世界への挑戦編②
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「俺にとってお前はお前しかいないんだよ」
そう言って顔を歪め涙を流す染岡の頬に思わず手を伸ばしていた。
ぴと、と頬に触れ透けていたはずの手に感覚が戻る。
『乖離が止まった……』
「……!よかった!!」
既にホールドされてはいたが、ガッシリと強い力で抱きしめられる。
『ちょっと……!』
よかった、よかったと何度も言っている染岡に酷い罪悪感が湧く。
恐らくこれは今までと同じ……。
「ふむ。まだその時ではないということか」
そう言ったのはセインで、私を抱きしめたままの染岡が、は?と顔を上げた。
「まだってどういうことだよ!?これで消えないんじゃないのか!?」
「そうではないから、器は……いや、その者はそういう顔をしているのではないか」
セインの言葉に染岡は抱きしめる腕を緩めて、少し身を引いて私の顔を覗き見た。
喜んでいる顔ではないのは確かだ。
「消えないよな」
震える声で確認するように問われ、私は顔を背ける。
『……消えたくはないよ。でも、もう無理なんだって。今更心変わりしたところで遅いって……。だからまた同じように乖離が始まってそのうち消えるんだって』
そう告げれば染岡は、なっ、と小さく声を上げた。
私を抱きしめる腕が小刻みに震えている。
「神代がそう言ったの?」
今まで静観していたヒロトが近づいてきてそう訊ねる。
『うん。神代に会えばどうにか出来るんじゃないかと思ってた。けど、この体をどうにかすることはできないんだって』
正確には、魂が1度拒否した器だから治したり乖離を止める事は不可能であると。
新たな器を創り魂を移し替えるとこは不可能ではないが、その場合はいちから……つまりイナズマイレブンの第1話が必ず生成ポイントとなるらしい。
それでは、こんな私のことを好きだと言ってくれたこの染岡は居なくなると言うことだ。
染岡は染岡だ。だけど、やり直してまた好きになってもらえるとは限らない。
『そういう訳で、消えるのを受け入れる他ないらしい』
「そんな……」
「何か方法があるはずだろ!」
染岡の言葉に首を振る。
『神様にできない事を人間がどうにかできるわけないよ。現に今日まで私もヒロトも、瞳子さんに星の使徒研究所の力を貸して貰って調べたけどどうしようも出来なかった。諦める他ないんだよ』
クソッと染岡が悪態をつく。
1度ならず2度までも、いや1度目は本物の水津梅雨のものだけど絶望させてくるなんて、神様なんて本当にいないんじゃないかな。神代だって神とは人間が付けた名称に過ぎないといっていたし。
「あっーー!!」
アルトボイスの叫びが聞こえて扉の方を見れば木暮が驚いた顔してこちらに指先をしていた。
「水津さんいた!染岡さんもヒロトさんも見つけたんなら言ってよ!探し回って馬鹿みたいじゃんか!」
そうぷりぷり怒りながら近づいて来た木暮を見て私を抱きしめていた染岡が慌てて手を離し1歩後ろに引いた。
『ごめんね、木暮。ここ高いとこで空気薄いから気失ってたっぽい』
「えっ、そうなの!?」
『うん。それで心配してくれてたから2人はそれどころじゃなかったんだよ』
我ながらよくベラベラと嘘がつけるもんだと思いながら木暮と話す。
『悪いけどみんなのこと呼び回って来てくれる?』
「えー、しょうがないなあ」
「ああ、じゃあオレも一緒に行ってくるよ」
そう言って目配せをしたヒロトは木暮に行こうと声をかけ一緒に部屋を出ていった。
「お前……」
「お願い。乖離のことみんなには黙ってて」
「なんでだよ」
「たってこれから決勝トーナメントだもの。みんなには集中して試合に望んでもらいたい。だからこそ、キミには1番知られたくなかったんだけどね……」
イナズマジャパンのメンバーの中で誰よりも知られなくなかった。そんな彼は複雑そうにいつもより眉間に多くシワを寄せている。
『それに、響木さんだって……』
「響木監督?」
『ああ、いや……響木さんも恐らく同じように考えるだろうと思ってね』
「それはそうかも知れねえけど……」
渋る染岡の手に触れる。
『お願い』
まっすぐ見上げて染岡を見つめれば、彼は少し目を伏せ大きく息を吐いた。
「………分かった。 そこまで言うならぜったいに優勝してやる」
そう言って染岡は拳を強くにぎった。
『うん』
見守っているよ
例えこの身が朽ち果てようとも。