うん、と水津が小さく頷く。
分かってはいたけど、ちょっとショックではある。
「やっぱりな。……俺もあんな勢いで言うつもりじゃなかったし、今度改めてちゃんと言う。だからその時に、ちゃんと考えて返事をくれ」
『今度って………』
「この大会が終わったら、だ。お前が前に言ってただろ。恋愛だのなんだのは、大会に一生懸命な他の選手に失礼だって。俺も浮つかない自信はないしな」
『染岡………。ありがとう』
小さくそう呟いて水津は下を向く。
『だけど私は……』
「まさか、諦めちまってるわけじゃないよな?」
『……だって、神にもどうにもできないんだよ?』
「なんでそんな簡単に諦めるんだよ!」
『簡単じゃない!色々手を尽くして最後の希望だったんだ。それがダメだったならしょうがないじゃない……。それに初めてじゃないんだよ。神様に絶望するの』
そう言って水津は自分の太ももに手を置いた。
『ああ、でも、私じゃないか……。元になった人の話だけど』
乾いた笑いをこぼした水津を見て、俺は立ち上がる。
そして距離を詰めて水津の手を取った。
「いいか、水津!俺は諦めないし、雷門イレブンは諦めが悪いんだ!」
『え?うん?知ってる……』
「ここに居るお前も雷門イレブンの一員だろうが!だからお前も最後まで諦めんな!」
『え、えぇ?無茶苦茶言ってる……』
困惑した様子の水津の手を更に力強く掴む。
「お前考えんの得意だろ!神ですら思いつかない方法があるかもしれねぇだろ!!」
最後まで諦めるな
そう叫べば、水津はくつくつと笑い始めた。
『ふふっ、そうだね。超次元だもん、神すら越えられるか!』
そう言って俺が1番見たかった笑顔を見せてくれたのだった。