世界への挑戦編②
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苦戦を強いられたが、最後にエドガーが脚を犠牲にしてでもと決死の覚悟で天空の使徒のセインのシュート、ヘブンドライブをエクスカリバーで打ち返し、長距離で威力の上がった上、ヘブンドライブの威力も乗ったそのシュートのおかげで何とか決勝点を得ることが出来た。
「負けた……」
浦部が解放され、喜ぶ俺たちの前でセインが呆然と呟いた。
「なぜ……力では圧倒的に上回っているはずなのに……」
「なぜ?そんなもん決まっとるやろ!」
浦部の言葉にセインが顔を上げる。
「お前ら何もわかってへん!サッカーちゅうんはな、ただの勝負じゃない。魂と魂のぶつかり合いなんや!どっちが上か下かなんてそんなもん関係あらへんのや!!」
「魂と魂のぶつかり合い……」
浦部の言葉を聞いたセインは繰り返すようにそう呟いた後、なにかハッとした様子だった。
「そういうことだったのか……。どうやら君たちには礼を言う必要がありそうだな」
「礼?」
「私にはどうしても分からないことがあった。千年前、我らの先祖は何故サッカーで勝負を決めたのか。サッカーは魂と魂のぶつかり合い。我らの先祖はその熱き魂で魔王を封印したのだ」
そう言ってセインは円堂に近づく。
「円堂くん。そう呼んでもいいかな」
「もちろんさ」
「君たちのおかげで私の心は決まった。我らも先祖と同じサッカーで魔界の民とは決着をつける」
そう言ってセインは拳を握る。
「そして魔王は我らの熱い魂で封印してみせる!」
「セイン!」
そう言ってセインと円堂は拳をぶつけ合わせた。
「おい!なんかいい感じに締めくくってるとこ悪ぃけど水津を何処にやったんだよ!!」
「水津……ああ、そうか」
忘れていたと言うようにセインはキョトンとした後手を叩いた。
「心配には及ばない。器は今神との対話を試みている」
「神……?」
「えっ、神様と会話してるんッスか!?」
魔王がいんだから神もいるんだろうが……。
「でもなんで……」
「そうか!」
分かったと言うように声を上げたのはヒロトだった。
「水津さんは神代に会うためにここに来たのか」
こうじろ?誰だよそれ、と思う前に円堂があっ!と大きな声を上げた。
「そうだ!水津はそいつを探してるって、そのために影山に会おうとしてたんだ!」
円堂の言葉にフィディオがそういえばと呟く。
「ミスターK、いや影山監督と情報のやり取りをしていたね」
「まてまてまてまて」
土方が声を上げる。
「水津はずっと神様を探してたってことか?」
「そうだよ」
なぜかハッキリとヒロトが答える。
……なんで、円堂もヒロトもそんなこと知ってんだよ。水津が誰かを探してたなんて、そんなの俺は……。
「とりあえずセイン、水津に会わせてくれよ」
「……ふむ、いいだろう」
そう言ったセインの案内で建物の中を進み、1つの扉の前まで来た。
「この部屋で対話を行っている」
そう言ってセインは扉をコンコンと叩くが返事はない。
「未だ対話中かもしれん。私が様子を見るから静かにしていてくれ」
そう言ってセインはそっと扉を開けて中を見た。
「これは……!」
驚きの声が聞こえてどうしたんだと円堂が声をかける。
「……そうかこれがアイツの言っていた……」
「セイン?」
「居ない」
そう言ってセインは扉を大きく開けて、部屋の中へ入っていく。
「いないってどういう事だよ」
セインに続いて中に入ればそこは教会のように列になる多くの椅子と部屋の奥に教壇が見える。
「逃げたって事ちゃうん?」
「いや、自らここに来たのだ。ヘブンズゲートの外へは出ていないだろう」
「まあ、出てたら流石に外で試合してたんだから気づくよね」
「うしし、トイレでも探して迷子にでもなってるんじゃないの」
木暮がそう笑えば確かにとセインが呟く。
「慣れぬ者には迷いやすい建造だ。お前たち別れて捜索に当たってくれ」
セインの言葉に了解と頷いて天空の使徒達は部屋を出て散っていく。
「俺たちも手分けして探そう!」
円堂がそういえばみんな、おう!と返事をして部屋を飛び出して行く。
俺も同じように飛び出すが、ふと、足を止めた。
前にもこんなことがあった気がする。
そう思い踵を返して先程の部屋に戻る。
「この部屋にいるんだろう」
「なんの事だ」
入口に経てばヒロトとセインの声が聞こえた。
「水津さんが居ないってことよりも部屋の中の状況に驚いてただろう。それは彼女が消えて居た事に驚いたんじゃないのか」
「そうか。お前は器の状態を知っていたのだな」
「ああ。キミはみんなの意識をこの部屋から逸らすためにわざと天空の使徒のみんなに部屋の外の捜索を促せた。仲間思いの円堂くんたちが一緒に探しに行くように」
「お前たち、一体なんの話をしてんだよ」
部屋に1歩入りそう問かければ、2人とも驚いた顔をしてこちらを見た。
「染岡くん!?どうして戻って………」
「前に似たような事があったんだよ。部屋から出た様子がないのに水津が部屋から居なくなって、その部屋の廊下に居た俺が知らないうちに水津が部屋に戻ってる」
今回もあの時と同じことが起こってるじゃないか。何故だかそう思った。
「それは……」
「なあ、ヒロト。お前一体何を知ってるんだ」
ヒロトは口を噤んだ。
「おい、何とか言えよ!」
ヒロトの胸ぐらを掴み揺さぶるが、ヒロトは困ったように眉を顰めるだけだった。
『もういいよ、ヒロト。染岡も離してあげて』
聞きたかった声が聞こえた。
教壇の方から声が聞こえた気がして振り向くが、そこには誰も居ない。
「水津……!?何処だ」
キョロキョロと周囲を見渡すが姿が見えない。
ヒロトの胸ぐらから手を離して、教壇の方へ歩み寄る。
そういえば、ヒロトはさっきセインになんて言っていた?
彼女が消えた、そう言っていた。
「水津?」
教壇の前、何も無いと思われたそこをよく見れば、薄らと体の透けた水津が居た。
「な、なんだよこれ!」
『はは、は……、キミにだけは見られたくなかったんだけどなぁ……』
そう言って乾いた笑い声を上げる水津の顔を見れば目の端が滲んでいた。
「お前がやったのか!?」
セインを睨めば、違うと水津が呟いた。
「じゃあ、神代って奴か!?」
『違うよ。全部私のせいだった』
ポロポロと水津の目の端から雫が落ちている。
その涙を拭いてやりたくて水津の頬に触れようとしたが感触がなく指が貫通した。
「っ、なんでこんな……お前が待ってるって言ったのに、勝手に消えるなよ」
感触が無いから抱きしめられているか分からないが必死で水津の体を自分の腕で包み込む。
「好きだ。水津、好きなんだ」
気がついた口が想いを紡いでいた。
「だから、消えないでくれ……」
どこにも行くな。その思いで、縋るように水津の体を抱きしめ続ける。
『なんで、今言うのよ!私、人間どころか水津梅雨ですらなかったのに!!』
俺の腕の中で、震える声で水津がそう叫ぶ。
「何言ってんだよ。お前は水津だろ?」
『違う。何もかも全部作り物だった!!体も記憶も全部神代が世界の異変を正常に戻すために都合のいいものを用意しただけ!!』
そう言って水津は俺の体を押しのけようと両手を付いた。だけど透ける水津の腕は俺の体を貫通して、水津は諦めたように笑って透ける体で俺の体を通り抜けて腕から抜け出した。
「なっ、」
手を伸ばすが何と声をかければいいのかわからない。
そもそも今水津が言ったことの意味を理解出来ていない。
全てが作り物とはどういう事だ。
無い頭で必死に考える。セインが攫う前に水津の事を神の与えた器だと言っていた。そこから考えるに体が神が創ったってのは何となくわかる。
だけど……
「記憶ってどういう事?」
俺の問いをヒロトが代わりに口に出す。
「神代の創った体に異世界から来た水津梅雨さんの魂が入ってるって事じゃないのか?」
『違うんだって。私がここに生み出されてからも水津梅雨は水津梅雨のまま異世界で暮らし続けてる。私はその人の記憶を複写されただけ』
やっと理解出来たがかなりキツイ事を言っていないか。
俺がもし染岡竜吾という人間の記憶をコピーしたものだって言われても受け入れられない。俺が本物だと主張するだろう。だけど水津はそれを受け入れちまってる。
『本来は存在しない上、全て偽物だったんだ。このまま消えるのが自然の摂理』
「偽物……」
全てが偽物?
水津の言う通りなら確かに全てが作り物かもしれない。
だけど、
「偽物なんかじゃねえ!!」
手を伸ばして水津の腕を掴んだ。
透けていてちゃんと掴めているかも分からない。
だが、今、手を離してはいけないと思った。
「例え全てが作り物なんだとしても、俺にとっての本物はお前しかいねえ!雷門中に俺のクラスメイトとしてやって来て、俺たちの無茶な練習を心配そうに見守って、未来を黙っていないといけない恐怖に耐えながらイナズマキャラバンに乗って、俺たちをささえるために遅くまでトレーナーとして勉強してきたお前が、俺が好きな水津なんだよ!!」
グッと腕を引っ張って、もう一度水津を抱き寄せる。
「俺の好きな奴の事を偽物だとか、消えてもいいだとか言うんじゃねえよ!!」
自分の頬に雫が伝い、叫んだ声も震える。
「俺を置いて消えるな。俺にとってお前はお前しかいないんだよ」
情けなく叫ぶ俺の頬に温かな手が触れた。
温もりと感触にハッとする。
「水津……!」
よく見ると透けていた水津の体が元に戻っている。
よかったと
そのまま力強く抱きしめた。