世界への挑戦編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おーい!みんな!」
大きな声で叫びながらサッカーフィールドへと続く階段を円堂が先んじて下っていく。
「円堂!」
「勝ったんだな、お前たちも!」
ああ、と返事を返す鬼道の隣に赤い装束を着せられた春奈ちゃんが立っていて、良かったと胸を撫で下ろしながら他の皆と同じように階段を降りた。
「音無さんも無事で良かったッス!」
「よぉし!これで決勝トーナメントに戻れるぞ」
「感謝しているわ」
全員無事で良かったと集まったところで、高いところから知らない女の子の声が聞こえて一同は顔を上げた。
洞窟のようにぽっかり穴の空いた道へと続く階段の上に、春奈ちゃんを攫った黒い羽の少年と共に同じ羽を持った10人の少年少女たちがいて、その中の濃い緑色の髪を持った少女が口角を上げて口を開いた。
「あなた達との戦いはその子を遥かに凌ぐいい生贄となったもの」
「なに!?」
「お前たちの強き魂のおかげで魔王は今目覚めた」
春奈ちゃんを攫った少年、デスタの言葉に鬼道がなんだとと声を上げた途端、地震が起きた。
「きゃあっ、」
「春奈!」
『っ!!』
「大丈夫か!」
鬼道が春奈ちゃんを支えたように、私の身体を染岡が支えた。
『あ、ありがとう』
「お、おう」
照れた様子で揺れが収まるまで支えていた染岡に、少しドキドキとする。近い心音伝わってないと良いけど。
今までだったらみんなも見てるしパッと手を離しただろうに……、さっきヒロトやセインの前で告白したのもあって吹っ切れてるんだろうか。
だとしたら非常に困る。何せ今もニヤニヤとリカちゃんが笑ってこちらを見ている。自分の恋愛だけじゃなく人のも好きだもんなリカちゃんは。
そんな感じで突然の揺れに我々が驚いてる中、デスタ達は後ろの洞窟の奥へと消えて行ってしまった。
『もう大丈夫……っ、うわっ!』
地震が収まったかと思えば、今度は近くで雷が落ちる音がした。
「何が起ころうとしているんだ」
「凄く嫌な予感がする」
恐怖からか春奈ちゃんがぴっとりと鬼道の腕にしがみついている。
私は大丈夫だから、と染岡を腕を軽く叩いて手を離させる。
ピシャッ、ピシャッと光っては落ちる雷の音に、そういえばと吹雪を見る。
若干青い顔をしている気がする。
「吹雪がどうかしたか?」
『あ、いや……確か大きい音苦手だったと思って』
「そうなのか?」
雪崩で家族亡くしてるからね。確か雷の音でも怖がってたシーンがあったはず。
完璧にならなくてはならないと、アツヤに囚われていた彼では無くなっとはいえ、簡単に過去のトラウマが消えるものではないだろう。
「吹雪!」
私の話を聞くや否や、染岡は吹雪の方へ歩み寄っていて、大丈夫かと声をかけている。
なんだかんだ面倒見がいいよね。
誰かと話してる方が吹雪も怖くないだろうし私も混ざるか、と思ったら腕を引っ張られた。
「なんかええ感じやん!」
振り返ればニヤニヤと笑ったリカちゃんがいた。
『あー、そうね』
「へー、隠さんのや?もしかしてもう付き合うてるん?」
『いや、』
あ、そういえば告白の答え何にも返してないな。
情緒おかしい時に言われたからそのまま流してしまったけれど。
「え、付き合ってなくてあんな感じなん?」
『そうだよね。私もびっくりしてる』
「染岡は奥手やと思ってたのに、意外と攻めるタイプやったんか」
『まあ、フォワードだしね』
「え、それ関係ある!?」
ボケにリカちゃんがちゃんとツッコミを入れてくれたところで、雷の音が止んだことに気がつく。
「1000年の封印は解けた」
デスタの声が響き、戻ってきたのかと洞窟へ続く階段の方を見上げると先程と彼の服装と、半数ほど傍にいた者が変わっていた。
そして。入れ替わった中のひとりが口を開いた。
「今、破壊の時が始まる」
「その声、まさか……!」
先程ヘブンズゲートで別れたはずのセインと天空の使徒の何名かが相対するはずの魔界軍団Zたちと共にいた。
「強き魂を喰らい魔王は復活した!」
「我らはダークエンジェル」
「セイン……!セインなのか……!?」
「ぐっ、円堂……!!」
円堂の呼び掛けにセインが突然頭を押さえて呻き出した。
「セイン!どうした?」
「黙れ……!」
そう言って頭から手を離したセインは、円堂を睨みつけるように見下ろした。
確かに元々下界の民と見下す様子はあったが、それでも円堂たちと試合を終えた彼はもう少し友好的な雰囲気があった。それが突然この様子。
「魔界が天界を飲み込んだのだ」
その声に振り返ると怪しげな台座の傍にそっくりな顔をした2人の老人が立っていた。
「また出た!」
そう言って塔子ちゃんが老人達を指さす。
「お前たちは何者なんだ!」
鬼道が問えは老人達は口を揃えてこう言った。
「「我らは天空と魔界の儀式を執り行う者」」
「セインに何かしたのか!」
セインは彼らの事を語り部だと言っていたからこの老人達の本当の目的は知らなかったのだろう。
「古からの定め。魔界は天界を、天界は魔界を憎みその憎しみはデモンズゲートの地中深くに溜め込まれていった」
「長い時間をかけて満たされた双方の憎しみは新たなる邪悪なる力を生み出す事となった」
「均衡していたふたつのバランスは崩れ、そして魔が天を飲み込み世界を絶望に染め」
「その天魔の化身こそダークエンジェルなのだ!」
『最初からこの爺さんたちはコレが目的で、リカちゃんに腕輪を渡したってわけ』
そう言えば、チッと不動が舌打ちした。
「俺たちがコイツらを負かす事で、コイツらの憎しみを増幅させちまったって事か」
そう、円堂たちが勝つことまで計算してこの計画を立ててるんだから恐れ入る。
「ついに……ついに、復活したんだ!魔王様が!」
「どこにいるッスか!?」
純粋な1年生たちがキョロキョロと辺りを見渡す。
「いるだろ、お前たちの目の前に」
「まさか」
「俺たちこそが魔王だったんだよ!」
「ダークエンジェルが魔王だったということか!」
鬼道が聞き返すと、デスタと共に笑っていたはずのセインの表情がハッとした後、彼は2、3歩後ろに後ずさった。
「悪魔に意識を支配さるなど、なんということだ……」
正気に戻った様子のセインが、自分の中の内なる何かと戦いながらこちらへ腕をのばした。
「止めてくれ!我らの手が、穢ぬ、うちに……!」
伸ばしていた腕がぶらんと下がり、すっ、と意識が引いたようにセインは項垂れた。
「セイン、セイン!」
円堂が名を呼べば、セインはフフフフと笑いだしたかと思うと、気高い彼からは想像出来ないような、ひゃひゃひゃ、と下品な笑いを零し始めた。
そして、顔を上げ、ニヤリと顔を歪ませた彼は足元にあったサッカーボールを蹴り上げた。
『円堂!』
あっという間に目の前へ来たボールに、円堂が慌てて腕を構え抱き止めようとしたが、パワーに負けて後ろに飛ばされる。
「クハハハ!お前たちの魂、寄越すがいい!」
「サッカーはそんな事のために使うんじゃない!お前は俺たちと試合して、サッカーの楽しさを分かったんじゃないのか!」
「知らん」
「セイン!」
円堂、と肩を叩く。
『今の彼に言っても無駄だよ。本当の彼は止めてくれと願った』
「水津……。セインたちを元に戻す方法はないのか!」
『あるよ、ひとつだけ』
先程円堂が受け止め切れなかったボールを拾い上げる。
「それって……」
サッカーだよ
ダークエンペラーズだってそうやって目を覚まさせたでしょ。