世界への挑戦編②
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サッカーで正気に戻す。
そう宣言した私を高いところから見下ろすデスタが、クククと愉快そうに笑った。
「神の器らしく狂言回しに徹するって訳か。いいぜ、サッカーで儀式を行い我々がより完璧な魔王になるための生贄にしてやるぜ」
そう言ってデスタは指をすり合わせてパチンと音を鳴らした。
そうすれば、当たりが一瞬で暗くなり、スポットライトのような光が何人かの選手達を照らした。
円堂、豪炎寺、虎丸、鬼道、不動、フィディオ、ヒロト、吹雪、飛鷹、テレス、壁山の11人。
そして、
『えっ……』
私の事も光は照らした。
「今、光に包まれた者達が儀式に選ばれた」
選ばれた?と円堂が声を上げる中、私は混乱していた。
『なんで、私も……』
呆然とする私の前に大きな影が射す。
「水津の代わりに俺が、」
私の前に立った染岡がそう声を張るが、
「ダメだ」
食い気味にデスタが却下した。
「ソイツには残りの11人を使ってゲームをしてもらう。メンバーの交代はなしだ!」
「水津に監督をさせるというわけか。だが何故だ」
鬼道の問いをデスタはつまらなさそうに鼻で笑った。
「今の諦めきったソイツの魂じゃ食いでがねぇからに決まってんだろうが」
「諦めきった……?」
どういう事だと鬼道がこちらを振り向く。
同じように私の前に立っている染岡が振り返って怪訝そうな顔をしている。
「諦めきったってまさか、オ、オレたち勝てないんッスか……!?」
どうやら壁山は、未来を知る私がこの試合に負けるのを視て諦めていると思い込んでるようで、オロオロとしだした。
デスタの言った諦めきったというのはこの身体をどうにかしようとしていたことの事だろうけど……。
『大丈夫、勝てる……』
と言いたいところだが、私が監督に選ばれたというのが……。
「ええ、なんでそこで切っちゃうんッスか!?」
「大丈夫だ!」
円堂の声が響く。
背中を押してくれるような暖かな声。
「オレは水津を信じてる!」
『円堂……』
「俺だって信じてる」
そう言って染岡が真っ直ぐ見てくる。
「大丈夫、お前ならやれる」
ポン、と肩に手を置かれた。力強い声に円堂のとはまた違う安心感があった。
『うん。勝つよ!』
キリッとデスタを睨み上げれば、彼はニヤリと口角を上げたのだった。
「それで、監督チャン。どうするよ」
不動からの問いに、うーんと頭を悩ませる。
『まずは……、フォーメーションだね』
GKは円堂で確定で、DFが壁山、飛鷹、テレス、そして吹雪だけど、吹雪はFWもいけるから……。
他のFWは……豪炎寺、虎丸、ヒロト、フィディオ……。
『ちょっとフォワード多いな……』
「ボクはディフェンスでも大丈夫だよ。イナズマジャパンじゃそうだしね」
『ありがとう、じゃあ吹雪はサイドバックに入ってもらって……センターバックは壁山とテレスが硬いかな。連携を考えても同じチームの飛鷹の方が繋げやすいし、飛鷹がライトのサイドバックね』
「はいっス!」
「分かった」
返事をする2人から離れた所で飛鷹がウッスと頷いている。
『ミッドフィールダーはボランチが鬼道で、サイドに不動と……』
「4-3-3で行くのか?」
『うん、イナズマジャパンだけの構成なら鬼道と不動が上手く繋ぐでしょうけど、ジャパンのメンバーだけじゃないし中継ぎは多い方がいいと思う。それにどっちもさっきの試合、苦戦したでしょ?』
私の記憶通りなら天空の使徒も魔界軍団Zもギリギリの勝利だったはずだ。
「確かに、こっちはエドガーのお陰でどうにかなったけど……」
円堂の言うそのエドガーは選ばれていないし、選ばれたとしても先程の試合で足を負傷しているはず。
「別にこっちは誰かさんが焦ってただけで苦戦はしてなかったけどな」
「オイ、不動」
佐久間が咎めるように名を呼ぶのから推測するに、不動の言う誰かは、春奈ちゃんが攫われて平常心じゃ無かった鬼道の事だろう。
『まあ、とにかくさっきよりも更にパワーアップしているとみた方がいい。その上、みんなはさっきの試合の疲労も残ってる』
それにこの後決勝トーナメントを控えているみんなに無理をさせてエドガーのように怪我を追わせるわけには行かない。
『だから、前半はできるだけ皆が走り回らないで体力温存できる形にしたい。だから不動の反対側をフィディオに頼みたいんだけど……』
イナズマジャパン対オルフェウスの試合では攻撃だけでなく守備も魅せてくれたし、チームK戦を一緒に行った鬼道、不動となら連携も何とかなるだろう。
「任せて」
そう言ってフィディオは拳で己の胸をドンと叩いた。
『よし、じゃあ、フォワードはセンターが豪炎寺で、ウィングに虎丸とヒロト。さっき同じチームだったし、吹雪とフィディオとヒロトが同じ側の方がいいかな』
吹雪、フィディオ、ヒロトラインがレフト、飛鷹、不動、虎丸ラインがライトに決まる。
『作戦は前半、体力温存。フォワードは基本前線待機。ミッドフィールダーは守備よりで固めて、カウンター狙いで行きましょう。あとは適宜細かい指示はハンドサインを出すから鬼道と不動がチェックして。現場の判断と合わないようなら無視してくれても構わない』
「分かった」
「りょーかい」
2人の返事を聞いて、ひと息吐く。
『よし。みんな、勝つよ』
おおー!と返事をして、選ばれた11人がダークエンジェル達が既に配置について待つフィールドへ歩いていく。
その中で、フィディオが足を止めてこちらを向いた。
「作戦を組み立てているのを見てやっと分かったよ。キミがミスターK……、影山監督の事を影山さんと呼ぶ理由」
『うん?』
「さんってのは、相手への敬意や親愛を示すジャパンでの丁寧な呼び方なんでしょ?最初キミたちから聞いた影山監督の人柄は、とてもそういう風では無かったのに、キミはずっとさん付けで呼んでいただろう?」
年上の大人だからというのもあるが、
指導者として
「尊敬してるんだね」
そう言って笑って、フィディオはフィールドへと駆けて行くのだった。